アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

11/2:コクミンテキギロン☆しようSP@shibuyacast【党派性を超えた共通認識】

https://www.instagram.com/p/B4XISrIllqm/

本日はこちら。ひとりひとりの視点、方向性をじっくり聞けて自身の見解を磨き、考察を深める機会となった。御三方と運営者の皆様に感謝します。#コクミンテキギロン #コクギ #渋谷キャスト #石破茂 #玉木雄一郎 #山尾志桜里 #令和元年 #2019年 #11月2日

イヴェントの主催者はこちら。

twitter.com

テーマ「どうする?どうなる?憲法9条どことんギロン」

《討議者》※50音順※

石破茂衆議院議員自由民主党鳥取県第1区〕・元国務大臣・元自由民主党幹事長)

玉木雄一郎衆議院議員〔国民民主党香川県第2区〕国民民主党代表)

山尾志桜里衆議院議員立憲民主党・愛知県第7区〕)

《コーディネーター》※当日の紹介順※

水上貴央(弁護士)

倉持麟太郎(弁護士)

序論:立法から考える現在の日本の本質的課題

水上氏から3氏に対して国家観を探る意図として以下の質問を行い、回答を求めた。

「もし自由に法律を1本作れるもしくは改正できるとしたら何をしますか」

山尾氏は「(皇室典範を改正して)女性が天皇になれるようにしたい。日本は(憲法の最初に記される)天皇の権威と内閣総理大臣を頂点とする権力の2つの中心がある楕円の構造になっている。これはいいことだと思う。なぜなから権力側は基本的に多数決の論理だがそれが良くないこと、間違いを犯すケースもある。もうひとつ多数決の論理に縛られずに存在する要素があったほうが国として健全。しかし現在の男系男子に皇位継承が限定される状況では皇室が先細り、いずれなくなるのは明らか。女性天皇女系天皇女性宮家の道を開き、皇室が続くようにしたい」と述べた。

この意見を伺っていて中曾根康弘氏の『自省録-歴史法廷の被告として』(新潮社;2004年〔新潮文庫;2017年〕)の一節を思い出した。

日本の国家構造は、象徴天皇の権威と、現実的権力の運営者である内閣総理大臣との二重構造です。かたや超越、こなた俗界の二重構造なのです。まず伝統的権威、国民統合の中心としての象徴天皇をいただく構造があり、現実の国家権力は、立法、司法、行政の三権の間のチェック・アンド・バランスで運用され、その中心に首相がいるもう一つの構造がある。この二重構造は日本の特徴であり、見事に機能しています。

政治とは、お世辞と生死の間を往復するものです。どぶ板を踏み、時に間違って道端の地蔵にまでお辞儀をするくらいお世辞を振りまかなければ、大衆民主主義の現代では当選はおぼつかないです。俗物と言えば俗物ですが、当選した議員には、人間の生死に関わる重大な案件を処理する厳粛な職務があるのです。

加えて首相は、与野党の攻防、ジャーナリズムの批判、世論の毀誉褒貶の真っただ中に身を置いて、政権を運用しています。権力に近づき、それによって自己の理想を実現しようとする者は、”俗物中の練達者”であり、俗物の一員である首相は、傷つき倒れることもあります。政治家には汚辱と栄光がつきものです。

しかし、政権が汚辱で倒れても、日本には超越的存在としての天皇陛下がおられます。俗界の飛沫は天皇には及ばない。否、及ぼさせてはならないのです。この二重構造によって、日本の伝統と民主主義との調和があり、求心力と遠心力の均衡、いわば歴史的知恵の作用で、日本の自由民主主義は維持されていることを認識すべきなのです。(pp.39より)

自省録―歴史法廷の被告として― (新潮文庫)

自省録―歴史法廷の被告として― (新潮文庫)

中曽根康弘が語る戦後日本外交

中曽根康弘が語る戦後日本外交

昭和の指導者 (単行本)

昭和の指導者 (単行本)

皇室と皇位継承の維持は大切だが女性天皇女系天皇女性宮家を取り入れた場合、外戚が大幅に増えるなど皇室は相当大きく変容する。そうしてまで皇室を維持するのか文字通り「コクミンテキギロン」に値するテーマだろう。

玉木氏は「財政法を見直し、国債の発行対象を適正化する一方、”こども国債”を発行して教育や科学技術に必要な財源を確保する。平成最初の予算と最後の予算を比較したとき、公共事業や社会保障への支出は大幅に増え、それに伴う国債発行を賄う国債費も増大した。一方で文教や科学技術関連予算は約5兆円で殆ど動いていない。アメリカやチャイナを見ると大幅増、軍事関連の研究開発費も入れたらまさにけた違い。社会保障は安定財源で賄い、文教や科学技術にお金を注げるようにしたい」と提案した。

石破氏は「安全保障基本法が必要だ。日本に基本法は現在50ある。なのに安全保障の基本法がないのはおかしい。重要問題には基本法のもとに手続法があるのが当たり前なのにそうなっていない。あと付け加えるなら日本の東京一極集中は世界的に特異。是正法を作るべき状況」と持論を展開した。

期せずして皇室、財政、安全保障と憲法を論ずる以前に日本の抱える本質的課題が三氏から明確に提起された。秀逸な質問だったと思う。

本論:憲法9条をめぐる問題

山尾氏は「個別的自衛権の保持を憲法9条に書き込む。それによって日本が持つ防衛力の質的制限をある程度かけられる。アメリカの戦争にそのまま付き合うことはしないというスタンスを取る。仮に日本が将来集団安全保障の枠組みに加わったとしても進んで武器を取って出ていくことは困難であり、求められもしないと考える。戦争が終わった後の平和構築、維持における貢献がメインだろうし、そこに注力するのが妥当」と述べた。

石破氏は「憲法9条第2項は削除し安全保障基本法を定める。(憲法9条)第1項はパリ不戦条約などに起源をもち、似た内容の条文を持つ国もあり、さほど特殊なものではない。しかし第2項は現在の自衛隊を考えれば”必要最小限”だから”陸海空軍のその他の戦力”にあたらないと言うのは無理だし、交戦権を認めないとはなんのこっちゃという話。領土、統治機構、国民を守らなければならない事態に自衛隊は出動する。その時規範となるのは国際法、ここに基準を置かないと(前述の目的のために)組織的殺人を許されているのに(警察のような話では)自衛隊員個人の判断に委ねられることになり、成り立たない。憲法9条を守ると言うひとほど日本の外交、安全保障政策を”アメリカ言いなり”と批判する。おかしな話。自らの国を自ら守れない状況でどうやってアメリカ言いなりから脱するのか。

自衛隊の活動範囲、集団的自衛権の問題は)我が国にとって死活的利益が懸かっていれば地球の裏側でも行く。なければ隣でも行かない。アメリカが唯一の同盟国と言うが裏返せば一か国しか同盟してくれないとは情けない話。集団安全保障の枠組みにどう入っていくか考えなければいけないし、まず基本として自らの国は自ら守ることだ」と改めて生来の主張を整理して述べた。

玉木氏は「現在の憲法9条には規範性がないのが問題。ライオンがいて檻が必要なのに全然機能していない。きちんと檻を作る必要がある。規範性のない状況を存続させる意味で憲法9条をそのまま守り続ける主張と安倍首相の言う”第3項を設けて自衛隊を書き込む”案は一緒の話。防衛の質的、空間的な拡大を踏まえた規範性を憲法に持たせないと危うくなる」と教条的護憲論の危うさも含めて指摘した。

はっきり言葉にした玉木氏はもとより他の二氏も安倍首相の提起する「第3項加憲案」を否定した。また序論と本論の間に水上氏と行われたやり取りの中で政局に関係なく憲法調査会の議論を行うのが妥当だという一定の共通認識が示された。

僭越だが本ブログ筆者の憲法9条に関する見解は下記リンクに記載している。

choku-tn.hatenablog.com

補論:第9条以外の憲法改正の論点

山尾氏は今の三権のバランスが行政に偏っていることを指摘し、衆議院解散権の制約や憲法裁判所の設置を提唱。そして政権交代の必要性を主張し、同一選挙区からの立候補制限も提案した。

石破氏最高裁判所裁判官の国民審査を見直すことや参議院を真のチェック機関、本来の上院の在り方に近づける二院制の改革が必要とした。また原爆投下の意図や占領期の法執行などに触れつつ「知れば知るほど怖い国だ」との対米認識を示し、自主防衛の必要性を強調した。他の二氏も対米関係の再検討について触れ、玉木氏日米地位協定の見直しに言及した。さらに石破氏は世界の人口が増えるなか日本は人口が減る現実を指摘し、危機感とともに婚姻率と出生率を上げるための政策実現を説いた。

玉木氏は食糧安全保障の明文化と全議員の4分の1以上の要求があった場合の臨時国会開会の義務化を主張。石破氏は後者に関して先に自身が述べた点と合わせて2012年の自民党案に入っていると同調した。

エピローグ

国会の委員会やテレビの討論会と異なり、三氏がお互いの話をしっかり聞いたうえで論理的に自らの立ち位置を明らかにした時間だった。各氏の放った磁場を検討すると違いがある反面、共通項も見いだせた。例えば安全保障政策に関する規範の必要性、日米関係の重要性は押さえつつ、自律自助の要素を高めなければならないことなど。

憲法9条にまつわる話題は政治家はもとより一般人の間でも党派性むき出しの不毛なやり取りになりがちだが、よく解きほぐして話し、相手の話に耳を傾ければ、主張の背後にあるものが浮かび、そこから現状に対する問題意識が共有される可能性はあろう。石破氏は「9条を一言一句変えないと言うひととこそ話したい」と仰った。見識だと思う。また個人的なことだがずっと心にためてきた最高裁判所の国民審査について石破氏が言及して下さったのはありがたかった。

ただ現状として憲法9条がすぐ改正される、安全保障基本法が直ちに作られることはない。ホルムズ海峡への自衛隊派遣が検討中のなかで憲法の文言との整合性ではなく、日本の国益との整合性に基づく安全保障政策の議論が国会で行われることを強く要望したい。

最後に三氏はもちろんイヴェントを開催、円滑に運営なさったコクミンテキギロンの主催者カルテットとコーディネーターの水上、倉持両弁護士に心から感謝申し上げます。

※文中一部敬称略※