アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

My Favorite Things

My Favorite Things:石原慎太郎『私の海の地図』【しっとりした内面の声】

美しい写真と共に綴られる海をテーマとした回想エッセイ。長年外洋帆走協会の会長を務めたひとゆえ勇ましい話もあるが文章の基調は静かな心のつぶやき。日本屈指のブルーウォーター派の魂が宿った1冊。「家庭画報」連載の単行本化。#石原慎太郎 #石原愼太郎 …

My Favorite Things:メニューイン晩年のヴィヴァルディ【自由人の境地】

ヴァイオリニスト、メニューインの事実上最後の録音。精度にとらわれず大らかでリラックスした音楽をやっている。若き日のモルクが参加。#メニューイン #ヴィヴァルディ #ヴァイオリン協奏曲 #オーボエ #チェロ #オルガン #ヴァイオリニスト #指揮者 #ポーラ…

My Favorite Things:インバルの「悲愴」【暗さを覗き込む】

透明な質感からあちこちでジワジワ、ゾクゾクと暗く怖いものを抉る。終楽章の細かい棒捌きはバーンスタインの晩年と双璧だがあちらと違い、割合普通のテンポでやっているのが非凡。ワーグナーの濃い翳を宿す稜線の深い響きも素晴らしい。#インバル #チャイコ…

My Favorite Things:園田高弘のレーガーほか【明瞭にして深い翳】

発売当時レーガーが入っているのに驚いた。ライナーノーツには園田さん自らの筆で作曲家との出会いが綴られる。#園田高弘 #レーガー #シューマン #リスト #ピアノ #クラシック音楽 #放送音源 #意外な名演 #掘り出し物 色合いの変化で聴かせるシューマンの小…

My Favorite Things:メニューイン&グラッペリ【巨匠同士の小粋なお喋り】

いわゆるクロスオーバーのはしり。グラッペリがメニューインに書いた曲が意外と普通でガクッとくる以外は心和む時間。#メニューイン #グラッペリ #夢の共演 #クロスオーバー #クラシック音楽 #ジャズ #ヴァイオリン #emi グラッペリのキュッと響く音色、メニ…

My Favorite Things:園田高弘のフランス音楽【流麗、耽美、お洒落】

ひとは見かけによらぬもの。フランクの曇りのないタッチにたちこめるロマンの香りの濃さ。ドビュッシー、ラヴェルはディテールを明瞭に捌きつつ、うっとりするほど流麗な仕上げ。サン・サーンス、プーランクの洒落っ気への対応力も鮮やか。1960年代、ベルリ…

My Favorite Things【ズッカーマン〔vn.〕、クーベリック指揮、バイエルン放送響のチャイコフスキー】

ズッカーマンのヴァイオリン、エネルギーの強さ、音の張りと艶、慣習的な改変を排した解像度の高いディテール処理。ライヴでこの水準は驚異。クーベリックの録音については「好演率は高い反面、何かひと押し足りない」と思うことが多いが、本アルバムの指揮…

My Favorite Things:中曾根康弘『天地有情』

「自己主張と自己弁護の香りがかなり強烈」(中曾根氏本人による後記より)ながら伊藤隆、佐藤誠三郎の両先生の存在が利き、保守から見た戦後政治が人間の動きの見える形で起伏豊かに語られる。首相時代の日記の参照を許されたのも大きい。末尾の21世紀の日…

My Favorite Things:ストリングス名曲集【オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団】

100万ドルサウンドの粋を集めたアルバム。光沢と上品なうねり。弦楽器の量感はもとより、オーボエなど木管楽器のビロード系の音色が耳に残る。今後未来永劫絶対出ない、聴けない性質のサウンド。#クラシック音楽 #オーマンディ #フィラデルフィア管弦楽団 #…

My Favorite Things:岩城宏之『楽譜の風景』(岩波新書)

楽譜から見えてくるクラシック音楽の面白さ、指揮の核心、音楽家の人間的断面を洒落た筆致で綴る。1982年~1983年にかけて書かれたもの。岩城さんは病気する前で世界のあちこちでブイブイいわせていた。従って海外ネタが多く挟まれ、有名なメルボルンにおけ…

My Favorite Things:ズッカーマンの振る英国音楽

誰ひとりズッカーマンに指揮をして欲しいひとはいるまい。しかしこの弦楽主体の英国音楽アルバムはRPOの好演に助けられ、優しいタッチのサウンドで聴き手をしっとりさせる。揚げひばりのほのかな光沢の澄んだヴァイオリン、「In Moonlight」のベルベット調の…

My Favorite Things【園田高弘の弾くドビュッシーの練習曲】

こういう顔したピアニストが透明にして艶の漂う響きを奏でる。だから演奏、音楽は面白い。#クラシック音楽 #園田高弘 #ドビュッシー #ラヴェル #サンサーンス #練習曲集 #第1巻 #ピアノ協奏曲 #みかけによらず #ピアノソロ #放送録音 課せられた要素を綿密に…

My Favorite Things:『ドルチェで行きましょう』【名指揮者とボストン響の素顔】

ボストン交響楽団で第1ヴァイオリン奏者などを約30年務めた著者の音楽的回想録。大指揮者のエピソードが毒を秘めたユーモアにくるまれて次々登場。巷にあふれる「クラシックちょっといい話」みたいな本の元ネタのひとつ。たちの悪い本だと出典なしで流用され…

My Favorite Things:『《昭和80年》戦後の読み方』(文春新書、2005年)

単に日本の戦後のみならず、近代からの日本や日本人の特徴が世界の思潮にどう向き合ってきたか、アメリカの影響圏のあり方、そして憲法改正と日本人のこれからまで論じる。各々の発言を長めに連ねた編集が好ましい。西部氏の発言の端々には後の彼の運命が透…

My Favorite Things:ルドヴィート・カンタのリベルタンゴ

ルドヴィート・カンタの弾くリベルタンゴが絶品。メロディの歌わせ方の上品な艶。メインのマイケル・ダウス〔vn.と指揮〕、OEKの「2つの四季」も決して悪くないけどついつい終わりから聴いちゃうCD。#oek #カンタ #ルドヴィートカンタ #ダウス #マイケルダウ…

My Favorite Things Special:こどもの日編【10代となった方に読んで欲しい本5冊】

近所の図書館でやっていた表題の掲示のひそみにならって。 サー・アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』(偕成社文庫) 超人的な能力を持つ探偵、平凡だが情に厚いパートナーの存在、ちょっとした発端から顔を出す恐るべき犯罪などキャラク…

My Favorite Things:ルトヴィート・カンタのチェロ小品集【気高い輝きを放つ宝石箱】

ルドヴィート・カンタのチェロ小品集。しなやかな気品漂う音楽。木の香りのする色付けが1曲1曲に施されている。ドヴォルザーク、グラズノフの切ない余韻は何度聴いてもしっとりする。カザルス以外の「鳥の歌」がこれほど説得力を放った例は稀有。上田晴子の…

My Favorite Things Special【ドヴォルザーク:チェロ協奏曲】

俗に言う「ドボコン」。第3楽章の潮が引いてからチェロが連綿と燻し銀の哀愁に満ちたメロディを弾くところがお気に入り。 ロストロポーヴィチ〔チェロ〕、小澤征爾指揮、NHK交響楽団 Dvořák: Cello Concerto + 1 / Rostropovich Ozawa NHK Symphony Orchestr…

My Favorite Things:曽野綾子『立ち止まる才能』【作家が作品を生む意識】

産経新聞の辛口コラムとは全く違う創作に対して誠実な女流文士の肖像。作家になるまでの人格を形作った複雑な家庭、創作に至る道程や意識、文章作法などをシンプルに記した文学的自叙伝。#曽野綾子 #曾野綾子 #三浦朱門 #読書 #新潮文庫 #内幕 #自叙伝 #意外…

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10②】

※一文ネタばれあり※前回の続き。 choku-tn.hatenablog.com 第8位:銀星号事件(『シャーロック・ホームズの回想』) ラストシーンは競馬のルール上あり得ない展開だし、銀星号の行動の動物学的矛盾もしばしば突っ込まれている作品。しかしホームズの驚くほど快…

My Favorite Things:阿川弘之『食味風々録』【食から浮かぶ文士の情と品位】

2015年再文庫化。健啖家として知られた文士の「食」の回想録。鰻を巡る思い出、海軍時代の戦友から送られてくる品物が呼び覚ます過去の記憶、海外の珍味…食べ物の薫りに乗って人生の襞を感じさせる文章は味わい深い。邱栄漢さんと月餅の話など心和む。再文庫…

My Favorite Things:石原愼太郎『国家なる幻影』【私政治小説の最高峰】

2001年文庫化。1996年の議員辞職までの「第1期政治家人生」を自ら描いた作品。ノンフィクションとはとても受け取れないが、登場人物が全て実名の私政治小説と思えば傑作。非情、浪花節、非合理、裏切り、ブラックユーモアが詰め込まれた内容は密度が濃く、ど…

My Favorite Things:ジョン・フェインスタイン『天国のキャディ』

ゴルフの祭典、マスターズ開幕。本番前のプレイヴェントのパー3コンテストで2018年はトム・ワトソンが優勝した。本書は2006年刊行。ワトソンとキャディのブルース・エドワーズのストーリー。ブルースは難病ALSに侵され、2004年のマスターズ第1ラウンドの朝に…

My Favorite Things:サー・エドワード・ヒース『音楽-人生の喜び』【究極の二刀流】

1980年刊行。元英国首相でロンドン交響楽団の名誉理事長を務め、指揮台にも上がったサー・エドワード・ヒースの音楽に焦点を当てた回想録。EEC加盟が決まった日にダウニング街10番地でひとりバッハを弾くシーンはいま読むと切ない。プレヴィン、バーンスタイ…

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10①】

※一部ネタばれあり※ 前回の続き。ベスト10をコメント付きで。 choku-tn.hatenablog.com 第10位:青いガーネット(『シャーロック・ホームズの冒険』) 最初の帽子を巡る推理が楽しい。「名探偵」の能力を示す手段としてひとの経歴などを当てて見せるケースは多…

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10〔序章〕】

※一部ネタばれあり※ 読書遍歴の原点がサー・アーサー・コナン・ドイルが創作したシャーロック・ホームズ物語だという話を以前記した。 choku-tn.hatenablog.com ホームズ物語を生んだ作家ドイルの筆捌きの強みは①キャラクター創出能力、②アイディアの独創性、③素…

My Favorite Things【思い出の名車をミニカーで:アウディV8〔1988〕】

ミニチャンプス1/43アウディV8(1988):現在のアウディの原点。正攻法のデザインで30年経っても旧さを感じさせないのは大したもの。亡き父の愛車だった。#アウディ #アウディv8 #ミニチャンプス #1/43 #温故知新 サテンシュヴァルツメタリックの名を持つブラ…

My Favorite Things:服部龍二『中曽根康弘』『田中角栄』

ともに1918年生まれ、当選も同期のふたり。服部龍二先生は一次資料の読み込みのほか、中曾根氏本人を含む政治家、官僚OBの聞き取りを行ってきた成果も取り込み、精緻にしてひとの息づかいの聞こえるテンポのいい評伝にまとめた。田中角栄氏についてキャラク…

My Favorite Things【押尾愛子『朝比奈隆のオペラの時代』】

オペラをやることが「おおごと」だった時代に創造力と情熱を傾けた関西の芸術家たち。そのひとりとして「ブルックナー指揮者」になる前の朝比奈さんが獅子奮迅の活躍をみせる。「大向こう」を意識した芸のあり方は生涯変わらなかった。対象を等身大で描いた…

My Favorite Things:カラヤン指揮、BPhのヴィヴァルディ:調和の霊感

ザクザク、ブンブンと鳴るBPhが面白い。低音弦のうねりにドキドキ。2003年初出のヴィヴァルディ「調和の霊感」(1972年録音;4曲)はこの2枚組とバカでかいboxのみに収録。第10番はシュヴァルベ、ブランディス、シュピーラー、ヴェストヴァルが揃い踏み。#カ…