安倍内閣は内政、外交ともに各論(対症療法)を次々と繰り出して一定の成果をあげるのがうまい反面、安定した政権基盤を持ちながら物事の根っこの改革や再構築には消極的なのが特徴。
23日に小野寺防衛大臣が正式表明した防衛大綱の見直しもしかり。
厳しい安全保障環境を考えれば大綱の見直し自体は妥当。その一方で大綱の背景にある日本の「国防の基本方針」は、約60年前の第1次岸内閣時代の1957年5月20日に閣議決定されたものが現在なお有効なものとして残っている。内容は以下の通り。
国防の目的は、直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われたときはこれを排除し、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和をまもることにある。この目的を達成するための基本方針を次のとおり定める。
御覧の通り、前文に掲げられている「目的」は立派だが肝心の「基本方針」は全くなっていない。日本の国防の基本方針なのに「国際連合の活動を支持」、「国際間の協調」(意味不明のフレーズだ)、「世界平和の実現」が最初にきており、領土・領海・領空・国民の生命財産を自らどう守るのかについての方針は皆無。2.と3.は悪くないが4.は今となっては噴飯もの。繰り返すがこれは現在も有効である。
どんなに立派な防衛大綱を作ったとしても国防の基盤である「基本方針」が日米安全保障条約改定前のこんな中身のままで、きちんとした戦略を立てて、日本を守れるのだろうか。やはりまず化石状態の「基本方針」は撤廃し、現在の日本の体制、置かれている地政学的状況、アメリカとの安全保障協力関係のあり方に沿ったものを再策定する。その上で新しい防衛大綱を作って背骨の通った防衛力整備、国防体制の構築を進めることが日本を守るためにいま求められている。対症療法の接ぎ木で済む時代は終わった。