本公演のことは以前にも記した。
解析力、俊敏性、艶やかさの全てが求められる曲目。阪田知樹の底知れぬポテンシャルが覗える。事実、彼は上記3つの要素全てに秀でしかも単なる優等生ではなく、大胆な抉りを伴った強靭で稜線の深い音楽に結実させる。リストのパガニーニの主題による超絶技巧練習曲1838年版から2曲とブゾーニ編のメフィストワルツを生で聴けるのは貴重な機会。冒頭のベートーヴェンと締め括りのシューマンはピアニスト阪田知樹の鋭い洞察力が反映されるはず。ピアノ音楽に惹かれる聴き手なら必ず足を運びたい内容。
※文中敬称略