ドイツと日本を中心に生涯現役で活躍したピアニスト、園田高弘(1928-2004)のことは幾度かブログに記した。
没後10年の2014年から生前接点のあったピアニストなどが「Memorial Series」と題して園田高弘に捧げるリレーリサイタルを行っている。生誕90年の2018年はショパンでかためられた。東京文化会館小ホールは殆ど満席。
〔曲目〕※全てショパン作曲※
バラード第1番:新納洋介
バラード第2番:松本和将
バラード第3番:宮谷理香
バラード第4番:大崎結真
~休憩~
3つのマズルカ作品59:川井綾子
スケルツォ第2番:髙橋望
子守歌:平井千絵
舟歌:島田彩乃
幻想ポロネーズ:三木香代
2つのワルツ作品69/マズルカ作品68-4:青柳晋
数々の国際コンクール上位入賞歴を誇る大崎結真、ショパンのエキスパートといえる1995年ショパン国際ピアノコンクール第5位の宮谷理香や1985年同コンクール(園田が審査員を務め、S.ブーニンが優勝して大フィーバーに)でマズルカの演奏が高評価を得た三木香代、ロマン派ピアノ曲の演奏・録音機会が多い松本和将と青柳晋、そして近年バッハ演奏で実力が広く認められた髙橋望まで文字通り多士済々。それぞれの方向から誠実にショパンと向き合い芯の通った音楽を聴かせた。
宮谷、大崎のシンプルで潤いのあるバラード、楽想の変転をズバッと浮き彫りにした髙橋望のスケルツォ(客席の反応は1番)、柔らかいタッチでじんわりと感興を高めた三木の幻想ポロネーズがとりわけ耳に残った。
米ゴルフPGAツアーのメモリアルトーナメントは創設者ジャック・ニクラウスの意向で毎年「顕彰選手(メモリアルオナラリー)」が選ばれる。当人が存命なら会場に招き、ニクラウスとコース内に造られたレリーフの除幕やトークショーを行う。また歌舞伎の世界では追善公演が大きな位置づけとなっている。しかし日本の特に音楽の世界では武満徹などの特別な例外を除くと先人の功績をしのびつつ、現在とこれからを担う存在が何か披露する公演は殆どない。従って「園田高弘Memorial Series」が開かれ、しかも継続しているのは素晴らしい奇跡。園田高弘という名前が持つ一種の吸引力が関係者を動かし、アーティストと聴衆を集めているのだろう。
※文中敬称略
宮谷理香(ピアノ)/音楽の玉手箱 Vol.2 -コン・アニマ-