オーケストラ・アンサンブル東京(O.E.T)が7月20日に行う結成披露公演のメイン曲目は楽団代表・水野蒼生が指揮するベートーヴェンの交響曲第3番。
O.E.T @7/20"Opening" (@o_e_tokyo) on Twitter
クラシック音楽史上に輝く革命的作品。言い方を変えればチクッとくるポイントがたくさんある。詳細な分析は音楽学者の書物に譲るとして、一音楽ファンの視線で刺さるところをごく簡単に。
第1楽章
冒頭。何の前触れもなく2発サウンドが炸裂する。いきなり真剣勝負。
2発の間隔で以降の指揮者のテンポ設定が大体分かる。
間を置かずに2発鳴らせば速いテンポでいくし、少し間を取って鳴らせばゆったりと進む。間を置かずに2発鳴らしたのにまったり行く指揮者やしっかり間を取って鳴らしたのにせかせかやる指揮者はあまりいない。
そこから静々といかにも高貴で伸びやかなメロディが流れ、じわじわと音の成分が積み重なって最初の盛り上がりを迎える。
次にどんどん軋み系の音が使われて響きのエネルギーを強く聴き手に印象付ける(動画5:00-6:45、以下同じ)。当時こうした音を短い間隔でしかもフルスロットルで連射することは殆どなく相当ショッキングだったはず。
楽章の締め括りは最初のメロディの要素が膨らんで堂々たる響きに結実(14:00-15:45)。
第2楽章(15:55-)
何と葬送行進曲。極めて悲痛で荘厳、しかしどこか希望もある音楽。
ホルンの奏でる旋律がどれも胸にしみる。とりわけ24:42からの部分。
音楽の表現可能性を劇的に広げた約16分間。
第3楽章(32:45-)
一転してウキウキ、ちょっぴりユーモラス。
35:25-と36:00-のホルンの3重奏は聴く側は愉しいが奏者はドキドキ。
ばっちり決まれば終演後のビールがうまいだろう。
第4楽章(38:35-)
ズバッと空間を切り裂く始まり。そこから優美なメロディが流れ出て響きの万華鏡が展開される。46:55以降の音楽の高揚感、温かさとラストの追い込みは身体をゆすりたくなる。やはりホルンが大活躍。
この曲は全編に渡ってホルンの見せ場が多い。音楽の扉が開くかはホルン奏者が鍵を握っている。
最後に。
作曲当時(19世紀初頭)と現在では楽器、特に管楽器の構造が全く違っていた。
当時の楽器(のレプリカ)を使った演奏(ピリオド・アプローチ)。