アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

石原慎太郎が呼んだ!?マゼール指揮の「トリスタンとイゾルデ」【ほの暗い響きのうねり】

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浅利慶太、石原慎太郎が財界の大物と組んで幕を開けた日生劇場。その残照は現在も残っている。浅利慶太は7月13日に85歳で死去。#浅利慶太 #石原慎太郎 #石原愼太郎 #文春文庫 #日生劇場 #ベルリンドイツオペラ #武智歌舞伎 #武智鉄二 #わが人生の時の人々 #五島昇 #弘世現 #若き日 #訃報 #ロリンマゼール #ワーグナー #トリスタンとイゾルデ #読書

日生劇場の誕生にあたって石原慎太郎氏と浅利慶太氏がいわばオープニングプロデューサーを務めたことは以前に記した。

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そしてこけら落とし公演として招聘されたのはベルリン・ドイツ・オペラ。海外オペラハウスの引っ越し公演は史上初、日本洋楽受容史上に残る快挙だった。石原氏は『わが人生の時の人々』(文藝春秋;2002年〔文春文庫;2005年〕)に次のように記している。

さてその劇場のこけら落としの出し物だが、多少の金がかかってもその分の料金を出し物が画期的なら客受けもするはずだと、今思えばとんでもない企画を立てたが、それがまんまと図に当たり結果として大成功だった。

とにかくあの有名なベルリン・オペラを丸ごと呼ぼう、裏方も何かもすべてのスタッフを呼び寄せてやって来ないのはオペラハウスだけという規模の、完璧なベルリン・オペラを東京で実現しようということになり、現地の有力新聞も旨く乗せてしまってドイツ政府も動き出し、結果全スタッフに加えてリュプケ・ドイツ大領領の来日までも決まり、その答礼に日本側では天皇陛下の来臨行幸とまでなった。

(中略)初日当日の出し物のオペラはベートーベン作の「フィデリオ」で、最終章に検察官役の当時世界最高、全盛期のバリトン歌手のフィッシャー・ディスカウが辺りを払って登場するクライマクスには皆痺れたものだが、その前の前、両国元首を迎えての国歌吹奏でベルリン・オペラフィルが演奏した国歌「君が代」の印象はなぜか日本のいかなるオーケストラの演奏ともひと味ふた味違っていて、きわめて印象的だった。

その印象は一人私だけのものではなかったようで、幕間に出会った文藝春秋新社の池島信平氏が、

「いやあ石原君、オペラもいいがなんたってひさしぶりに君が代らしい君が代を聞いたよ」

と相好崩してくれたのが嬉しかった。

劇場のこけら落としに絶対にワグナーを、それも必ず「トリスタンとイゾルデ」をと主張したのは企画担当の私のエゴだったのだが、やはり満喫させられた。

何度か上演されたこのレパートリーに限っては役得で、そのたび劇場のどこかで眺め鑑賞したものだが、そのたび印象的だったのは三幕最後のあのイゾルデの絶唱「愛の死」の折に、当時売り出し中の、今では世界のグラン・マエストロに成りおおせた指揮者のローリン・マゼールが、指揮しながら曲のクライマクスで大きく腕を振り体をのけぞらせて斜め後ろを振り向くと、そこに新婚早々の夫人が両手で胸を抱くようにしうっとりと彼を見上げているのだった。

実はこれには厄介な伏線があって、なにしろ評判の興行だったからオペラの券はたちまち完売してしまったが、マゼールが指揮する際の指揮者の左斜め後ろの席は夫人専用と決まっているのだそうな。ところがそれを知らずに切符を売り尽くしてしまい、もちろん指揮者の奥さんのための席はしかるべく準備はしてあったのだが、マゼールにいわせると彼等二人のためにその席は絶対に必要なのであって、熱烈な恋愛の後結婚した夫人がいつもの席に座っていないのなら自分は指揮はしない、出来ないという。

しかしその席はとうに熱烈なオペラファンの手に入っていて、当人は絶対にこの席をゆずる訳にはいかないと。といっても肝心の指揮者が指揮しない、指揮出来ないのでは話にならず、くだんのお客を懸命に口説き落とし、その引き換えに劇場の大事な関係者のためにとっておいたグランド・サークルの一番前の桟敷をただで提供さぜるを得なかった。

ということでいよいよ本番となりあの甘美な「トリスタンとイゾルデ」の上演、そして最後の最後の、私にとっては世界の音楽の中で一番官能的な「愛の死」の絶唱で、あのうねっては押し寄せ、砕け落ちては引いていき、そしてまた切りなくうねっては押し寄せる輝く波のような甘美極まりない旋律の中で、指揮の棒を振る当人も、眺める彼女の方も共に相重なったエクスタジーの中にいるだろうから、眺めていてもむべなるかなという感じではあった。

最近また久し振りに東京でマゼール指揮の演奏を聞いたが、その指揮ぶりは彼がさらに円熟しきってまさしく世界のトップの中のトップの巨匠に成りおおせたのを証していたと思う。演奏の後楽屋を訪ね敬意を表したが、

「あなたは実に見事に円熟しましたね」

私がいったら昔のことを覚えていて、とても嬉しそうにしてくれたのも嬉しかった。

しかしそこで紹介された奥さんは、あの日生劇場こけら落としの折、彼がかなでさせる「愛の死」にうっとりと聞きほれていた件の女性とは違っていたが。

(文春文庫版、pp.429-pp.434、表記は原文のまま)

1963年当時のマゼール夫人はレザー会社の相続人の女性のはず。ただこの方は三浦淳史氏の『演奏家ショートショート』(音楽之友社)によれば「決して劇場にいかない人だった」らしいので別の女性あるいは石原氏が話を盛った可能性もある。最後の落ちで登場する「奥さん」は3人目のディットリンダ夫人だろう。

なお石原氏は後年「現代の《トリスタンとイゾルデ》」と自称する小説『火の島』(幻冬舎)をものした。これは氏を代表する奇作として名高い。

ときにベルリン・ドイツ・オペラの初来日公演のうちベーム指揮の「フィデリオ」(初日ではない)・「フィガロの結婚」・ベートーヴェンの第9交響曲、ホルライザー指揮の「ヴォツェック」は後年ライヴ録音が発売された。一方、事実上の日本初演だった「トリスタンとイゾルデ」の演奏内容はずっと想像するしかなかった。

2019年11月、その「トリスタンとイゾルデ」のCD化がついに実現した。思いのほか良い音質で当時33歳のマゼールの躍動感あふれる音楽作りがしっかり聴ける。ぐわぐわと高まる響きは強いエネルギーを発し、その場の空気の揺れを感じられるほど。なかでも第3幕前奏曲の地の底から現れる重く翳の濃い音楽は日本のオーケストラでは今なお聴けない質感であり、当時の日本の聴衆にはショックだったろう。

冷戦下、国立歌劇場が東ベルリン側へ行った状況を想うと、ベルリン・ドイツ・オペラのメンバーは西ベルリンを背負う存在として自由世界の日本において高いテンションで演奏に臨んだと思うし、そういった政治的背景も招聘実現の理由だと推測する。

日生劇場では現在、日本の団体によるオペラ興行が定期的に催されている。かつてベルリン・ドイツ・オペラが日本のオペラの歴史を拓いた場所にふさわしい水準の上演であることを切に望みたい。

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(全曲) ロリン・マゼール 、 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

ワーグナー名曲集 ロリン・マゼール 、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 、 ピッツバーグ交響楽団 、 ヘスス・ロペス=コボス 、 シンシナティ交響楽団

マーラー: 交響曲第2番「復活」 ロリン・マゼール 、 読売日本交響楽団

ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱」 カール・ベーム 、 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

ベルク: 歌劇「ヴォツェック」(全曲) ハインリヒ・ホルライザー 、 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

11/2:コクミンテキギロン☆しようSP@shibuyacast【党派性を超えた共通認識】

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本日はこちら。ひとりひとりの視点、方向性をじっくり聞けて自身の見解を磨き、考察を深める機会となった。御三方と運営者の皆様に感謝します。#コクミンテキギロン #コクギ #渋谷キャスト #石破茂 #玉木雄一郎 #山尾志桜里 #令和元年 #2019年 #11月2日

イヴェントの主催者はこちら。

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テーマ「どうする?どうなる?憲法9条どことんギロン」

《討議者》※50音順※

石破茂衆議院議員自由民主党鳥取県第1区〕・元国務大臣・元自由民主党幹事長)

玉木雄一郎衆議院議員〔国民民主党香川県第2区〕国民民主党代表)

山尾志桜里衆議院議員立憲民主党・愛知県第7区〕)

《コーディネーター》※当日の紹介順※

水上貴央(弁護士)

倉持麟太郎(弁護士)

序論:立法から考える現在の日本の本質的課題

水上氏から3氏に対して国家観を探る意図として以下の質問を行い、回答を求めた。

「もし自由に法律を1本作れるもしくは改正できるとしたら何をしますか」

山尾氏は「(皇室典範を改正して)女性が天皇になれるようにしたい。日本は(憲法の最初に記される)天皇の権威と内閣総理大臣を頂点とする権力の2つの中心がある楕円の構造になっている。これはいいことだと思う。なぜなから権力側は基本的に多数決の論理だがそれが良くないこと、間違いを犯すケースもある。もうひとつ多数決の論理に縛られずに存在する要素があったほうが国として健全。しかし現在の男系男子に皇位継承が限定される状況では皇室が先細り、いずれなくなるのは明らか。女性天皇女系天皇女性宮家の道を開き、皇室が続くようにしたい」と述べた。

この意見を伺っていて中曾根康弘氏の『自省録-歴史法廷の被告として』(新潮社;2004年〔新潮文庫;2017年〕)の一節を思い出した。

日本の国家構造は、象徴天皇の権威と、現実的権力の運営者である内閣総理大臣との二重構造です。かたや超越、こなた俗界の二重構造なのです。まず伝統的権威、国民統合の中心としての象徴天皇をいただく構造があり、現実の国家権力は、立法、司法、行政の三権の間のチェック・アンド・バランスで運用され、その中心に首相がいるもう一つの構造がある。この二重構造は日本の特徴であり、見事に機能しています。

政治とは、お世辞と生死の間を往復するものです。どぶ板を踏み、時に間違って道端の地蔵にまでお辞儀をするくらいお世辞を振りまかなければ、大衆民主主義の現代では当選はおぼつかないです。俗物と言えば俗物ですが、当選した議員には、人間の生死に関わる重大な案件を処理する厳粛な職務があるのです。

加えて首相は、与野党の攻防、ジャーナリズムの批判、世論の毀誉褒貶の真っただ中に身を置いて、政権を運用しています。権力に近づき、それによって自己の理想を実現しようとする者は、”俗物中の練達者”であり、俗物の一員である首相は、傷つき倒れることもあります。政治家には汚辱と栄光がつきものです。

しかし、政権が汚辱で倒れても、日本には超越的存在としての天皇陛下がおられます。俗界の飛沫は天皇には及ばない。否、及ぼさせてはならないのです。この二重構造によって、日本の伝統と民主主義との調和があり、求心力と遠心力の均衡、いわば歴史的知恵の作用で、日本の自由民主主義は維持されていることを認識すべきなのです。(pp.39より)

自省録―歴史法廷の被告として― (新潮文庫)

自省録―歴史法廷の被告として― (新潮文庫)

中曽根康弘が語る戦後日本外交

中曽根康弘が語る戦後日本外交

昭和の指導者 (単行本)

昭和の指導者 (単行本)

皇室と皇位継承の維持は大切だが女性天皇女系天皇女性宮家を取り入れた場合、外戚が大幅に増えるなど皇室は相当大きく変容する。そうしてまで皇室を維持するのか文字通り「コクミンテキギロン」に値するテーマだろう。

玉木氏は「財政法を見直し、国債の発行対象を適正化する一方、”こども国債”を発行して教育や科学技術に必要な財源を確保する。平成最初の予算と最後の予算を比較したとき、公共事業や社会保障への支出は大幅に増え、それに伴う国債発行を賄う国債費も増大した。一方で文教や科学技術関連予算は約5兆円で殆ど動いていない。アメリカやチャイナを見ると大幅増、軍事関連の研究開発費も入れたらまさにけた違い。社会保障は安定財源で賄い、文教や科学技術にお金を注げるようにしたい」と提案した。

石破氏は「安全保障基本法が必要だ。日本に基本法は現在50ある。なのに安全保障の基本法がないのはおかしい。重要問題には基本法のもとに手続法があるのが当たり前なのにそうなっていない。あと付け加えるなら日本の東京一極集中は世界的に特異。是正法を作るべき状況」と持論を展開した。

期せずして皇室、財政、安全保障と憲法を論ずる以前に日本の抱える本質的課題が三氏から明確に提起された。秀逸な質問だったと思う。

本論:憲法9条をめぐる問題

山尾氏は「個別的自衛権の保持を憲法9条に書き込む。それによって日本が持つ防衛力の質的制限をある程度かけられる。アメリカの戦争にそのまま付き合うことはしないというスタンスを取る。仮に日本が将来集団安全保障の枠組みに加わったとしても進んで武器を取って出ていくことは困難であり、求められもしないと考える。戦争が終わった後の平和構築、維持における貢献がメインだろうし、そこに注力するのが妥当」と述べた。

石破氏は「憲法9条第2項は削除し安全保障基本法を定める。(憲法9条)第1項はパリ不戦条約などに起源をもち、似た内容の条文を持つ国もあり、さほど特殊なものではない。しかし第2項は現在の自衛隊を考えれば”必要最小限”だから”陸海空軍のその他の戦力”にあたらないと言うのは無理だし、交戦権を認めないとはなんのこっちゃという話。領土、統治機構、国民を守らなければならない事態に自衛隊は出動する。その時規範となるのは国際法、ここに基準を置かないと(前述の目的のために)組織的殺人を許されているのに(警察のような話では)自衛隊員個人の判断に委ねられることになり、成り立たない。憲法9条を守ると言うひとほど日本の外交、安全保障政策を”アメリカ言いなり”と批判する。おかしな話。自らの国を自ら守れない状況でどうやってアメリカ言いなりから脱するのか。

自衛隊の活動範囲、集団的自衛権の問題は)我が国にとって死活的利益が懸かっていれば地球の裏側でも行く。なければ隣でも行かない。アメリカが唯一の同盟国と言うが裏返せば一か国しか同盟してくれないとは情けない話。集団安全保障の枠組みにどう入っていくか考えなければいけないし、まず基本として自らの国は自ら守ることだ」と改めて生来の主張を整理して述べた。

玉木氏は「現在の憲法9条には規範性がないのが問題。ライオンがいて檻が必要なのに全然機能していない。きちんと檻を作る必要がある。規範性のない状況を存続させる意味で憲法9条をそのまま守り続ける主張と安倍首相の言う”第3項を設けて自衛隊を書き込む”案は一緒の話。防衛の質的、空間的な拡大を踏まえた規範性を憲法に持たせないと危うくなる」と教条的護憲論の危うさも含めて指摘した。

はっきり言葉にした玉木氏はもとより他の二氏も安倍首相の提起する「第3項加憲案」を否定した。また序論と本論の間に水上氏と行われたやり取りの中で政局に関係なく憲法調査会の議論を行うのが妥当だという一定の共通認識が示された。

僭越だが本ブログ筆者の憲法9条に関する見解は下記リンクに記載している。

choku-tn.hatenablog.com

補論:第9条以外の憲法改正の論点

山尾氏は今の三権のバランスが行政に偏っていることを指摘し、衆議院解散権の制約や憲法裁判所の設置を提唱。そして政権交代の必要性を主張し、同一選挙区からの立候補制限も提案した。

石破氏最高裁判所裁判官の国民審査を見直すことや参議院を真のチェック機関、本来の上院の在り方に近づける二院制の改革が必要とした。また原爆投下の意図や占領期の法執行などに触れつつ「知れば知るほど怖い国だ」との対米認識を示し、自主防衛の必要性を強調した。他の二氏も対米関係の再検討について触れ、玉木氏日米地位協定の見直しに言及した。さらに石破氏は世界の人口が増えるなか日本は人口が減る現実を指摘し、危機感とともに婚姻率と出生率を上げるための政策実現を説いた。

玉木氏は食糧安全保障の明文化と全議員の4分の1以上の要求があった場合の臨時国会開会の義務化を主張。石破氏は後者に関して先に自身が述べた点と合わせて2012年の自民党案に入っていると同調した。

エピローグ

国会の委員会やテレビの討論会と異なり、三氏がお互いの話をしっかり聞いたうえで論理的に自らの立ち位置を明らかにした時間だった。各氏の放った磁場を検討すると違いがある反面、共通項も見いだせた。例えば安全保障政策に関する規範の必要性、日米関係の重要性は押さえつつ、自律自助の要素を高めなければならないことなど。

憲法9条にまつわる話題は政治家はもとより一般人の間でも党派性むき出しの不毛なやり取りになりがちだが、よく解きほぐして話し、相手の話に耳を傾ければ、主張の背後にあるものが浮かび、そこから現状に対する問題意識が共有される可能性はあろう。石破氏は「9条を一言一句変えないと言うひととこそ話したい」と仰った。見識だと思う。また個人的なことだがずっと心にためてきた最高裁判所の国民審査について石破氏が言及して下さったのはありがたかった。

ただ現状として憲法9条がすぐ改正される、安全保障基本法が直ちに作られることはない。ホルムズ海峡への自衛隊派遣が検討中のなかで憲法の文言との整合性ではなく、日本の国益との整合性に基づく安全保障政策の議論が国会で行われることを強く要望したい。

最後に三氏はもちろんイヴェントを開催、円滑に運営なさったコクミンテキギロンの主催者カルテットとコーディネーターの水上、倉持両弁護士に心から感謝申し上げます。

※文中一部敬称略※

10/27:黒田玲兎11周年live「ウサギノユメ11」【成熟の異空間】

https://www.instagram.com/p/B4Hs7oXF0F0/

今夜はこちら。熟成感のある腰の下りた線が太く彫りの深い音楽が空間一杯にたちこめた。共演ドラムも生まれ変わったサウンドポリシーに合致していた。#黒田玲兎 #kurodalate #10月27日 #2019年 #令和元年 #真昼の月夜の太陽 #東新宿 #ライヴハウス #ヴォーカル #ピアノ #作曲 #ワンマンライヴ #11周年 #ウサギノユメ #上岡憲外 #ドラムス

黒田玲兎は作曲、ピアノ、ヴォーカル、空間演出の全てを手掛け、あふれる色彩と陰翳の交錯する音楽詩情世界を繰り広げるアーティスト。

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約半年ぶりにライヴ(夜の部)へ足を運んだ。

《セットリスト》

-SE:Distance-

WANT

A loof flower

ウェザーニュース

アイムソーリーアイムレイト

kandy

チョコレイトリップ

-impro-

夜に想う、二月

貴方の腕(かいな)が降りるとき(弾き語り)

yuutenji

Piano

Don't know 'bout wine

Rock'n'roll Rabbit

※アンコール※

三拍子のうた(弾き語り)

僕たちの合言葉

ピアノの放つ閃光から抉りのきいたヴォーカルが舞い上がるのが黒田玲兎の世界。そうした予定調和的思い込みは最初の2曲でするりとかわされた。あまり耳にしないナンバーをまろやかな質感の重心の低いピアノの上に線の太いヴォーカルがじっくりと響き合い、地に足の着いた音空間を構築していく。名刺代わりの曲「ウェザーニュース」でそのコンセプトはより明確になった。いったん曲を解きほぐし、一から組み上げており、通り一遍の答えを出さないメッセイジの面白さ、それが醸し出す余韻を丁寧に描く。

キーボードへ移って奏でるナンバーも以前のライヴで聴けた強い吸引力により空間と聞き手を否応なしに巻き込む雰囲気から、それぞれに滲み込むタッチの音楽でおのずからひとつの音空間が生まれるスタイルに転換していた。

それは決して持ち前の艶やエネルギーが薄らいだわけではなくより熟した、聴き手としなやかに響き合う良さ。improの煌めきを経ての3曲のたちこめる翳の濃さ、静々と聴き手を異世界へ誘う音詩のさざ波の魅力は素晴らしく、ラストからアンコールまでの温かな盛り上がりへと繋げた。またドラムスの上岡憲外が少し重めの押し引きで支えたのも今までと違った充実感に貢献した。

熟れた味わいを身につけたサウンドに黒田玲兎の深まりと挑戦心を垣間見た一夜だった。

10/13:園田高弘MemorialSeries「ロマン派撰集」【ときに麗々しくときにしっとり】

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本日はこちら。実力、特徴ある奏者が集って奏でたシューマン夫妻、リスト、ブラームス。骨格、音色感のしっかりした好演が連なる心地よい時間だった。#園田高弘 #園田高弘メモリアル #園田高弘memorial #園田高弘memorialseries #classicalmusic #クラシック音楽 #クラシックコンサート #ドゥオール #髙橋望 #高橋望 #平井千絵 #三木香代 #青柳晋 #大崎結真 #島田彩乃 #新納洋介 #川井綾子 #松本和将 #岡田将 #ピアノソロ #ピアニスト #連弾 #ピアノデュオ #シューマン #クララシューマン #リスト #ブラームス #来年は10月5日 #名手の集い #ロマン派
ドイツと日本を中心に活躍した巨匠ピアニスト、園田高弘(1928-2004)の遺徳をしのび、縁のあったピアニストが集うコンサート。今年で第6回を迎え、来年米寿の春子夫人が元気な姿を見せて下さった。
各々のピアニストは自らの持ち味、特徴を発揮、ロマン派の真髄、多面性を聴き手に伝えた。前年のショパンに続いて見た目の派手さより音の中身の詰まったタッチで魅了した三木香代、柔らかい色彩美を奏でた髙橋望、音形の抉りが深く情のにじませ方にも長けた島田彩乃はとりわけ心に残った。東京文化会館の小ホールはピアノには最上の空間。
願わくば出演したピアニストの中でひとり、ふたりでも園田高弘同様に76歳まで現役のコンサートピアニストとして活躍するひとが出て欲しい。
※文中一部敬称略
レ・ドビュッシー 大崎結真
ブラームス: ピアノ作品集 作品35、117、118 島田彩乃
ブラームス: ピアノソナタ第3番, 6つの小品 Op.118 新納洋介
ブラームス &シューマン ~松本和将ライブシリーズ8
ブラームス・イン・エフ ピアノデュオ・ドゥオール
ファンタジー - J.S.バッハ, モーツァルト, ショパン, シューマン 川井綾子
1840 平井千絵
Dream ~愛奏曲集~ 平井千絵

9/27:井上道義指揮、日本フィル、アリス・紗良・オット【リズムと風土感の反射】

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昨夜はこちらでした。ズバッとした鳴りと弦の強靭で密度の濃い弾きっぷりは指揮者の手腕。ソリストは録音より遥かに好印象。持ち前のリズム感、反射神経の良さに加えて優雅な香りや艶もあった。#井上道義 #アリス紗良オット #日本フィルハーモニー交響楽団 #2019年 #9月27日 #大宮ソニックシティ #リスト #死の舞踏 #伊福部昭 #自作自演 #ピアノ #ピアニスト #クラシックコンサート #クラシック音楽 #classicalmusic #alicesaraott #令和元年 #ハンガリー狂詩曲第2番 #日本組曲

伊福部昭は正直苦手な作曲家だが井上道義らしいガリっと鋭いリズム処理と鳴り物打ち物から極彩色のこぼれる切り返しの妙で聴き通せた。

2曲目のメモリーコンクリート(2004)は自身の音楽的原風景から始めて、マーラーショスタコーヴィチの引用を交えて興隆に富んだ遍歴をたどり、途中上着を脱いで(ミッキー柄のトップスだった!)タップを見せるなどシアターピースの趣もあった。

中盤の誰からも相手にされず指揮が手詰まりとなり、「ごめんなさい」と言って再び立ち上がるシーンはいくつかのオーケストラとあまりいい別れ方をしていないことを思い出した。しかしラストはオネゲル交響曲第2番を思わせる「希望」の展開となりトランペットが出て、「その先」を暗示するように些か唐突に終わる。

演奏前の説明で「我々はどうしても作曲家を神様と見てしまう。それは間違い。作曲家も人間。作曲をすると色々な問題に突き当たる。作曲家のことが分かるし、鏡の中の自分を見られる。簡単に言えば非常に勉強になる」と話していた。

「死の舞踏」は上記インスタグラムに記した通り。

ハンガリー狂詩曲は弦の鳴りっぷりが麗々しくしかも透明。管楽器とのブレンド、各パートの役割分担も明瞭かつ鮮やかに決まっていた。聴きなれた名曲からフレッシュな質感を打ち出す、この指揮者らしい締めだった。

アンコールは「アリスのために」と「虹の彼方に(オーバーザレインボー)」。

「メモリーコンクリート」を書いてから15年、病気などを乗り越えた井上道義の音楽は大きく円熟し、その存在感は増している。「齋藤秀雄、渡邉暁雄よりジイサンになったなんて信じられない」仰っていたが加齢をプラスの作用に転換している稀有な指揮者としてますます輝くだろう。

※文中敬称略

井上道義(指揮) 大阪フィルハーモニー交響楽団/ショスタコーヴィチ:交響曲第11番「1905年」

伊福部昭の芸術/管絃楽のための「日本組曲」

アリス=紗良・オット(ピアノ)/チャイコフスキー&リスト:ピアノ協奏曲第1番 リスト:コンソレーション第3番<生産限定盤>

アリス=紗良・オット(ピアノ)/リスト:超絶技巧練習曲集 ラ・カンパネッラ

ジョルジュ・シフラ/リスト:ピアノ協奏曲 第1番&第2番 死の舞踏/ハンガリー幻想曲

ユージン・オーマンディ/リスト:ハンガリー狂詩曲第1番・第2番 エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番・第2番他

2020年から阪田知樹が展開するピアノ宇宙【ベートーヴェン-リストから遥かに】

解像度の高いタッチによる陰陽の色彩美が明滅する強靭かつ彫りの深い表現で作品の核心を射抜くピアニスト、阪田知樹については幾度か取り上げた。

choku-tn.hatenablog.com

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そしてベートーヴェン生誕250年の2020年6月から阪田知樹は、ハクジュホールでリスト編曲ピアノ独奏版のベートーヴェン交響曲全9曲にリストの作品やモーツァルトシューベルトのリストによるトランスクリプション(創造的編曲)を縦横に絡めたシリーズを開始する。

ベートーヴェン-リストの窓から古典派とロマン派を新しい視点で俯瞰しようという斬新な試みで音楽史的好奇心も刺激される内容。

www.hakujuhall.jp

元々阪田知樹はオリジナル作品とトランスクリプションを組み合わせて枝ぶりのいいプログラムを作るセンスに長けており、今回のシリーズは積み上げてきた知見を凝縮し壮大に展開するものだ。3月1日には横浜みなとみらいホールで序章ともいえるリサイタルの開催が予定されている。阪田知樹が繰り広げる2020年代クラシック音楽シーン最初の「そそられる」音楽プロジェクトを大いに注目したい。

スペイン狂詩曲~阪田知樹デビュー!

後藤泉(ピアノ)ベートーヴェン(リスト編曲):交響曲第3番『英雄』;交響曲第1番

後藤泉(ピアノ)ベートーヴェン(リスト編曲):交響曲 第9番

ベートーヴェン(リスト編): 交響曲第9番「合唱」 (10/8-10/2008) / 若林顕(p)

Beethoven : Symphonies Nos. 1 - 9 ( Transcription by Liszt ) / Katsaris

Cyprien Katsaris - The Sony Recordings<完全生産限定盤>

※告知※2019/10/13第6回園田高弘Memorial Series「ロマン派撰集」【没後15年】

日本が生んだ偉大なピアニスト園田高弘(1928-2004)の遺徳をしのび、ゆかりのあったピアニストがリレー方式で演奏を披露するコンサートが今年も行われる。

2018年のコンサートの様子。

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2019年のテーマはロマン派撰集。生前の園田が得意にしていたシューマン、リスト、ブラームスの名曲がズラリと並ぶ。

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1930541

園田高弘については何度も取り上げたのであえて多くを記さないが舞台姿の威厳、熱いロマンを秘めた強靭な骨格の起伏の大きい響きは時を経てなお、脳裏にすぐよみがえる。思い出はつきず、ますます大切になっている。

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下記のCDには当日のプログラムのひとつ、シューマンの花の曲を収録。

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2018年のコンサート会場で購入したCD。恐らく邦人ピアニストによるラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番の初録音。無為に叩かず、流麗な運びで陰陽の変化が豊か。

https://www.instagram.com/p/BorKANUBnn-/

虹の光が淡く明滅する音色で難所をグイグイ乗り越えるラフマニノフ。若干鈍くさいオーケストラは時折置いてけぼり。ストラヴィンスキーの斜に構えた粋、グラズノフの寂しさの滲む優雅な風景も繰り返し聴きたくなる。#園田高弘 #クラシック音楽 #cd #ピアノソロ #ピアノ協奏曲 #ラフマニノフ #ストラヴィンスキー #グラズノフ #ピアノ協奏曲第3番 #若き日 #1960年代 #放送録音 #シュトゥットガルト放送交響楽団 #意外なお宝 #人は見かけによらず #エヴィカ #練習曲 #ピアノソナタ #cd紹介 #rachmaninoff #classicalmusic #音源紹介

※文中敬称略