アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

衣笠祥雄の記録を繋いだ阿南準郎監督【三原脩からの影響】

[https://www.instagram.com/p/BiW24bvhMGW/:title=「67年秋、近鉄へのトレードを通告された広島の阿南準郎は、引退を決意した。30歳になり、そろそろ将来の生活設計を考えねばならなかった。《パのお荷物》と軽べつされているボロ球団へ移籍しても、明るい…

憲法第9条制定の背景を秘し創作した「意義」を語り続けた幣原元首相

幣原喜重郎元首相が衆議院議長時代の1951年に日本国憲法第9条制定の意義を綴ったとされる原稿が宮城県で見つかったという。 mainichi.jp 内容は『外交五十年』に記されたものとほぼ同様で軍備全廃の意義を謳ったもの。しかし幣原氏が憲法第9条を組み込んだ理…

My Favorite Things:岩見隆夫『陛下の御質問 昭和天皇と戦後政治』

昭和天皇が内奏や閣僚、官僚などの情勢説明の折に発した質問、漏らした言葉から浮かび上がるもうひとつの戦後政治。園遊会におけるユーモラスさとは違う、特有の時局観、人物観を抱き、はらわたの巻き方の複雑な昭和天皇の一面が覗く。取材に対して饒舌に応…

サヴァリッシュとブロムシュテットの叙勲【旭日中綬章は低い!?】

ひとから本を頂くことがある。ありがたい時、そうでない時、様々だが昔、親戚から貰ったこちらは典型的前者。川口幹夫氏は大河ドラマ、紅白歌合戦を確立したNHK中興の祖。一時期NHK交響楽団理事長に飛ばされたがその後のNHKで前代未聞の不祥事が発生して会長…

見逃せない日本の対北朝鮮経済制裁の水漏れ【外交の根本にあるまやかし】

古川勝久氏は国連安全保障理事会北朝鮮制裁委員会の専門家パネルのメンバーとして北朝鮮を巡る新規の流れの探索に取り組んだひと。そこから見えてきたものを『北朝鮮 核の資金源《国連捜査》秘録』(新潮社)にまとめた。 ときに日本は安倍首相が先頭に立ち…

My Favorite Things:曽野綾子『立ち止まる才能』【作家が作品を生む意識】

産経新聞の辛口コラムとは全く違う創作に対して誠実な女流文士の肖像。作家になるまでの人格を形作った複雑な家庭、創作に至る道程や意識、文章作法などをシンプルに記した文学的自叙伝。#曽野綾子 #曾野綾子 #三浦朱門 #読書 #新潮文庫 #内幕 #自叙伝 #意外…

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10②】

※一部ネタばれあり※前回の続き。 choku-tn.hatenablog.com 第8位:銀星号事件(『シャーロック・ホームズの回想』) ラストシーンは競馬のルール上あり得ない展開だし、銀星号の行動の動物学的矛盾もしばしば突っ込まれる作品。しかしホームズの驚くほど快活な…

My Favorite Things:阿川弘之『食味風々録』【食から浮かぶ文士の情と品位】

2015年再文庫化。健啖家として知られた文士の「食」の回想録。鰻を巡る思い出、海軍時代の戦友から送られてくる品物が呼び覚ます過去の記憶、海外の珍味…食べ物の薫りに乗って人生の襞を感じさせる文章は味わい深い。邱栄漢さんと月餅の話など心和む。再文庫…

My Favorite Things:石原愼太郎『国家なる幻影』【私政治小説の最高峰】

2001年文庫化。1996年の議員辞職までの「第1期政治家人生」を自ら描いた作品。ノンフィクションとはとても受け取れないが、登場人物が全て実名の私政治小説と思えば傑作。非情、浪花節、非合理、裏切り、ブラックユーモアが詰め込まれた内容は密度が濃く、ど…

My Favorite Things:ジョン・フェインスタイン『天国のキャディ』

ゴルフの祭典、マスターズ開幕。本番前のプレイヴェントのパー3コンテストで2018年はトム・ワトソンが優勝した。本書は2006年刊行。ワトソンとキャディのブルース・エドワーズのストーリー。ブルースは難病ALSに侵され、2004年のマスターズ第1ラウンドの朝に…

My Favorite Things:サー・エドワード・ヒース『音楽-人生の喜び』【究極の二刀流】

1980年刊行。元英国首相でロンドン交響楽団の名誉理事長を務め、指揮台にも上がったサー・エドワード・ヒースの音楽に焦点を当てた回想録。EEC加盟が決まった日にダウニング街10番地でひとりバッハを弾くシーンはいま読むと切ない。プレヴィン、バーンスタイ…

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10①】

※一部ネタばれあり※ 前回の続き。ベスト10をコメント付きで。 choku-tn.hatenablog.com 第10位:青いガーネット(『シャーロック・ホームズの冒険』) 最初の帽子を巡る推理が楽しい。「名探偵」の能力を示す手段としてひとの経歴などを当てて見せるケースは多…

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10〔序章〕】

※一部ネタばれあり※ 読書遍歴の原点がサー・アーサー・コナン・ドイルが創作したシャーロック・ホームズ物語だという話を以前記した。 choku-tn.hatenablog.com ホームズ物語を生んだ作家ドイルの筆捌きの強みは①キャラクター創出能力、②アイディアの独創性、③素…

福田赳夫『回顧九十年』【最初で最後の著書】

1994年刊行。題字も著者。首相を辞めてからの話が意外に面白い。OBサミットを創設した福田赳夫氏はフォード、カーター両元アメリカ大統領同様、優れた「元首相」だった。#読書 #元首相 #回顧録 #いただきもの #日本政治 #昭和史 #父親 ヘルムート・シュミッ…

My Favorite Things:服部龍二『中曽根康弘』『田中角栄』

ともに1918年生まれ、当選も同期のふたり。服部龍二先生は一次資料の読み込みのほか、中曾根氏本人を含む政治家、官僚OBの聞き取りを行ってきた成果も取り込み、精緻にしてひとの息づかいの聞こえるテンポのいい評伝にまとめた。田中角栄氏についてキャラク…

バイキング(ビュッフェ)形式の原点スモーガスボード

本日は赤坂のレストランストックホルムでランチ。バイキング形式の原点スモーガスボード。#レストランストックホルム #東急プラザ #赤坂 #赤坂見附 #ランチ #バイキング #ビュッフェ #スモーガスボード 本日ランチに行ったレストランストックホルム。想像よ…

My Favorite Things【押尾愛子『朝比奈隆のオペラの時代』】

オペラをやることが「おおごと」だった時代に創造力と情熱を傾けた関西の芸術家たち。そのひとりとして「ブルックナー指揮者」になる前の朝比奈さんが獅子奮迅の活躍をみせる。「大向こう」を意識した芸のあり方は生涯変わらなかった。対象を等身大で描いた…

松本清張「再考」の一助に【Eテレ100分de名著「松本清張スペシャル」】

Eテレ「100分de名著」、3月は松本清張スペシャル。日本政治思想史の原武史先生が「社会」「古層」「天皇」「国家」の視点から斬り込む。2017年夏、北九州市小倉の松本清張記念館を訪れた。内部は撮影禁止だが清張の書斎がそっくり移築されている。#松本清張 …

『ロックフェラー回顧録』(新潮文庫)【特別だが普通の人間】

世界の黒幕とか、悪の帝王とか、ダース・ベイダーみたいに言われていたひと。確かに会ったひとのリストは浮世離れ。彼個人の人生航路は家庭問題など生まれゆえの宿命、大変さを感じる。#ロックフェラー #陰謀論 #金融 #財団 #moma #ラスボス #闇の帝王 #黒幕…

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の虚と実

1979年刊行。タイトルとは裏腹に「日本はいずれ行き詰まる。アメリカは慌てずに構造改革に邁進すること」が主旨。その通りになった。#耳の痛い話 #日本論 #日本 #アメリカ #日本型経営 #日本社会 #アメリカ社会 #知日派 #未来予測 #過去からの警告 #構造改革…

My Favorite Things:岡崎久彦+佐藤誠三郎『日本の失敗と成功』(扶桑社)

明治維新以降の日本の核心を凝縮 2018年(平成30年)は明治維新150年。大河ドラマをはじめ、幕末から明治維新の流れにまたスポットライトが当たっている。明治維新以降の日本は上昇と下降の振り幅の大きい歩みだった。明治、大正、昭和の内政、外交の分水嶺…

My Favorite Things:『シャーロック・ホームズの冒険』【我が読書の原点】

10歳の誕生日プレゼントに母親から『シャーロック・ホームズの冒険』(サー・アーサー・コナン・ドイル著、久米元一/久米穣訳、講談社少年少女世界文学館)[※]をもらった。4編収録されていたが「ボスコム渓谷の謎」が当時一番刺さった。「警察が逮捕した人物…

81歳の森祇晶が語るライオンズ、ジャイアンツ

「理想の監督」はハワイで悠々自適 子供の頃は西武ライオンズのファンだった。特に秋山幸二が好きで日本シリーズのバック転ホームインをテレビ中継で見た時の驚きは未だに鮮明。またチームを率いる森祇晶監督にも子供ながらに注目していた。きっとこのひとは…

My Favorite Things:浜田昭八『監督たちの戦い』【我が野球のバイブル】

日本経済新聞の運動部で30年以上野球を担当し、定年退職後の現在も同新聞にコラム「選球眼」を執筆する浜田昭八(1933-)が20世紀終盤に新聞連載し、書籍化されたのが『監督たちの戦い』(日経ビジネス人文庫、上下巻;2001年)。プロ野球監督の本質である…

My Favorite Things【フィギュアスケートを彩るチャップリン。その自伝の面白さ】

チャップリンメロディはフィギュアスケート男子シングルの人気プログラム。すぐ思い出せるだけでも織田信成氏の2009-2010シーズンFS、ハビエル・フェルナンデス選手の2017-2018SPが挙げられる。 「喜劇王」サー・チャールズ・チャップリン(1889-1977)は出演・…

My Favorite Things:猪谷千春『IOC』【オリンピックを巡る不思議な世界】

1956年コルティナダンペッツォオリンピック男子回転の銀メダリストで引退後は保険業界に転じて活躍した一方、IOC委員を約30年務めた猪谷千春(1931-)氏が半生を振り返りつつ、IOCとオリンピックの舞台裏を分かりやすい文章でつづった1冊。 IOCの役割、その…

箴言の宝庫『村山富市回顧録』が文庫に

日本における改革の実現や大きな外交成果達成は保守安定政権で周到な準備した場合が殆ど。早期講和、社会保険、安保改定、日韓国交回復、沖縄返還、日中国交正常化、三公団・公社民営化、全てそう。革新勢力が騒いで実現したことなど皆無に近い。革新のひと…

「辞書の新版には飛びつくな」が常道【広辞苑第7版誤り指摘される】

約四半世紀前、小学校高学年の頃、国語や英語の時間に大人用の辞書の引き方を教わった。当時双方の科目の先生が同じことを仰った。 辞書はなるべく新しいものを使った方がいい。但し、新しい版が出た時にすぐ飛びつくのは良くない。どうしても新しい版には間…

戦場と動物にひそむhumanityを紡ぐ【マイケル・モーパーゴ叙勲】

最も敬愛する児童文学作家、マイケル・モーパーゴに2017年末の叙勲でナイトの称号が贈られた。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171230-42521024-bbc-int 彼は主に第1次大戦の時代を舞台に戦争の周辺で生きる人々や動物に纏わる物語を作ってきた。『戦…

サファテ-スタンカ-鶴岡一人【「意気に感ず」を引き出す方法】

3イニングと2連投の奇跡 福岡ソフトバンクホークスのデニス・サファテ投手は日本シリーズMVPとシーズンMVPの2冠に輝き、加えて年度球界最高の功労者に贈られる正力松太郎賞も受賞した。外国人投手として「MVP2冠」は53年ぶりと報じられた。その53年前の1964年…