この日は普通の版だった。#9月22日 #麻生市民館 #新百合ヶ丘 #阪田知樹 #アンコール #ピアノ #ピアノソロ #ピアニスト #ピアノリサイタル #ショパン #幻想即興曲 #2018年
《曲目》
阪田知樹〔p.とお話〕
リスト:パガニーニの主題による超絶技巧練習曲(1838年版)より第3曲「ラ・カンパネラ」、第5曲「狩り」
リスト(ブゾーニ編):メフィスト・ワルツ第1番(村の居酒屋の踊り)
~休憩~
シューマン:交響的練習曲(遺作変奏付き)
しなやかで研ぎ澄まされたタッチによるきめ細かい色付け、それを立体的な力強い流れの響きに昇華する構築力を備えたピアニスト、阪田知樹(1993年生まれ)については以前記した。
19世紀序盤から20世紀前半までの作品を散りばめたプログラム。聴きとおした実感は優れた大河小説を読んだ趣で不思議と一貫性が感じられた。「演奏家の顔も持つ作曲家によるプログラム」という芯があったからかも。唯一シューマンはピアニスト挫折組だが音楽監督、評論家としてマルチに活躍した。
冒頭のベートーヴェン、和やか、優雅さのなかに孤独感のにじむ、新しい切り口の演奏。楽譜と謙虚に向き合い、自身の言葉で語る音楽が心地よく呼吸していた。
十八番のリストは全て「ひと味違う」版を取り上げた。ただ近年リストなどの異稿の録音は増えており、単に弾いたのみでは聴衆の心は掴めない。その点、阪田は入り組んだ構造線を的確にとらえ、爽快感にほんのり色気の駆け抜ける音楽で作品の面白さを実在化した。
腕達者の名刺代わりであるラフマニノフ編のクライスラー。立ちふさがる難所を潜り抜けながら、澄んだ色彩の変化により寂しげなユーモアを醸し出すあたりに阪田の音楽家としての深み、大きい器が垣間見えた。
掉尾に置かれたシューマン。ここまでのプログラムで覗わせたポテンシャルが最上の形で発揮。厚み、細部の動きの鋭さとスピード、寂寥感…作品が抱えるもの全てを響きのスケール感や色合いの変化の出し入れで描き切る。聴き手の身体を本当にシューマンの音楽で満たす内容だった。
作曲家としての顔も持つ阪田はスコアを緻密にスキャンした上で瑞々しく解像度の高い、しかも得も言われぬ艶や詩情も秘めた音楽に結実させるピアニスト。なかなか日本から生まれてこなかった資質の逸材であり、楽しみは増すばかり。
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