アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

My Favorite Things:安川加壽子のダンディ【鋭い閃光と反射神経の良さ】

「20世紀の名演奏」の記憶

クラシック音楽にハマって間もない10代後半、NHK-FMの「20世紀の名演奏」をよく聴いた。日曜の朝、故・黒田恭一さんの「おはようございます。黒田恭一です。20世紀の名演奏です」に始まり、「今日もお気持ち爽やかに、毎日をお過ごし下さいますように。黒田恭一でした。お元気で」で締め括られる1時間50分。

この番組で「ショルティ以前」のシカゴ響、ジーナ・バッカウアー、ボスコフスキーアンサンブルなどに出会った。なかでも楽しみにしていたのは毎月第4週の「NHKのライブラリーから」。NHKアーカイブ音源を流す時間でロヴロ・フォン・マタチッチ、ヨーゼフ・カイルベルト、ジャン・マルティノン・・・幾多の名指揮者とNHK交響楽団の共演やイタリア歌劇団の記録に魅せられた。そして忘れられないのが安川加壽子さん。

ドキドキした「フランス山人の歌による交響曲

当時、安川加壽子さんの名前は知っていたが演奏を聴くのは初めて。リズムの弾む、きっぱりした音楽運びを聴いて敬服した。とりわけ素晴らしかったのはダンディの「フランス山人の歌による交響曲。実のところ作品自体初体験で「交響曲?なんだろ」と思いつつ耳をそばだてた。安川さんのピアノにびっくり。1音1音から透明な火花が放たれ、虹色の風が駆け抜ける。楽想の浮き沈みに対する反応の敏感さが破格。若き岩城宏之さんのエネルギー全開の指揮もうまく絡んでゾクゾクしっ放し。

この音源は後年ビクターでCD化、暫く経って入手困難になったが2017年3月にNHK交響楽団シリーズでラヴェルの左手、モーツァルトの協奏曲と組み合わされてリリースされた。改めて聴くと1943年に作品を日本初演した安川さんの音色の多彩さ、鋭敏な反射神経にやはり胸躍る。

モーツァルト:-ピアノ協奏曲第23番;-ダンディ:-フランスの山人の歌による交響曲,-他 ドビュッシー:ピアノ独奏曲集成