観客動員が問題にされない不可解さ
日本プロ野球は再編騒動を機に毎試合、来場者数の実数公表が行われている。
近年各球団はスタジアムの改修や女性をターゲットにしたグッズの開発など観衆を増やすために多彩な試みを始め、いわゆるカープ女子などの成果に繋げている。
どんなにチームが強くてもお客様の入りが悪ければ、球団の営業努力不足、ファンサービス不足が指摘される。
一方クラシック音楽のオーケストラのコンサートでは来客数の公表はない。最近はFacebookで発信するオーケストラが増えたが大体演奏会後は「たくさんのお客様に御来場頂き」とあるだけで実際どれだけ埋まったのかは分からずじまい。
またいわゆる演奏会評でも聴衆の数はあまり問題にされない。
これはおかしな話。
聴くひとが集ってこそ演奏会は成功
6月14日に東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に出掛けたが前半に気鋭のピアニストがソリストとして出演したにもかかわらず、客席は7割程度の入り。しかも後半になると聴衆は若干減ってしまった。
ピアニストは素晴らしい演奏を披露したがたくさんのひとに聴いてもらえなければ何にもならない。
どんなにいい演奏だとしても聴衆の数が少ない、つまり聴いてもらえていない、お金になっていないという状況はプロのライヴイヴェントとして失敗。
万単位の観衆が集うプロ野球と違い、クラシック音楽のオーケストラのコンサートで集まる聴衆は特別な野外コンサートを除けば、2,000名程度がマックスだろう。数える手間もさほどかからないのだから日本オーケストラ連盟会員のオーケストラは演奏会毎に集まった聴衆の実数を公表してもらいたい。
動員力のあるオーケストラ、ないオーケストラ、動員力のある指揮者、ない指揮者がはっきりすることでオーケストラ同士がお互い切磋琢磨し、聴衆を集めようとアイデアを出す。聴衆の存在を一層強く意識することは間違いなく演奏にもいい影響がある。
仮に独創的な企画や珍しい演目に挑んだオーケストラが聴衆を集めていることが分かれば、有名作品偏重の曲目編成を見直そうと考える機運が生まれるだろう。
聴衆が集まってこそ演奏会は成功といえるんだという観点から、実数公表をぜひ始めて欲しい。
演奏会評のあり方も変わる必要がある。ガラガラの場合、演奏会評で内容以前にオーケストラの集客力の乏しさや事務局の営業努力不足を厳しく指摘するのが当然。