アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

My Favorite Things【園田高弘の弾くラヴェル】

作曲者ゆかりのひとから体得したフランス音楽

以前のブログで池辺晋一郎氏がFMで話した園田高弘さんのラヴェルの協奏曲にまつわる挿話を紹介した。

choku-tn.hatenablog.com

「ドイツ3B」のイメイジの園田さんだがパリでラヴェルと親交のあったマルグリット・ロンのサロンに通って学んだ経歴の持ち主。フランス音楽にも一家言あった。バーデンバーデン在住だった1960年代にはラヴェルドビュッシーなどのフランス音楽を放送収録。ラヴェルの協奏曲もエルンスト・ブール指揮、南西ドイツ放送交響楽団と録音している。これらの音源は園田さん晩年の2001年に「若き日の軌跡」としてCD化された。

園田高弘 若き日の軌跡2

www.hmv.co.jp

収録当時の園田さんはライナーノーツの回想によれば「新古典主義」を相当意識していたという。晩年の池辺氏との挿話にも園田さんが音楽解釈において余情を削ぐ姿勢だったことがうかがえる。このラヴェルの協奏曲の収録は「新古典主義」の代表的音楽家と言われたブールの指揮を得て、当時の自身の音楽的課題を実践する機会になったと記している。実際聴くと確かに分離のくっきりした打鍵で明瞭さ重視の音楽作り。指揮も鋭くリズムを刻み、細部まで引き締める。一方ピアノのタッチの質感は意外とまろやか、うっとりする色香すら漂う。併録の独奏曲、サン・サーンスのピアノ協奏曲第4番では園田さんの振る舞いが一層自由。ドビュッシーの簡潔な音構造の行間に詩情を練り込むあたりに園田さんの肉声が聞こえる。

やはり園田さんは生粋のロマンチスト。であるがゆえに戦後の変化を肌で受け止め、「新古典主義」の鎧をまとったのだろう。