アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

髙橋望ゴルトベルク変奏曲2018@1/20東京文化会館小ホール

2014年以来毎年1月にJ.S.バッハゴルトベルク変奏曲を弾くコンサートを開いているピアニスト髙橋望。2年目の2015年のライヴ録音盤が「レコード芸術」準特選など高い評価を獲得。以降バッハの第一人者として全国各地でレクチャーを開催、多くの好楽家に親しまれてきた。

5年目となる2018年は日本で最もピアノリサイタルに適したホールといえる東京文化会館小ホールを使い、ほぼ満席の聴衆のもとで行われた。

髙橋望の特徴は作品を正面からとらえ、分離の良いタッチで真面目に弾き込んでいきつつ、バリバリと食い込む大胆な仕掛けやフッと聴き手を迷わせる緩い球を交えるところ。彼の持つこの二面性(三面性?)がうまく形になり、作品の持つ磁場ともぴったり重なるのがゴルトベルク変奏曲。今回の演奏では最初のアリアが誠実路線、最後のアリアはため息系、途中の変奏群は硬軟緩急の振幅を大きく取ってズバズバと性格付けしていた。最近は変奏曲においてシンフォニーでも器楽でも全体の調和、横のつながり感重視のアプローチが主流に思うが、髙橋望は毎年やってきた積み重ねを生かし、作品の論理性をきっちり押さえつつ、各変奏の色合いを濃い目にあぶり出した。多種多様な解釈が登場してきたゴルトベルク変奏曲だが、髙橋望が本コンサートで聴かせた表現は奇を衒わずとも一歩先の新鮮さが漂う好演だった。この後、平均律クラヴィーア曲集への取り組みを明らかにしている髙橋望の今後が楽しみ。

※敬称略

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV.988

トロイメライ 髙橋望ピアノ・アルバム