アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

「ポスト安倍」の日本の風景を描けるか【第3次安倍・第3次改造内閣発足】

名実ともに「さあ、働こう内閣」

河野太郎外務大臣林芳正文部科学大臣茂木敏充経済再生担当大臣など発信に長けた実力者を多数迎え、防衛大臣は経験者の小野寺五典氏に委ねた。他の閣僚もおおむね所管分野の政策作りの経験があったり、党や国会で汗をかいてきた人材を揃え、現状ではベストメンバー。あとは見出しに使った福田赳夫元首相の言葉通り働くのみ。「内閣は仕事であり、政治は結果である」中曾根康弘氏)。

特に期待したいのは河野太郎外務大臣。法務副大臣時代から将来の外相就任を見据えて海外の政治家たちとのパイプ作りに励んできたし、一時期細った日米の議員同士の交流を再び活発にするため熱心に取り組んでいる。つい先日もアメリカの上院議員とのフォーラムに臨んだ。

そうした下地に加え、河野氏は統治機構・行政手続、経済、農政、文教、防災など内政全般に明るく、官僚から情報を出させ、数々の政策提言に繋げてきた。今後の経済外交や貿易交渉を考えた場合、内政と外交の一体性は重要で河野氏の識見は強みになる。

前任の岸田文雄氏は約5年間在任、広島でのG8外相サミット成功などの実績をあげ、安倍内閣の外政面の充実をサポートしてきた。河野氏には岸田氏の築いた地盤の上に立ちつつ、かねて批判してきたODAの非効率性、各国駐在大使の怠慢など正すところは正し、日米を基軸にしながら厚みのある外交を展開するために力を発揮してもらいたい。とりあえず「河野・小野寺」で次の日米2+2に臨めるのは良かった。

「クーデター」しか選択肢のなくなった石破氏の行方

今回の内閣改造、先立って行われた党役員人事で安倍晋三首相(自由民主党総裁)の胸の内がはっきりした。それは「来年9月の自由民主党総裁選での3選を目指しつつ、もし政治的体力が限界なら岸田氏に禅譲。首相は前述の通り再登板以来、ずっと外務大臣の岸田氏を本人の要望通り党三役に起用、閣僚人事では林氏、小野寺氏を始め岸田派の議員を重用した。そして総裁選出馬を公言する野田聖子氏を入閣させたことで、来年の総裁選でやはり総裁への意欲を隠さない石破茂氏と野田氏がいわゆる「2位・3位連合」することを防ぎ、安倍首相は自身の3選出馬でも岸田禅譲でもいける状況を作った。「ポスト安倍」のダークホースとしては河野太郎氏、塩崎恭久氏、西村康稔氏。

一方石破茂氏の総理総裁への道は厳しくなった。自派所属議員が「1本釣り」され、現状「ポスト安倍は岸田」の既成事実化が急速に進み、来年9月の総裁選挙に立候補しても勝算は殆どゼロ。石破総理総裁の可能性が生まれるのは大事件の発生で来年9月より前に安倍首相が退陣を余儀なくされ、いま安倍首相の周囲にいる人間は出馬しずらい事態が訪れた場合のみ。もはや石破氏は安倍首相や周辺のスキャンダル暴きといった常道を外れた行動まで検討しなきゃいけないところまで追い込まれた。

ウルトラC(古い!)としては石破氏が自由民主党から離れ、結構仲のいい小池百合子氏の「都民ファースト」と連携、非自民の政界再編を起こして「細川式」の連立政権の首班を目指す方法もありうる。折しも細野豪志氏が民進党離党を検討との報道が流れている。田中角榮氏の元秘書・朝賀昭氏がブレーンの細野氏、若き日に角榮氏の薫陶を受けた石破氏、やはり「現住所田中派」だった細川護熙氏が作った日本新党から政界入りした小池氏。3人の行き先に注目。

次世代を見据えた構造改革に取り組む重要性

安倍首相は「2期6年」のルールの下で自由民主党総裁に選ばれたのだから、本来来年9月で退くのが筋。民間企業や各種団体の場合、役職の任期を変えた場合、そのルールは次のひとから適用されるのが普通。つまり自由民主党なら「3期9年」は安倍総裁の次の総裁から適用するということ。しかし自由民主党安倍総裁の3選出馬含みでルールを変更した。事実上権力者がゴールポストを動かす行為で明らかにゴリ押しだった。

この「安倍3選ありきの3期9年への変更」から政権運営が変調をきたした。閣僚と党幹部・党所属議員の不規則発言や問題行動の頻発、政策実現の陰で「加計学園問題」に象徴される不明朗な事態の発覚など政府・与党におごりが目立ち始め、野党のふがいなさもあって国民が政治全体に失望感を抱く状況になっている。来年9月にどうなるかは分からないが安倍総理総裁は一度初心に帰り、来年9月に退く覚悟で1日1日気を引き締めて政権運営にあたることが重要。

一番求められるのは構造改革。AIの進化、世界的な内燃機関への風当たり、人口の減少などを考えると産業構造、雇用のあり方、社会保障、教育の抜本改革が必須。安倍内閣は約5年続いていながら、内政は対処療法による成果ばかりで殆ど構造改革に手をつけていない。消費増税を先延ばしにして多少政治的エネルギーの余裕ができたはずなのに獣医学部の新設が岩盤規制の突破だなんて体たらくではダメ。

もし来年9月に総裁3選がなってその任期を全うしたとしても安倍氏が総理総裁なのはあと4年。今から構造改革に取り掛かっても成果の上がるところまではいかないだろう。しかしだからこそ次の世代のためにすぐメニューを作り、スタートさせておかないと東京五輪後に日本は朽ちてしまう

歴史を見ると佐藤榮作氏の総裁4選、中曾根康弘氏の任期1年延長、鈴木俊一氏の都知事4選は何の成果も生まず、かえって当人たちの評価や日本の将来に負の要素をもたらした。安倍首相の務めは「権力の魔性」を自覚し、過去から謙虚に学び、政府与党の力を束ねて将来に光る日本の骨格を形作ること。