アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

デュオ・リサイタル【巨匠が愛したピアノたち】

2017年6月19日 

紀尾井ホール

江口玲(ピアノ)
阪田知樹(ピアノ)

〔使用ピアノ〕
ニューヨーク・スタインウェイ1912年製「CD75」 :長年貸出ピアノとして使用され、1970年代以降ホロヴィッツ専用に。結果的に痛恨事(「ひび割れた骨董品」〔吉田秀和〕)となった1983年の初来日でも弾いた。(写真左奥)
ニューヨーク・スタインウェイ1887年製「ローズウッド」 :キャピタル東急ホテルに所蔵されていた。1986年に再来日したホロヴィッツが試弾して絶賛。(写真右手前)

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〜曲目〜
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲Op.56b〔江口玲(CD75)、阪田知樹(ローズウッド)
ラフマニノフ/阪田知樹:チェロ・ソナタのアンダンテによるパラフレーズ阪田知樹(ローズウッド)
パデレフスキ:「ミセラネア」Op.16より第2曲「メロディ」〔江口玲(ローズウッド)
リスト:超絶技巧練習曲S.139,R.2bより第4曲「マゼッパ」〔阪田知樹(CD75)
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番S.244-2〔江口玲(CD75)
-休憩-
ブラームス:2台のピアノのためのソナタOp.34b〔阪田知樹(CD75)、江口玲(ローズウッド)
☆アンコール☆
ショパン:幻想即興曲Op.66(アレクセイ・スルタノフ版)〔阪田知樹(CD75)
ドビュッシー:版画より第2曲「グラナダの夕べ」〔江口玲(ローズウッド)
ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第2番Op.17より第3曲「ロマンス」〔阪田知樹(CD75)、江口玲(ローズウッド)f:id:choku_tn:20170629115621j:plain

ヴラディミール・ホロヴィッツゆかりのニューヨーク・スタインウェイヒストリカル楽器2台を名手2人が弾き分ける贅沢なリサイタル。
冒頭と締め括りにブラームスの2台ピアノのための名曲、しかもともに異なる編成の版が一層知られている作品が置かれた。
ハイドンの主題による変奏曲はオーケストラ版の場合、オーケストラのための協奏曲調に傾きがち。近年の演奏だとなおさら。その点今回のように2台ピアノ版で名ソリスト2人がお互いの音楽を主張しながら弾き込むと各変奏の色合いの違い、主題の入り組み方、終曲の巧妙さが火花を散らしながら伝わってくる。
2台のピアノのためのソナタもとりわけフィナーレの音楽的面白さがピアノ五重奏曲で聴く時より鮮烈に感じた。音量、音圧面に強みがありヒストリカル楽器の扱いに慣れている江口がダイナミックに攻めていく一方、阪田は解像度とバランス重視のサウンドで楽器を流麗に奏でる。ソリスト同士ならではの丁々発止のアンサンブルの魅力が全開。


ソロでも2人の至芸が聴けた。作曲家としての顔を持つ阪田は自ら編んだラフマニノフのチェロ・ソナタOp.19の第3楽章によるパラフレーズを初披露。美しい旋律美に感じ入りつつ、ヒストリカル楽器で聴くためか響きの温度、色合いにおいてラフマニノフの20世紀の作曲家、新しい作曲家という面も呼び覚まされていた。アンコールのショパンではスルタノフによる変更(半音階を重音で降りてくる)が採用され、光陰の幅の大きい演奏が聴けた。

http://tower.jp/item/3848614/スペイン狂詩曲~阪田知樹デビュー!

http://tower.jp/item/1819554/スルタノフ・伝説の日本ライヴ-!-:ショパン:ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」-スクリャービン:ピアノ・ソナタ第5番-ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番-他:アレクセイ・スルタノフ(p)


江口はCD75による幾多の演奏経験を生かし、リストのハンガリー狂詩曲で大胆に起伏のついた強靭、壮大、しかも動きの俊敏な響き。CD75の高音の輝きは演奏スタイルが違うのにまさにホロヴィッツで楽器の由緒を実感できた。

http://tower.jp/item/4299883/ザ-ベスト-オブ-ライヴ-6-19


優れた企画と優れたピアニストの演奏の勝利。9割以上埋まった聴衆も沸いていた。
途中で時計のアラームが複数回鳴ったこと、隣席の男女特に男のウザいおしゃべりが極めて遺憾。