フィギュアスケート男子シングルの宇野昌磨選手は2017-2018シーズンのショートプログラムにヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」の「冬」を使用。ピョンチャンオリンピックで団体戦、個人戦の両方において100点超の好演を見せた。
そこで今回はあやからせてもらい「冬」のお気に入りをいくつか。
レオポルド・ストコフスキー指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1966年録音)
ヒュー・ビーン〔ヴァイオリン〕、レイモンド・クラーク〔チェロ〕、チャールズ・スピンクス〔ハープシコード〕
「怪物」ストコフスキーが「四季」をどう料理するか、半ば怖いもの見たさだが意外に格調高い。ハープシコードをざわざわ蠢かすあたりは「ファンタジア」のひとだなあと不思議な感慨。オーケストラの響きがグアッと拡がる音質の録音のなか、ビーンのソロが強弱自在にして一本筋を通す。
レオポルド・ストコフスキー~The Complete Decca Recordings - Phase 4 Stereo<限定盤>
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(1972年録音)
ミシェル・シュヴァルベ〔ヴァイオリン〕、エーベルハルト・フィンケ〔チェロ〕、ホルスト・ゲーベル〔ハープシコード〕
シュヴァルベの燻し銀の輝きを放つソロ以上に黄金時代のカラヤン、ベルリンフィルの聴き手の腹を揺さぶるサウンドのインパクトが大。鉄の規律と機動性を兼ね備えたアンサンブル、ブンブン唸る低音の迫力はこれぞモダン楽器。
ヘルベルト・フォン・カラヤン, ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/ヴィヴァルディ: 協奏曲集「四季」
カール・ミュンヒンガー指揮、シュトゥットガルト室内管弦楽団(1972年録音)
コンスタンティ・クルカ〔ヴァイオリン〕、イゴール・キプニス〔ハープシコード〕
キプニスのハープシコードが遊びまくる。「タリラリラン♪タリラリラン♪」と弦の刻みに合わせて楽しく合いの手。いちいち茶々を入れてくるひとのようで聴いていて笑ってしまう。クルカの独奏、ミュンヒンガー指揮のオーケストラはともにしなやかな清涼感のある音作りでうまくかみあっている。
コンスタンティ・クルカ(ヴァイオリン)、カール・ミュンヒンガー(指揮)、シュトゥットガルト室内管弦楽団/ヴィヴァルディ:協奏曲集《四季》
ズービン・メータ指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団(1982年ライヴ録音)
イツァーク・パールマン〔ヴァイオリン〕
パールマンの艶やかで朗々と伸びるソロの魅力。なお本盤はフェスティバルのライヴ録音で春夏秋冬それぞれ違うヴァイオリニストがソロを務める。スターン、ズッカーマン、ミンツ、パールマン。https://youtu.be/x8DzsScxhBE
Marieke Blankestijn〔ヴァイオリンと指揮〕、ヨーロッパ室内管弦楽団(1990年録音)
リチャード・レスター〔チェロ〕、ハロルド・レスター〔オルガン、ハープシコード〕
独奏、アンサンブルともに超辛口ドライジン。時折絡むオルガンの通奏低音もシンとした寒空に吹く北風の趣。音色が綺麗なだけになおさらビリビリ刺さってくる。
Blankestijn, Europe CO/Vivaldi:The Four Seasons
ヘルベルト・フォン・カラヤン〔指揮とハープシコード〕、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(1987年ライヴ収録)
アンネ・ゾフィー・ムター〔ヴァイオリン〕
ベルリンのフィルハーモニーの室内楽ホールこけら落としコンサートの映像。ムターの引き締まった麗々しいソロをカラヤンの山と谷のかっちりついたバックが包む。1972年録音と同様鉄壁で強靭に鳴るオーケストラのアンサンブルだが質感は若干なだらか。死の2年前のカラヤンは老いの中に雄々しく風格の滲む弾きぶり。向かい合わせにもう1人ハープシコード奏者を置き、カラヤンが両手で指揮する時は音を補う。
四季 カラヤン / ベルリン・フィル、ムター(1987) : ヴィヴァルディ(1678-1741) | HMV&BOOKS online - SVD46380