2018年1月第4週~2月第1週のNHK-FM「ベストオブクラシック」はシリーズ・オーケストラ・ジャパンの再放送。第3回の1月31日は2016年9月17日ライヴ収録のサッシャ・ゲッツェル指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏会。
神奈川県在住約30年、クラシック音楽好き歴22年余りだが地元の神奈川フィルを聴いたは過去2度だけ、放送視聴の機会もあまりないのでこの放送は楽しみだった。
前半のゴルトマルクはキュッヒルの辛口の美音、切り返しの鋭い音楽運びが活き、作品の聴きどころであるロマンティックな旋律、ややくすんだ質感がきりっと描かれた。
後半のマーラーの交響曲第5番はオーケストラが第1楽章の序盤から「パピュー」とか様子のおかしい音を出すケースが目立ち、脇が締まり、腰の下りた響きにならない。山場をすっと通れず、その度に力技で乗り切るため、第3楽章の頃には息切れ状態。肝心なリズム、音形が埋もれちゃっていた。第4楽章は遅めのテンポでじっくり表情をつけようとするが指揮者の器量不足もあり、散漫になってしまう。第5楽章になると曲を追いかけるだけで精いっぱいの様子。これではダメだ。
ベートーヴェン、ブルックナー、ブラームスの場合、精神面が充実していれば多少技術的に危うくても特に実演なら何とか聴ける。一方マーラーやリヒャルト・シュトラウスはどんなに愛情があっても、スコアの隅々まではっきり適正なバランスで演奏するパワー、スキルがなければ落第。やるならそれに見合った力を身につけ、ちゃんと振れる指揮者を呼ばないと。
神奈川フィルは若い常任指揮者のもとで様々な企画を行い、「意欲的」な活動ぶりと評価する向きもいる。しかしマーラーの5番がいっぱいいっぱいでは企画どころではない。オーケストラの基礎能力、個人の演奏テクニックやアンサンブルの精度を向上させるのが先。これは他の地方オーケストラにも言える。独自性を打ち出すのは大切だがまずどんな作品でも常にきちんと演奏できることが基本。
このくらい各パートにきちんと光を当てられた上で初めて「表現」の話ができる。