アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

芯の太い合理主義者のNo.2【金鍾泌・元韓国首相死去】

6月23日に92歳で死去した金鍾泌・元韓国首相は2015年、韓国・中央日報のロングインタビューを受けている。2017年の暮れ、新潮社から日本語版が出版された。すぐ地元の図書館にリクエストしたところ2018年5月にようやっと神奈川県立図書館が応じてくれて読め…

井上寿一『第一次世界大戦と日本』(講談社現代新書)

第1次世界大戦前後の日本の諸相を分析し、以降の行く道に繋がる要素を透かし彫りした1冊。大正のひとたちの概ね的確な情勢対応、見通しに接するとなぜ昭和の日本が破滅に向かったのか理解に苦しむ。ただそれは結果を知っているから言えること。当時のひとた…

My Favorite Things:石原慎太郎『私の海の地図』【しっとりした内面の声】

美しい写真と共に綴られる海をテーマとした回想エッセイ。長年外洋帆走協会の会長を務めたひとゆえ勇ましい話もあるが文章の基調は静かな心のつぶやき。日本屈指のブルーウォーター派の魂が宿った1冊。「家庭画報」連載の単行本化。#石原慎太郎 #石原愼太郎 …

山本浩二『野球と広島』(角川新書)【ミスター赤ヘルの独白】

帯だけ見ると便乗本に見えるが出版は優勝前年の2015年。解説同様の穏やかな整ったトーンで野球人生とカープに対する愛情を飾らずに語る。津田恒実さん、木村拓也さんのとの挿話は切ない。「キャッチボールの重要性」「監督したい人間の心理」など個々の項は…

渡部昇一『知的生活の方法』(1976年刊行)【往年のベストセラー】

序盤は渡部昇一という学者がいかに誕生したかの自伝風エッセイ、中盤以降に理想の書斎、勉強や整理の仕方などタイトル通りの事柄が出てくる。自身の古典を形成すること、年齢に見合った読書遍歴が賢明であることや再読の重要性、人生の時間を考えた「見切り…

園田高弘の未読著書に向き合う【生誕90年】

未読だった2冊にアタック。#園田高弘 #諸井誠 #往復書簡 #読書 #これから読む #対談集 #武満徹 #横溝亮一 #村上陽一郎 #舟山隆 #生誕90年 ベートーヴェンの往復書簡は有名だが目次読む限りではロマン派篇も面白そう。

作家・石原愼太郎を正面から見据えた2冊

作家・石原愼太郎を丁寧に取り上げた書籍2冊。右は原書房刊の単行本のさわりに著者2人と石原氏の鼎談を加えたもの。御2人いわく意外に石原氏は聞き上手。確かにユリイカの対談でも多くは相手が話している。#石原慎太郎 #石原愼太郎 #栗原裕一郎 #豊崎由美 #…

『殉死』を手に昭和天皇に質問した中曾根康弘氏

乃木希典の下意識を熱心な冷淡さで描いた佳品。中曾根康弘氏は運輸大臣時代、昭和天皇に本書終盤のある場面が実際に起きた出来事か直接質した。#読書 #司馬遼太郎 #司馬史観 #日露戦争 #乃木希典 #昭和天皇 #中曾根康弘 #中曽根康弘 #勇気ある質問 昭和天皇…

2215試合の重み【鉄人・衣笠祥雄さん】

鉄人。#衣笠祥雄 #広島カープ #永久欠番 #背番号3 #鉄人 #殿堂入り #国民栄誉賞 #正力松太郎賞 #赤ヘル軍団 #日本プロ野球 #プロ野球 #セリーグ #広島アスリートマガジン #2018年 #6月号 #山本浩二 #古葉監督 #古葉竹識 いま改めて思う。日本プロ野球におい…

中曾根康弘vs石原愼太郎【風見鶏と太陽族の原体験】

中曾根康弘氏は対談好きでもあった。相手はキッシンジャーから長嶋茂雄(かつて中曾根氏は長嶋氏所有の家を借りていた)まで幅広い。特に面白く、ボリュームのあったのが石原愼太郎氏との対談。『永遠なれ日本』(2001年)では冒頭、お互いの少年、青年時代…

中曾根康弘・元首相100歳の誕生日【1918年(大正7年)生まれ】

5月27日に100歳を迎えた中曾根康弘・元首相。チャーチルの影響か、日本の政治家としては珍しく歴史に記録する、されることに対する執着が強いひと。自ら内閣史をまとめ、回想録や証言録もたくさん刊行。2冊はほんの一部。『政治と人生』(1991年)は半生をコ…

My Favorite Things:中曾根康弘『天地有情』

「自己主張と自己弁護の香りがかなり強烈」(中曾根氏本人による後記より)ながら伊藤隆、佐藤誠三郎の両先生の存在が利き、保守から見た戦後政治が人間の動きの見える形で起伏豊かに語られる。首相時代の日記の参照を許されたのも大きい。末尾の21世紀の日…

My Favorite Things:岩城宏之『楽譜の風景』(岩波新書)

楽譜から見えてくるクラシック音楽の面白さ、指揮の核心、音楽家の人間的断面を洒落た筆致で綴る。1982年~1983年にかけて書かれたもの。岩城さんは病気する前で世界のあちこちでブイブイいわせていた。従って海外ネタが多く挟まれ、有名なメルボルンにおけ…

優勝とチーム内ライヴァルの重要性【田淵幸一氏が抱いた羨望】

4月27日、TBSラジオは同月23日に逝去した衣笠祥雄さんを追悼する番組を放送した。 www.tbsradio.jp この中で田淵幸一氏の次のような発言が強い印象を残した。 (コメント出演した山本浩二氏の発言を聞いて)僕はチーム内に同格のライヴァルがいなかった。タ…

My Favorite Things:『《昭和80年》戦後の読み方』(文春新書、2005年)

単に日本の戦後のみならず、近代からの日本や日本人の特徴が世界の思潮にどう向き合ってきたか、アメリカの影響圏のあり方、そして憲法改正と日本人のこれからまで論じる。各々の発言を長めに連ねた編集が好ましい。西部氏の発言の端々には後の彼の運命が透…

掛布雅之氏と江川卓氏が10年ぶりにコンビでテレビ解説

10日、G+/BS日テレ/日本テレビ系で10年ぶりに2人が同じブースで解説した。掛布氏が江川氏のカーブをスタンドに叩き込んだ初対決から約40年。両者ユニフォーム着ての対決を見たいもの。#読書 #角川新書 #掛布雅之 #江川卓 #プロ野球中継 #日本テレビ系 #伝統…

要望に応えスタイルの違う文章を書く難しさ

ブログの連続日数が158日で途切れた。最近は仕事の忙しさにかまけてインスタグラムに上げたものにコメントを付けるだけが多く、いつ一端ひと区切りつけようかと考えていたが、きっかけは8日に訪れた。 趣味と実益を兼ねてCDレビュー、演奏会などのPR文、アー…

ようやくひもとける『金鍾泌証言録』

ようやっと神奈川県立図書館がリクエストに応じてくれた。韓国政界きってのNo.2として重きを成した人物の回想にじっくり耳を傾けたい。#読書 #これから読む #図書館 #リクエスト #金鍾泌 #証言録 #回想録 #韓国 #韓国政治 #日韓関係 #ナンバーツー #JP #中曽…

My Favorite Things Special:こどもの日編【10代となった方に読んで欲しい本5冊】

近所の図書館でやっていた表題の掲示のひそみにならって。 サー・アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』(偕成社文庫) 超人的な能力を持つ探偵、平凡だが情に厚いパートナーの存在、ちょっとした発端から顔を出す恐るべき犯罪などキャラク…

衣笠祥雄の記録を繋いだ阿南準郎監督【三原脩からの影響】

[https://www.instagram.com/p/BiW24bvhMGW/:title=「67年秋、近鉄へのトレードを通告された広島の阿南準郎は、引退を決意した。30歳になり、そろそろ将来の生活設計を考えねばならなかった。《パのお荷物》と軽べつされているボロ球団へ移籍しても、明るい…

憲法第9条制定の背景を秘し創作した「意義」を語り続けた幣原元首相

幣原喜重郎元首相が衆議院議長時代の1951年に日本国憲法第9条制定の意義を綴ったとされる原稿が宮城県で見つかったという。 mainichi.jp 内容は『外交五十年』に記されたものとほぼ同様で軍備全廃の意義を謳ったもの。しかし幣原氏が憲法第9条を組み込んだ理…

My Favorite Things:岩見隆夫『陛下の御質問 昭和天皇と戦後政治』

昭和天皇が内奏や閣僚、官僚などの情勢説明の折に発した質問、漏らした言葉から浮かび上がるもうひとつの戦後政治。園遊会におけるユーモラスさとは違う、特有の時局観、人物観を抱き、はらわたの巻き方の複雑な昭和天皇の一面が覗く。取材に対して饒舌に応…

サヴァリッシュとブロムシュテットの叙勲【旭日中綬章は低い!?】

ひとから本を頂くことがある。ありがたい時、そうでない時、様々だが昔、親戚から貰ったこちらは典型的前者。川口幹夫氏は大河ドラマ、紅白歌合戦を確立したNHK中興の祖。一時期NHK交響楽団理事長に飛ばされたがその後のNHKで前代未聞の不祥事が発生して会長…

見逃せない日本の対北朝鮮経済制裁の水漏れ【外交の根本にあるまやかし】

古川勝久氏は国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会の専門家パネルのメンバーとして北朝鮮を巡る新規の流れの探索に取り組んだひと。そこから見えてきたものを『北朝鮮 核の資金源《国連捜査》秘録』(新潮社)にまとめた。 ときに日本は安倍首相が先頭に立ち…

My Favorite Things:曽野綾子『立ち止まる才能』【作家が作品を生む意識】

産経新聞の辛口コラムとは全く違う創作に対して誠実な女流文士の肖像。作家になるまでの人格を形作った複雑な家庭、創作に至る道程や意識、文章作法などをシンプルに記した文学的自叙伝。#曽野綾子 #曾野綾子 #三浦朱門 #読書 #新潮文庫 #内幕 #自叙伝 #意外…

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10②】

※一部ネタばれあり※前回の続き。 choku-tn.hatenablog.com 第8位:銀星号事件(『シャーロック・ホームズの回想』) ラストシーンは競馬のルール上あり得ない展開だし、銀星号の行動の動物学的矛盾もしばしば突っ込まれる作品。しかしホームズの驚くほど快活な…

My Favorite Things:阿川弘之『食味風々録』【食から浮かぶ文士の情と品位】

2015年再文庫化。健啖家として知られた文士の「食」の回想録。鰻を巡る思い出、海軍時代の戦友から送られてくる品物が呼び覚ます過去の記憶、海外の珍味…食べ物の薫りに乗って人生の襞を感じさせる文章は味わい深い。邱栄漢さんと月餅の話など心和む。再文庫…

My Favorite Things:石原愼太郎『国家なる幻影』【私政治小説の最高峰】

2001年文庫化。1996年の議員辞職までの「第1期政治家人生」を自ら描いた作品。ノンフィクションとはとても受け取れないが、登場人物が全て実名の私政治小説と思えば傑作。非情、浪花節、非合理、裏切り、ブラックユーモアが詰め込まれた内容は密度が濃く、ど…

My Favorite Things:ジョン・フェインスタイン『天国のキャディ』

ゴルフの祭典、マスターズ開幕。本番前のプレイヴェントのパー3コンテストで2018年はトム・ワトソンが優勝した。本書は2006年刊行。ワトソンとキャディのブルース・エドワーズのストーリー。ブルースは難病ALSに侵され、2004年のマスターズ第1ラウンドの朝に…

My Favorite Things:サー・エドワード・ヒース『音楽-人生の喜び』【究極の二刀流】

1980年刊行。元英国首相でロンドン交響楽団の名誉理事長を務め、指揮台にも上がったサー・エドワード・ヒースの音楽に焦点を当てた回想録。EEC加盟が決まった日にダウニング街10番地でひとりバッハを弾くシーンはいま読むと切ない。プレヴィン、バーンスタイ…