アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

文部科学省の対応は妥当【「前川講演」調査について】

前川喜平氏はいわゆる「天下り問題」で文部科学事務次官を事実上更迭、その後懲戒処分が下っていたら停職相当とされた。退官後、安倍内閣や文部行政に関して独自の見解をあちこちで披露している。素晴らしい考えをお持ちなら、なぜ在職中に天下りの斡旋にかまけず、大臣に研究会の設置を提案するなどの具体的行動を取らなかったのか。

また前川氏は在任中に「貧困問題の調査」と称して未成年の女性が働く店を度々訪問した。しかし貧困問題は厚生労働省の所管であり、他省庁の事務方トップの事務次官が調査に乗り出すのは明らかに越権行為。貧困問題に関して厚生労働省と連携したければ大臣に進言して、政策面での連携の可能性を探るのが常道。スパイまがいのことをするのは組織人として失格。

つまり前川氏は無能で組織人としての資質も乏しかった元官僚。そんな人物を中学校に招き、日本の未来を担う子供たちの前で講演させたのは明らかに不適切。文部科学省が外部からの指摘を受けて調査に乗り出したのは当然のこと。もちろんこれは異例の調査であり、何でも穿るようなら行き過ぎだが、各学校がどういう人間が講師にふさわしいか、改めてじっくり考える好機になればいい。

今回の件を見てもいまの日本の公教育がいかにダメかよく分かる。当該中学校の校長の顔は不細工でだらしなく、言葉にも人間的深みが全く感じられなかった。

My Favorite Things:カラヤン指揮、BPhのヴィヴァルディ:調和の霊感

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ザクザク、ブンブンと鳴るBPhが面白い。低音弦のうねりにドキドキ。2003年初出のヴィヴァルディ「調和の霊感」(1972年録音;4曲)はこの2枚組とバカでかいboxのみに収録。第10番はシュヴァルベ、ブランディス、シュピーラー、ヴェストヴァルが揃い踏み。#カラヤン #意外にいい #ヴィヴァルディ#クラシック音楽 #黄金時代 #コンサートマスター #ナルシスト #バッハ #モダン楽器 #ヴァイオリン #帝王 #ベルリンフィル #お蔵入り #調和の霊感 #調和の幻想 #四季 #サンモリッツ

カラヤン指揮のヴィヴァルディ「四季」についてはこちら。 

choku-tn.hatenablog.com

「調和の霊感」は「四季」もしくは他の協奏曲と組み合わせて出すつもりがお蔵入りしたのか。当世風のスパンスパン、ピンスポットで射抜くアンサンブルではなく、ちょっとした衣擦れがあり、そこが聴き手の心をときめかせる。

『ロックフェラー回顧録』(新潮文庫)【特別だが普通の人間】

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世界の黒幕とか、悪の帝王とか、ダース・ベイダーみたいに言われていたひと。確かに会ったひとのリストは浮世離れ。彼個人の人生航路は家庭問題など生まれゆえの宿命、大変さを感じる。#ロックフェラー #陰謀論 #金融 #財団 #moma #ラスボス #闇の帝王 #黒幕 #富豪 #読書 #イラン #割と普通

保有資産と社会事業を含めた運用形態、民間外交などは常人のスケールを超越しているが衣を取りはらってみれば富を殖やし、社会に還元する旧き良きアメリカの富豪の姿。子供たちがそこに「偽善」を感じて一時、離れていったあたり、家庭はどこも同じと思わされる。イランのパーレビ国王との奇縁を記した「シャー」の苦い後味は尾を引く。ソ連とチャイナの崩壊、発展の分かれ道の洞察は目から鱗

ロックフェラー家と日本 日米交流をつむいだ人々

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の虚と実

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1979年刊行。タイトルとは裏腹に「日本はいずれ行き詰まる。アメリカは慌てずに構造改革に邁進すること」が主旨。その通りになった。#耳の痛い話 #日本論 #日本 #アメリカ #日本型経営 #日本社会 #アメリカ社会 #知日派 #未来予測 #過去からの警告 #構造改革 #読書 #タイトルと中身

本書で指摘された将来日本が行き詰まる要因
  • 個人の権利・個性・創造性の欠如→学術面の基礎研究の立ち遅れ。
  • 冷遇される異端者、対立相手、少数者
  • 不適格者のたどる道→機会の多様性の乏しさ、転職の困難、女性の生き方の制限。
  • 愛国主義の鼓吹→メディア報道の国際性の欠如、規制の多さ、高レヴェル外国人の冷遇。
  • 膠着状態→極端なコンセンサス重視。物事を突破する力、意見の弱さ。
  • 国際市場での優位性の低下。

My Favorite Things:メニューインとフルトヴェングラー【本当の共演とは何か?】

サー・ユーディ・メニューイン(1916~1999)は音楽史上に輝く「神童」ヴァイオリニストだった。エネスコが指揮したショーソンの詩曲など10代の録音で聴ける妖気の漂う音色、大胆かつしなやかな起伏の付け方が特徴の演奏は「・・・歳としては」なんて次元を超えた内容。

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幸か不幸かあまりの才能ゆえに基礎訓練を受ける機会のなかったメニューインは20代の半ば以降、次第に技術面の不安定さが表面化、30代には脊椎の故障もあって右手の震えが生じやすくなり、両手の動きが不一致になる危険をはらみながら音楽活動を続ける状況になった。

神童期以降のメニューインが一瞬眩しく輝いたのが1947年から1952年にかけて20世紀最高の巨匠指揮者、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーとの共演録音。戦後ナチスとの関係を問われて活動停止処分が下ったフルトヴェングラーに面会したメニューインは失意の巨匠を励まし、自ら積極的に擁護した。エリザベートフルトヴェングラー夫人はこの時期のメニューインの行動に深く感謝すると後年志鳥英八郎氏に語った。

1947年9月、フルトヴェングラーは無事楽壇復帰を果たし、ベルリンでメニューインベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲で共演した。

さすがはフルトヴェングラー、第1楽章のソロが出てくるまでの音楽が破格。すうっと涌きあがる、しなやかな奥行きの深い音楽の品位、スケール感、密度。ここまで情報量の多い響きを展開されるとソリストはかえって緊張しそうだが、メニューインは細身の伸びやかな瑞々しい音で登場。ほどよく艶のある音色で力まず、じっくり弾き込む。もっとも美しいのは第2楽章。澄み切った響きの導入部に続き、メニューインが一音一音、しみじみと情を通わせて奏でる。そしてフィナーレではメニューインが生き生きと弾み、フルトヴェングラーはテンポや強弱を結構動かして豪快にドライヴ。このあたりはライヴならではのスリル。最後、メニューインにやや疲れがにじむも終盤の聴かせどころは渾身の力で立ち向かう。

両者は決して合わせよう、整えようとはせず、自身の信ずる音楽を奏でているから事実若干のズレはある。しかし大きな視点で見ると2人が持つ音楽的磁場は美しく重なっており、フルトヴェングラーのバックはメニューインのソロを引き立て、メニューインは真摯かつ自在に振る舞う。内心で響き合った音楽家同士だからこそ演奏、本当の共演とはこれではないか、聴くたびに思い返す。

メニューイン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー:BPh/ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲

「君命も受けざるところあり」はいずこ【森友決裁文書書き換え問題】

政治家は自らとつながりのある人間にいい顔をしたがる。他方国士面して政治家に近づき「美しい話」を吹き込んで後援してもらい、己の卑屈な野心を満たそうとする連中はいつの時代にもいる。

官僚はそういう人間の生態を冷徹に見ながら、法律の範囲内で行政実務を適正に執行するもの。とりわけ国有財産の払下げは昔から色々言われてきたところであり、扱いには細心の注意を払い、もし違法でなくともイレギュラーな経過をたどった場合は悪しき前例とならぬためにきちんと記録を残し、もし問題化した場合に備える(組織防衛)必要がある。

決裁文書書き換えなんて例え首相や財務大臣の命令でもしてはならない。何のための身分保障か。責任は理財局長の佐川氏にあるのは当然。自ら主導したのならメチャクチャ。政治的な「配慮」でやったのならただのバカ。誰かに命ぜられてやったのなら財務官僚の器にあらず。官僚道、官僚の矜持はどこへやら。財務官僚の資質も地に堕ちた。

元を正せば戦後教育を憂い、新たな初等教育に燃えているように見せかけて政治家に近づき、自らのちゃちな野望を叶えようとした籠池氏と安易に係わった安倍首相夫妻の軽率さに原因がある。安倍首相夫妻は今回に限らず、ひとの話すことのいい部分だけ聞いて好意的な感想を伝え、相手に利用されたケースがままある。内閣総理大臣の名前は重いし、それは夫人も同様。猛省を促したい。

厳しい外交、安全保障環境を考えればいま首相交代などあり得ない。安倍首相は自身の気を引き締め、行政府にきちんと仕事をさせ、内政改革と国益を守り、増進させる外交に邁進すること。

3月11日【東日本大震災から7年】

命を落とされた1万5895人、行方の分からない2539人、震災関連死の3615人の方々の魂の安らかならんことを祈ります。
そして被災され、生き続けている皆様のひとりひとりが少しでも幸せになれますように。

武満徹 セレモニアル 小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ 1991 動画 ライブ