熱狂への序曲
指揮者・水野蒼生が自ら結成したオーケストラ「O.E.T」の旗揚げ公演の曲目に選んだのは全てベートーヴェンの作品。水野はベートーヴェンに対する敬意を率直に明かす。
今回水野が指揮するのは交響曲第3番。交響楽史上に革命を起こした、ベートーヴェンの交響曲全9曲の中で最高傑作と目される作品。指揮者、オーケストラにとってはごまかしのきかない、音楽的能力の全てがテストされる剣が峰。
若い指揮者、オーケストラのお披露目では得てしてきらびやかなロマン派の管弦楽曲がメインを飾りがちだが、正面切って古典の傑作を打ち出すあたりに水野の「敷居は低く、内容は正攻法」という強い意思が表れている。
7月2日のブログでベートーヴェンの音楽は「250年にわたり人類に刺激を与え」続けていると記した。実はもうすぐベートーヴェンは日本で間違いなくアツい作曲家になる。今回の水野の公演はその序曲なのだ。
50年ぶりの熱狂
2020年はベートーヴェンの生誕250年。そして東京五輪の年。
遡ること半世紀の1970年はベートーヴェンの生誕250年。そして大阪万博の年。
日本ではクラシック音楽の夢の祝祭年状態だった。
NHK交響楽団は名誉指揮者サヴァリッシュのもとべートーヴェン交響曲全曲演奏会を敢行。
読売日本交響楽団はウィーンフィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェン交響曲全集を録音した名指揮者シュミット=イッセルシュテットが交響曲第9番と荘厳ミサ曲を指揮。
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また万博記念事業としてカラヤン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団が大阪でベートーヴェン交響曲全曲演奏会を行った。
さらに万博の本会場では武満徹やシュトックハウゼンといった当時の現代音楽の大物作曲家がパビリオン用の音楽を展開。時代とともに動いているクラシック音楽の最前線を人々に見せつけた。
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湯浅譲二/湯浅譲二: 大阪万博・せんい館の音楽 - TOWER RECORDS ONLINE
大阪万博とシュトックハウゼンの思い出(<連載企画>音響学の温故知新)
さて2020年。ベートーヴェンと東京五輪。何が見られるのか。今からドキドキ。
50年ぶりにクラシック音楽のアツい瞬間が訪れるはずだから。
その前にぜひ、若い指揮者とオーケストラが奏でるベートーヴェンの音楽のシャワーを思いっきり浴びて頂きたい。