アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

My Favorite Things Special:こどもの日編【10代となった方に読んで欲しい本5冊】

近所の図書館でやっていた表題の掲示のひそみにならって。

サー・アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』(偕成社文庫)

超人的な能力を持つ探偵、平凡だが情に厚いパートナーの存在、ちょっとした発端から顔を出す恐るべき犯罪などキャラクター作り、プロットの展開において現代のたくさんのミステリテレビドラマ、アニメ、小説の原点になっている作品。名探偵ホームズの冴えわたる推理、パートナーであるワトスン医師とのユーモア交じりのやりとり、バラエティに富んだ事件の数々といった表層だけでも飽きはこない。そしてもう一歩踏み込むと別の魅力がある。ホームズ作品の舞台は19世紀中盤の英国。7つの海を支配し「大英帝国」と呼ばれていた。作品中でもインドを中心に英国の支配下に置かれていた土地の話が登場する。実は現在渦巻く中東、アジア、アフリカの問題のいくつかはこの時代に萌芽があり、調べていくと興味が深まること請け合い。また当時の英国は厳格な階級社会。人々は生まれながらに道が定まり、階級内で身を立てるのが人生の原則だった。そうした社会の一面は作品に色濃く投影されている。今の日本とは全く異なる社会の諸相を垣間見て考察するのも有意義だと思う。

星新一『ねらわれた星』(理論社星新一ショートショートセレクション〕)

活字の本=長い、かったるいと敬遠する向きに。ひとつひとつの話は数ページで終わってしまう。そこに埋め込まれた夢、恐怖、皮肉、ユーモア。心と頭をツイストさせる要素が短い間に弾ける。ハマったら人生の友となる作家。

スティーブン・イッサーリス『もし大作曲家と友だちになれたら・・・』(音楽之友社

現代屈指のチェロの名手イッサーリスがバッハ、モーツァルトベートーヴェンといった大作曲家6人の音楽の授業じゃ教えてくれないチャーミングでちょっとハチャメチャな一面を分かりやすい言葉で描く。今だったらツイッターのトレンドワードになっちゃいそうな話も。20世紀の大作曲家ストラヴィンスキーを入れているのが書き手のキャラクターの反映だろう。

高村正彦自由民主党副総裁)・島田晴香『選挙ってなんだろう?』(PHP研究所

公民の授業を受ける前にぜひ読んで。そもそも選挙とは?(AKBの「総選挙」との違い!)多数決とは?、日本ではどんな政治がおこなわれているか、外交(他の国との関わり合い)とは何かなどが平易かつリアルに語られる。高村正彦氏は日本の政治家として最も真っ当な道を歩んできたひと。込み入った内容を安易にせず、噛み砕いた言葉でしっかりと説明する。2017年に芸能界を引退した島田晴香・元AKB48メンバーの話の切り出し方も自然体。

ホーキング博士のスペース・アドヴェンチャー『宇宙の秘密の鍵』(岩崎書店

小学生が主人公の物語と明快な説明文、さらに写真で宇宙の秘密を立体的かつ色彩感たっぷりに描いた作品。アイデアを出したのは宇宙の謎について驚きの学説を発表し「車椅子の天才」といわれた理論物理学者スティーヴン・ホーキング博士(2018年逝去)。娘のルーシーの協力でストーリーに仕立てた。印刷の質がよく大人の鑑賞にも堪える出来栄え。