アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

My Favorite Things:ロリン・マゼール指揮のシベリウス交響曲全集

昔も今もドイツ、オーストリアのオーケストラはシベリウスが嫌い。田舎者の書いたよく分からない音楽と受け止めるのか、ベリルンドがベルリンフィルでやればメンバーが指揮者には敬意を払いつつ、「変なスコアだ」などと記者にボヤいたし、晩年のバーンスタインウィーンフィルと取り組んだ映像からは指揮者とオーケストラや聴衆の間に漂う「温度差」が覗える。

ロリン・マゼール(1930-2014)は1960年代にそのウィーンフィルシベリウス交響曲全集をセッション録音した。フィンランドの次にシベリウスへの理解が深い英国の名門デッカレコードが、当時30歳代のマゼールに同社初のステレオ収録によるシベリウス交響曲全集録音の指揮を委ねたことは期待の大きさの表れだろう。

マゼールは自身の読みで堂々とオーケストラに対峙し、エッジの鋭い凝集力のあるサウンドを繰り広げる。細部の出し入れの俊敏さも破格で聴き手を刺す要素がたくさん。とりわけ1番、4番、5番、7番はトップクラスの内容。ウィーンフィルの透明な光沢に暗部の差す音色が感銘を深める。

マゼールの非凡さは、色々繰り出しても音楽の流れが滑らかで不敵な落着きすらチラつかせるところ。近年比較的低年齢で華々しい活躍を伝えられる指揮者が増えているが、若きマゼールのように名門オーケストラの前でこれだけいわば暴れてなおかつクールさを身にまとっちゃう人物は見当たらない。

交響曲と合わせて「カレリア」組曲交響詩「タピオラ」も録音されたが、なぜかボックスCDでは省かれた。2015年にようやくきちんと揃った形のボックスがCD4枚とブルーレイオーディオの再リマスタリング盤で登場。最近注目のブルーレイオーディオディスクはCDより響きが放つエネルギー、各パートの立体感たっぷりの絡みをダイレクトに伝える音質。

その後1990年代にマゼールピッツバーグ交響楽団との共演で2回目のシベリウス交響曲全集・主要管弦楽曲集のセッション録音を行った。ウィーンフィルとの録音当時のほぼ倍の年齢に達し、響きの質感こそ若干丸まったが解像度の高さと伸びやかな進行を両立させた麗々しい音楽は流石の仕上がり。日常的に聴いても疲れないところがいい。ラクリンがソロを弾くヴァイオリン協奏曲のねっとりしたバックに「円熟のマゼール節」が刻まれている。

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