2017年12月10日
ヴァイオリンの帝王、ヤッシャ・ハイフェッツ(1901-1987)の没後30年の命日。晩年の15年間引退生活だったので「昔の音楽家」と思われがちだが、実際はほぼ20世紀全体を生き抜いた。無敵のテクニック、音色のパレットの豊かさ、品の良いポルタメント、スピード感と雄大なスケールが併存する構成美、そして手がけた大量の編曲(ペンネームでポピュラーソングまで書いた)。「演奏の20世紀」の頂点に立つヴァイオリニストだった。ま
歪んだ日本のハイフェッツ受容
ハイフェッツは1923年に初めて公演ツアーのため来日。関東大震災直後の東京では野
全盛期から60年を経てなおハイフェッツの主要録音は日本のカタログにしっかり残っている。しかしひと昔前の日本の文献見るとハイフェッツの演奏について「冷たい」「空虚な技」「精神性に乏
シューベルトに漂う孤独と寂しさ
60歳以降ハイフェッツは室内楽に力を入れ、多くの録音を遺した。その中で個人的に印象深いのは1968年9月に収録されたシューベルトのヴァイオリンとピアノのための幻想曲ハ長調D.934(op.159)。
冒頭から背筋の寒くなる寂寥感がハイフェッツのヴァイオリンを覆っており、比類なき美音なのに胸がズキズキ痛む。音楽全体の設計はシャープなのでなおさら哀切が際立つ。2011年制作のハイフェッツのドキュメンタリー「神のヴァイオリニスト」の終盤は彼の「孤独さ」の描写に時間を割くが、ほじくり返さずともこのシューベルトに彼の心の内が吐露されている。
こういう演奏をするヴァイオリニストを「冷たい」「空虚な技」「精神性に乏
Jascha Heifetz - The Complete Stereo Collection<完全生産限定盤>
Heifetz in Performance - Mozart, Prokofiev, Debussy, Rachmaninov, etc