アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

※12/28目標達成※内なる声に導かれて【トランペット奏者・田尻大喜が音楽で目指すアフリカ支援】

熊本県出身、小中学校時代の一時期はケニアで過ごしたトランペット奏者・田尻大喜(作曲家としては桃尻大喜名義)。彼が思い出の地、ケニアの子供たちに音楽を届ける事業の実現のため、クラウドファンディングで資金集めを始めた。

readyfor.jp

アフリカ支援の重要性が言われて久しい。一部の国による巨費を投じたインフラ支援が目立つなか、日本人は長年色々な形で地道な支援を行ってきた。文化プログラムもしばしば見かけるなか、田尻のプロジェクトの特色は自身が子供時代をケニアで過ごし、当時あった内面の疼き、そして時を経るなかで湧いてきた身体の内側からの声が背景にあること。例えばメディア報道でアフリカを知って何かを考えた、といったケースとは違う、思想や説得力あふれる言葉が上記リンクの告知文に宿っている。

11月15日のNHK-BS1「国際報道2018」で日本の陸上自衛隊のメンバーが2018APECホスト国パプアニューギニアの軍楽隊を訓練する場面があった。南太平洋の要衝に位置するこの国では地域の国同士による支援競争が喧しい。その中で日本が一見地味だが人々の誇りや自律心を養う方向性の支援を行う姿に心動かされた。

いい音楽を形作るには個人が勝手気ままにパーパーやってはダメでお互い協力したり、時には誰かが日陰に回ったりという過程が必ずある。つまり楽器を持つところから始まって、もしアンサンブルとなればその先に規律心や社会性を育む可能性が拡がる。そうした夢への第一歩として今回田尻が試みるプロジェクトが実現すればいいと思う。是非一度本人の言葉に耳を傾けてほしい。

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My Favorite Things Special【ドラマ「刑事コロンボ」ベスト10〔序章〕】

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2018年は米国ドラマ「刑事コロンボ」誕生から50年。#刑事コロンボ #コロンボ #ピーターフォーク #海外ドラマ #別冊宝島 #宝島社 #レインコート #葉巻 #警部補 #ルテナント #コロンボ警部 #ムック本 #角川書店

1968年2月20日刑事コロンボは米NBC系で初めてテレビ画面に登場した。この「殺人処方箋」を含む単発2作品の高評価を受け、3年後の1971年にシリーズ化されると世界中で大評判。日本ではNHKにより1972年から放送開始。以来約45年にわたり、民放やBS・CSも含めて再放送され続けている。

英国ミステリとの連続性

周知の通り、刑事コロンボはテレビドラマの世界に倒叙ミステリの手法を初めて持ち込んだ。「倒叙」という言葉は話の順序が逆さまの意。つまり倒叙ミステリは「犯人あて」が主眼の通常のミステリとは逆に冒頭から犯人を明かして犯行のプロセスを克明に描き、次に探偵役が犯人と対峙してその犯罪を暴く筋立て。

倒叙ミステリは20世紀初頭にオースティン・フリーマンのソーンダイク博士シリーズで創案されて以来、クロフツ、バークリーなどが同手法による名作をものしているので英国ミステリの世界とそのファンにとってはおなじみのスタイル。しかし英国ミステリを読む機会など殆どないアメリカの大多数の視聴者は当初面食らい、やがてピーター・フォーク演じるユニークな刑事の捜査ぶりに快哉を送ったと思われる。

刑事コロンボの生みの親、リチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンクはともに子供の頃からの英米本格ミステリマニアだった。そうした素養の深さが刑事コロンボのフォーマット、後年作り手の構成が変わっても(少なくとも旧シリーズの殆ど作品には)流れ続けた品格ある知的サスペンスの要素を生んだ。この要素が日本での人気を呼んだ理由の1つだろう(「もうひとつの鍵」は言うまでもなく一見冴えない中年男性が大活躍するプロットに対するサラリーマンからの共感)。

また刑事コロンボのクリエイターたちはNBCの反対にもかかわらず、脇役を中心に英国系俳優を多く起用した。創っている作品のルーツへの意識は確実にあったと思われる。

懐かしの「金曜ロードショー

刑事コロンボとの出会いは子供の頃、日本テレビ系「金曜ロードショー」で放送されていたのを親の横で見た時。当然ストーリーの全体像は摑みきれないのだが最初に何やら悪だくみをするひとが登場して、その後いつもコートを着ているひとが犯人に食い下がる流れは印象に残った。小学校高学年にミステリ小説好きとなって以降は親以上にしっかり見るようになり、最もなじみ深い海外ドラマになった。

往年の金曜ロードショーのオープニングを動画サイトで見ると「さあ、今夜の刑事コロンボは何だろう」と胸ときめかせたのを思い出す。水野晴郎氏の解説もいま見ると「はぁ」なところもあるが当時は面白く聞いた。

水野晴郎 『刑事コロンボ-死者の身代金』紹介 - YouTube

NHKの「ベスト20」に便乗しつつちょっと抗う

11月3日にNHK-BSプレミアムで「完全捜査ファイル」と銘打った刑事コロンボの特集番組があり、事前の視聴者投票によるベスト20が発表された。

www9.nhk.or.jp

あらかたは納得できるが「指輪の爪あと」が外れた一方、さして面白くない「忘れられたスター」や「秒読みの殺人」がランクインなど疑問も。そこで次回から個人的ベスト10をコメント付きで紹介。以前のホームズは数ヶ月かかってしまい、「督促」まで頂戴する体たらくだったので今回は年内完結を目標にする。

〔参考文献・サイト〕

刑事コロンボ レインコートの中のすべて』マーク・ダヴィッドジアク著、岩井田雅行、あずまゆか訳(角川書店;1999年)

別冊宝島1330 刑事コロンボ完全捜査記録』町田暁雄監修、えのころ書房絵(宝島社;2006年)

fact-web.com

ユンディ・リのベスト盤【「ピアノのキムタク」と言われたころ】

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シューマン=リスト「献呈」に出会った盤。懐かしくて今でもたまに聴く。音像との距離感の適切な好録音。#ユンディリ #シューマン_リスト #献呈 #ピアノソロ #ピアノ #ベスト盤 #美メロ #ドイツグラモフォン #ユニバーサルクラシック #cd #セッション録音 #クラシック音楽 #トランスクリプション

20世紀最後のショパンコンクール(2000年)のチャンピオン。当時史上最年少。本ベスト盤で聴ける優勝直後の歯切れのいい指捌きによる端麗な清涼感のあるピアノサウンドは印象的だったし、いま聴いてもいとおしい。いわゆるサビのところのスローダウンが時折パターン化しちゃうのが「若さ」だった。

この後EMIへ移籍、そして近年再びドイツ・グラモフォンにショパンなどを録音。音の骨格が逞しくなり、影も浮かび、表現の引き出しは格段に増えた。2015年ショパンコンクールの審査員にやはり史上最年少で選ばれる栄誉も得ている。

ショパン:4つのスケルツォ/4つの即興曲

ショパン:4つのバラード、子守歌、4つのマズルカ 作品17

ユンディ・リ/ショパン:前奏曲集(全26曲)

ユンディ・リの芸術

たまには軽いものを【読みやすいがズッシリくる新書】

https://www.instagram.com/p/BppA9RFnhpc/
軽く読める(中身が軽いではなく入りやすい)本が欲しくて。#文春新書 #角川新書 #石原慎太郎 #猪瀬直樹 #三浦瑠麗 #国際政治 #日本政治 #戦後政治 #外交 #安全保障 #読書 #これから読む #新書 #国家観
三浦瑠麗さんは同い年で出身県も同じ。あまりの知性、学識、論理形成力の差に生きているのが嫌になりそう。シンプルな言葉でひとの心を八つ裂きにする天才。しかも不思議と後味は悪くない。

バーンスタイン指揮のリヒャルト・シュトラウス【マーラーの陰に隠れて】

https://www.instagram.com/p/BpZofyiHz4W/

祝典前奏曲の暴走機関車。式典なら来賓が心臓発作を起こしそうだ。面白くって日に何度も聴いてしまった。#バーンスタイン #リヒャルトシュトラウス #祝典前奏曲 #スピード違反 #テンポ早い #ニューヨークフィルハーモニック #ニューヨークフィル #パワービックス #オルガン #ドンキホーテ #サロメ #ヴェールの踊り #1960年代 #クラシック音楽 #cd #ソニークラシカル #レナードバーンスタイン

1943年11月14日、レナード・バーンスタインがブルーノ・ワルターの代役としてニューヨーク・フィルハーモニックでデビューした時のメイン曲目が「ドン・キホーテ」。後年自らホストを務めた「ヤング・ピープルズ・コンサート」でも取り上げた。上記画像のセッション録音は盛り上がりでスローダウンを効果的に使う。ソロ2人より打ち物が際立つのは御愛嬌。

バーンスタイン/R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」&祝典前奏曲他<期間生産限定盤>

バーンスタイン/R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」他<期間生産限定盤>

レナード・バーンスタイン/【SACDハイブリッド】R.シュトラウス:ばらの騎士(全曲)

【Blu-ray Disc】バーンスタイン: ヤング・ピープルズ・コンサート Vol.1

https://www.instagram.com/p/Bpmf2AznThj/

ザロメの終曲はカバリェの声を味わいたければラインスドルフ盤。絶頂期のバーンスタインの打ち物1発まで狂気の血が浮かぶ指揮に引きずり込まれる。併録の歌曲はカバリェの艶やかなピアニシモをバーンスタインがしっとり彩る。オーケストラのドロッとした質感も面白い。#バーンスタイン #レナードバーンスタイン #フランス国立管弦楽団 #モンセラートカバリエ #カバリェ #リヒャルトシュトラウス #ザロメ #サロメ #ヴェールの踊り #7つのヴェールの踊り #歌曲 #献呈 #子守歌 #1977年 #絶頂期 #ライヴ録音 #ソプラノ #cd #ドイツグラモフォン #ユニバーサルクラシック #終曲 #楽劇 #Salome

ドイツ・グラモフォンのレコーディングではカラヤンベームの存在が重かったかシュトラウス録音はカバリェとの1枚のみ。マーラー同様作曲・指揮両方で名を成したシュトラウス。やはり作曲家、指揮者として八面六臂だったバーンスタインにとって「そそられる」レパートリーと思うのだが少なくとも録音上はマーラーほどの存在感はない。ヨーロッパのオーケストラともう1曲、2曲何か聴きたかったところ。

カバリェ(ソプラノ)、バーンスタイン/R・シュトラウス:楽劇≪サロメ≫から、5つの歌曲<初回プレス限定盤>

エーリヒ・ラインスドルフ/R・シュトラウス: サロメ

バーンスタイン作曲・指揮「チチェスター詩篇」(1965)

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還暦を記念したアルバム。この時期のバーンスタインには舞台作品の失敗、夫人との別居から永遠の別離による終幕と殆どいいことがなかった。三浦淳史さんがライナーノーツで別居の理由を「天才のライフスタイル」としているのは奥ゆかしい。チチェスター詩篇はバーンスタインのクラシック畑の作品で数少ない傑作。#バーンスタイン #レナードバーンスタイン #ソングフェスト #チチェスター詩篇 #ワシントンナショナル交響楽団 #イスラエルフィルハーモニー管弦楽団 #クラシック音楽 #cd #1970年代 #ユニバーサルクラシック #ドイツグラモフォン

レナード・バーンスタインがいわゆる「クラシック音楽」として書いた作品の殆どは正直言って凡打の山。2018年にあちこちで演奏された交響曲第2番「不安の時代」は声楽が要らず、ピアノ協奏曲風の作りで取り上げやすかったのだろうが、長くて中途半端な内容で名前を伏せて聴いたら「大したことない作曲家の大したことない作品」と受け止められるはず。大体真に優れたもの、例えばラフマニノフストラヴィンスキーの作品はアニバーサリーとか関係なく演奏、録音されている。バーンスタインクラシック音楽作品でそれに近いのは「チチェスター詩篇」やヴァイオリンと管弦楽のためのセレナードくらい。

バーンスタイン:≪ウエスト・サイド・ストーリー≫≪オン・ザ・タウン≫≪キャンディード≫(抜粋)/セレナード/チチェスター詩篇、他全7曲

Leonard Bernstein Conducts Bernstein<初回生産限定盤>

レナード・バーンスタイン 生誕100年 20世紀感動派~バーンスタインの音楽

メータ指揮/コープランド:リンカーンの肖像(1942)【名優グレゴリー・ペックの語りにしびれる】

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3部構成の「リンカーンの肖像」は第3部にリンカーンの事蹟と名言を語るナレーションが入り、有名な「ゲティスバーグの演説」で結ばれる。1942年に国威発揚の意図から委嘱されたらしいが日本でよく作られた脳筋的音楽ではなく第1部の澄んだ情感、第2部のフォスターや愛唱歌の引用など練られた品格漂う内容。そのため複数の録音が存在する。本盤のグレゴリー・ペックの語りが醸し出す柔らかい厳かさはNo.1。メータの形作るしなやかでくっきりした凹凸のサウンドもよく合っている。#コープランド #メータ #ズービンメータ #グレゴリーペック #デッカ #decca #ユニバーサルクラシック #クラシック音楽 #リンカーン大統領 #cd #ロサンゼルスフィルハーモニー管弦楽団 #lapo

本作のラストには片山杜秀教授がしばしば指摘する「バーンスタインコープランドから受けた影響」がはっきりとよぎる。この点があまり日本で話にのぼらないのは2人の「特別な関係」を忌避する気持ちとコープランドの評価が日本で低いため「天才バーンスタインコープランド程度の作曲家から影響を受けたなんて」という心理だろう。

歴代屈指の大統領と称えられるリンカーンを取り上げた作品ゆえ、ヘンリー・フォンダ(自作自演)、キャサリン・ヘップバーン(カンゼル盤)、サミュエル・L・ジャクソン(ジェイムズ・レヴァイン盤)、ジェイムズ・アール・ジョーンズ(シュウォーツ盤)など錚々たる顔ぶれのナレーションが残っている。変わったところでは湾岸戦争の英雄ノーマン・シュワルツコフ将軍(スラットキン盤)、キャスターの小倉智昭が吹き込んだ日本語音源(レヴァイン盤の日本ヴァージョンとして)もある。

上記画像のグレゴリー・ペックのナレーションのメータ盤は演奏と音質両面でトップ。対訳付き国内盤が結構カタログに留まっている。併録のリヒャルト・シュトラウス英雄の生涯もエネルギッシュかつ気品を感じさせる充実の内容。半世紀前の収録が信じられないほど立体的で生き生きした優秀録音。

【SHM-CD】プロコフィエフ:ピーターと狼 ブリテン:青少年のための管弦楽入門 コープランド:リンカーンの肖像

【CD】Leonard Slatkin - The American Collection

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