解像度の高いタッチによる陰陽の色彩美が明滅する強靭かつ彫りの深い表現で作品の核心を射抜くピアニスト、阪田知樹については幾度か取り上げた。
そしてベートーヴェン生誕250年の2020年6月から阪田知樹は、ハクジュホールでリスト編曲ピアノ独奏版のベートーヴェンの交響曲全9曲にリストの作品やモーツァルト、シューベルトのリストによるトランスクリプション(創造的編曲)を縦横に絡めたシリーズを開始する。
ベートーヴェン-リストの窓から古典派とロマン派を新しい視点で俯瞰しようという斬新な試みで音楽史的好奇心も刺激される内容。
元々阪田知樹はオリジナル作品とトランスクリプションを組み合わせて枝ぶりのいいプログラムを作るセンスに長けており、今回のシリーズは積み上げてきた知見を凝縮し壮大に展開するものだ。3月1日には横浜みなとみらいホールで序章ともいえるリサイタルの開催が予定されている。阪田知樹が繰り広げる2020年代のクラシック音楽シーン最初の「そそられる」音楽プロジェクトを大いに注目したい。
後藤泉(ピアノ)ベートーヴェン(リスト編曲):交響曲第3番『英雄』;交響曲第1番
後藤泉(ピアノ)ベートーヴェン(リスト編曲):交響曲 第9番
ベートーヴェン(リスト編): 交響曲第9番「合唱」 (10/8-10/2008) / 若林顕(p)
Beethoven : Symphonies Nos. 1 - 9 ( Transcription by Liszt ) / Katsaris