アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

園田高弘の弾く「展覧会の絵」【ヤマハピアノで極めた頂点】

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1992年セッション録音。手厚く明暗の行き交う冒頭のプロムナードから充実。強靭かつ軽重自在の弾きっぷりで各場面の面白さを描き、作品全体の交響的連続性もあぶり出す。リズムをシャープに決めつつ、線の太い輪郭で仕上げたラヴェルはユニーク。ヤマハピアノ通算500万台目の楽器(CFⅢ-S)を使用。解説書に奏者自身の楽曲解説、詳細な録音データが記される。#クラシック音楽 #園田高弘 #cd #ピアノソロ #展覧会の絵 #ムソルグスキー #ラヴェル #クープランの墓 #なき王女のためのパヴァーヌ #パヴァーヌ #エヴィカ #ヤマハピアノ #cf3s #意外性
1970年代に行った「展覧会の絵」のセッション録音(日本コロムビア)の使用ピアノはボールドヴィン。このエヴィカ録音ではヤマハピアノを文字通り掌中におさめ、技巧、ダイナミズム、色合いの変化の全てでトップクラスの内容を展開。園田高弘の全録音中の頂点と言えるもの。

石原慎太郎が「群像」で連載小説開始【怨みは消えた?】

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石原慎太郎、作家生活60年余にして初めて「群像」誌に執筆!しかも長年書く書くと言ってきた家族小説の連載。奇しくも瀬戸内寂聴の連載も開始。#文芸誌 #雑誌 #群像 #講談社 #石原慎太郎 #石原愼太郎 #湘南夫人 #瀬戸内寂聴 #水に流す #小説 #2018年8月号 #新連載 #連載開始 #連載小説
かつての編集長、大久保房男と口論したのが原因で「群像」には1度も執筆してこなかった石原慎太郎。長年温めてきたとされる「ある一族の物語」を綴る場にここを選ぶとは。続きが楽しみ。
なお本号の奥付に北条裕子の『美しい顔』に関する「告知」(編集部からのおわび)が掲載。参考文献が挙げられている。

メータ指揮、NYPのブラームス交響曲第4番【掘り出し物】

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8枚組2,700円。正直言うと協奏曲が目当て。スターンとのヴァイオリン協奏曲は既所持だが音質が大きく向上、独奏の潤いや雄大さをふくよかに伝える。バックの立体感、低音の充実度も増した。交響曲第1番は過去アメリカでカセットテープのみ発売(1987年)された音源。このリリースが初CD化だった。#メータ #ズービンメータ #ニューヨークフィル #ニューヨークフィルハーモニック #ブラームス #交響曲全集 #ヴァイオリン協奏曲 #二重協奏曲 #2重協奏曲 #ピアノ協奏曲第2番 #ピアノ協奏曲第1番 #チェロ #ズッカーマン #ズーカーマン #アイザックスターン #スターン #リマスター盤 #ソニークラシカル #cd #ボックス #クラシック音楽
交響曲第4番は良かった。線の太い響きでモリモリやりながら全体の骨格は締まっている。時より漂う優しい表情。オーケストラの高い個人技も奏功。
Zubin Mehta conducts Brahms<完全生産限定盤>
ズービン・メータ(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ブラームス:交響曲第1番

石原慎太郎・瀬戸内寂聴『往復随筆 人生への恋文』【密やかな交歓】

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涙、夢、不可知なるもの…ひとの行く道に絡む様々な要素を二人の大人が綴り合う。どちらも簡素な骨格で行間の表情が豊か、深い余韻。脱帽。#文春文庫 #読書 #石原慎太郎 #瀬戸内寂聴 #立木義浩 #往復随筆 #随筆 #文士 #2008年 #大人の味 #石原愼太郎 #異種格闘技戦 #意外な取り合わせ #実は仲良し
元々は雑誌「家庭画報」の連載。2003年に世界文化社から単行本刊行、2008年に文春文庫で文庫化。変わった顔合わせだと思う方もいらっしゃろうが瀬戸内寂聴はことあるごとに石原愼太郎の文才を絶賛している。なお文芸誌「群像」2018年8月号から2人はそれぞれ連載を開始。長年「群像」と縁のなかった石原愼太郎だが2018年3月号に西村賢太との対談で初登場した。

『読売日本交響楽団創立50周年記念誌』(2012年刊行)

https://www.instagram.com/p/Bk7yiQnhcYJ/
ずっと気になっていたがようやっと借り出してパラパラ。貴重な写真はあるものの所々記述が不正確。例えばマゼールが初めて振った日本のオーケストラは読響とされているが実際は東京交響楽団。また1963年の近衞秀麿、1981年のドラティ客演に本文で全く触れていない。後者については片倉康行氏がコラムでフォローしている。#読売日本交響楽団 #本 #創立50周年 #2012年 #記念誌 #cd付き #期待はずれ
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ちょっとビックリしたのは若杉弘のこと。1965年から1975年にかけて専属指揮者・常任指揮者として347回も指揮したがその後は最晩年の2007年6月28日のたった1回だけ。幸い聴くことができた。何故32年間共演しなかったのか。いわゆる「小澤事件」に起因する小澤征爾N響の絶縁期間並みの長さだが誰も全く追求しない。
シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団/ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ、フランク:交響曲ニ短調
スクロヴァチェフスキ、読響/ベートーヴェン:交響曲第3番、第4番、第5番他
ゲルト・アルブレヒト、読響/ブラームス:交響曲第1番、 悲劇的序曲、 大学祝典序曲
若杉弘、読響/團伊玖磨:オペラ『夕鶴』(全曲)
ジャン=ピエール・ランパル(フルート)、ウィリー・シュタイナー指揮、読売日本交響楽団/モーツァルト:フルート協奏曲第1番・第2番

園田高弘・カラヤン・NHK交響楽団・1954年【夜明け前の一期一会】

https://www.instagram.com/p/Bk5OvgHB_VM/

園田高弘とカラヤン指揮、N響の共演。当時25歳のピアニストはパールトーンの磨かれたタッチで生き生きと弾き進む。時折前のめり気味の躓きこそあれど堂々たるもの。カラヤンの指揮は意外とズッシリ。うまくソロを引き立てている。旧いが十分聴ける音質。#カラヤン #園田高弘 #nhk交響楽団 #ベートーヴェン #ピアノ協奏曲第4番 #1954年 #cd #キングインターナショナル #放送録音 #伝説の真相

この音源の件は5月に取り上げた。

choku-tn.hatenablog.com

共演が行われた1954年4月は園田高弘カラヤン双方にとって「夜明け前」だった。園田は1952年にかけて渡欧、ジュネーヴ国際コンクールでは予選落ちに終わるもパリに赴きマルグリット・ロンのもとで研鑽を積んだ。ところが翌年体調を崩し、肋膜炎と診断されてやむなく帰国、軽井沢で療養する。カラヤンとの共演は療養を一時中断してのものだった。カラヤンの側は当時ウィーン交響楽団を拠点に活躍する一方、フルトヴェングラーの影響下にあった名門楽団への共演は阻まれ、頭のつかえている状況。20歳違いの両者は音楽人生の転換点に差し掛かっていた。

同年秋、フルトヴェングラーが死去。カラヤンは1956年に後任としてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(BPh)の芸術監督に就き、加えてウィーン国立歌劇場音楽監督の座も掌中に収め、園田と共演した時の「気さくなお兄さん」から「帝王」への道を歩み始める。そんなカラヤンの推薦状を得て1957年7月、病の癒えた園田はベルリンに渡り、ヘルムート・ロロフに師事。カラヤンとも再会してBPhの演奏会出演の約束を取り付けた。事実1959年1月に園田はコンツ指揮、BPhと共演してベートーヴェンの「皇帝」を弾いている。この後も幾度かBPhの演奏会でソリストに起用されたがカラヤンとの共演はかなわなかった。マネージャーのバッシェがアンチカラヤンだったことの影響かもしれない。面白いことにバッシェの紹介で園田が知り合ったのがBPh、カラヤンと因縁浅からぬチェリビダッケ。1960年代、園田は若きチェリビダッケと複数回共演した。

楽家の経歴でしばしば「・・・との共演で高い評価を得て」とか「・・・の推薦により」という表記を目にする。しかし実際どんな演奏だったのか検証できることはまれ。今回、園田とカラヤンの共演音源が世に出てようやっと「伝説の真相」を耳にできた意義は大きい。言うまでもなく園田の演奏はカラヤンが頷いたのも納得の内容。

※敬称略

〔参考文献〕

園田高弘『ピアニスト その人生』(春秋社;2005年)

園田高弘(ピアノ)、ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)NHK交響楽団

園田高弘(ピアノ)/ブラームス:ピアノ協奏曲第1番・第2番、シューマン:ピアノ協奏曲

ヘルムート・ヴィンシャーマン(指揮とオーボエ)、ドイツ・バッハゾリスデン初期の名盤【J.S.バッハ:協奏曲集】

https://www.instagram.com/p/BkvHmIzBOII/
センセーションを巻き起こした1962年のバッハゾリスデン初来日直後のセッション録音。透明度が高い闊達に動く響きでピシッと決めた内容。ヴィンシャーマンのオーボエ、アクセンフェルトなどによるチェンバロも冴える。初期メンバーの名盤だが状態の良い中古を専門店で450円ほどで購入。いい買い物だが当該店舗のスタッフの知識が心配。#バッハ #バッハゾリステン #ヴィンシャーマン #チェンバロ協奏曲 #オーボエ #バッハゾリステン #ドイツバッハゾリスデン #cd #denon #格安 #中古cd #クラシック音楽 #バロック音楽 #モダン楽器 #jsバッハ
高度成長期の日本でクラシックファンの間にバッハブームを巻き起こした要素のひとつが1962年のヘルムート・ヴィンシャーマン率いるドイツ・バッハゾリスデンの初来日。緻密かつ親しみやすいシャキッとした肌触りの清新なアンサンブルが日本の聴衆の心をとらえた。NHKによるテレビ放送も行われている(一部映像は現存)。とりわけBMV1060aのオーボエとヴァイオリンによる協奏曲は彼らの演奏で知名度が上がった。ただこの団体、後年も度々来日、「マタイ受難曲」などの名演を披露したがメンバー変更やピリオドアプローチの振興により日本の聴衆が初来日時以上の感銘を受けることはなかった。
ヘルムート・ヴィンシャーマン(指揮)、ドイツ・バッハゾリステン/J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244