アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

シェリングの議会図書館ライヴ【生誕100年・没後30年】

2018年が生誕100年、没後30年のヘンリク・シェリング(1918-1988)はレコード時代から日本のクラシック音楽ファンの支持を集めてきたヴァイオリニスト。シュミット=イッセルシュテットとのベートーヴェンの協奏曲、ヘブラーとのベートーヴェンモーツァルトソナタクライスラー名曲集、バッハの無伴奏は不動のベストセラー。
強い確信を感じさせる音楽運び、文字通り「鈴を振ったような」美音、細部の詰めの厳しさでバロックから近代まで難なくカヴァー。パガニーニ復興に尽力し、ヴァイオリン協奏曲第3番の蘇演はテレビ放送された。第2の故郷となったメキシコ音楽の紹介にも取り組み「スペイン、中南米リサイタル」という好アルバムを遺した。
ドイツと日本で共演した朝比奈隆さんいわくシェリングは「酒とオーバーワークで早死にした」。晩年のアルコール依存症は深刻だったらしく、上記ヘブラーとの録音以降、録音は急速に減少。またそれ以前から尊大で気難しい面があり、いわゆる腕利きのピアニストとの共演録音は多くない。
その中で異彩を放つのがグラフマンと共演したワシントン国立議会図書館ライヴ。バリバリと食いつくピアノにシェリングのテンションは上昇、ピシッと決まったなかに熱気のはらんだ弾きっぷりで聴き手をのけぞらせる。とりわけクロイツェルの恐ろしさには戦慄。
セッション録音の量と充実度からあまりライヴ録音が注目されないシェリングだが、ダブル記念年にライヴ録音を聴くことで違った顔に出会うのも面白いと思う。
http://tower.jp/item/1683344/Ludwig-van-Beethoven:-Sonatas-at-the-Library-of-Congress
http://tower.jp/item/3170307/スペイン,-中南米リサイタル<タワーレコード限定>