アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

No.1投手は稲尾和久【「プロ野球総選挙」を嗤う】

先日テレビ放送された「プロ野球総選挙」で歴代No.1投手に大谷翔平が選ばれたという。笑止千万な話。まだキャリアの発展途上にある選手を日本プロ野球80年の歴史を作ってきた偉人たちの上に置くなどあり得ない。投票した連中、番組制作者のいずれもが歴史を軽く考えている証拠。
もし私が歴代No.1投手を選ぶなら躊躇なく稲尾和久(1937-2007)。実働14年(西鉄ライオンズ;1956-1969)で756試合に登板して276勝、しかも負けが137と少なく、通算防御率1.98。コースに決まる直球にシュート、スライダーの出し入れを絡め、コントロール抜群。野村克也張本勲が最も勝負しがいのあった投手として度々挙げている。
また「神様、仏様、稲尾様」と称されてファンからの支持も絶大。日本プロ野球史上、幾多の名投手あれど神様や仏様と並べられたひとは稲尾ただ一人。
2007年の没後には旭日小綬章が贈られ、2012年は西鉄ライオンズの後継球団の埼玉西武ライオンズがいったん制定されながら球団譲渡後失効した永久欠番24番を再制定した。稲尾の記憶が未だに色褪せていない証。
リアルタイムで稲尾の選手、監督時代を知らない私はテレビ中継の解説や「今日感テレビ」などで晩年の稲尾の話す声、姿を視聴した。稲尾は伝説の大投手とは思えないほどいつも優しく穏やかな口調で語り、ことさら自身の偉業をひけらかさなかった。その姿勢に深い尊敬の念を抱いた。真の大投手、大人物だった。
※文中敬称略。