アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

「新・55年体制」の始まり【第48回衆議院議員総選挙のあと】

「政界・野党再編」は「民進党組合派」の伸長に終わった

2017年10月22日に投開票が行われた(一部地域では台風の影響により翌日開票)第48回衆議院議員総選挙の結果は与党の自民党安倍晋三総裁〔首相〕)がほぼ公示前勢力を確保。連立相手の公明党は数議席減らしたが2党で議席全体の約3分の2を獲得して、自公連立政権安倍内閣の継続が固まった。11月1日に開かれた特別国会で安倍晋三自民党総裁は第98代内閣総理大臣に指名され、同日第4次安倍内閣が発足した。

総選挙の公示直前に当時の野党第1党の民進党が事実上分裂。元々民進党は旧民主党時代から勢い(「風」ともいう)と労働組合組織力ハイブリッドカー政党として議席を獲得してきた。今回の分裂劇は小池百合子都知事希望の党(以下希望)設立を見た民進党議員がひとり、またひとりと希望入りに動くなか、勢い派の前原誠司民進党代表が一種のブレイクスルーを狙って党全体で希望への移籍を図ろうとしたことが原因。

「抱きつかれた」恰好の希望は勢い派の議員を歓迎する一方、政策上の一致を求めてそれに適わない組合派の議員は排除すると表明。「大きな固まりを作る」という観点から渋々「移籍」を了承した組合派はこの希望の姿勢に猛反発。立憲民主党としてまとまり、民進党の衆議院側の分裂が確定(参議院民進党のまま存続)。またどちらの党にも移らず、無所属で選挙を戦った議員は選挙後に衆議院内会派「無所属の会」を結成している。

この状態で選挙になった結果、組織力に勝る組合派が率いる立憲民主党が躍進し、勢い派の希望は「排除」の余波で勢いが萎み、苦境に陥ったのは自然の成り行き。結局「政界・野党再編」なるものは「政権交代」どころか単に労働組合を支持基盤とする民進党組合派(立憲民主党)が組織力と低投票率の助けで勢力を拡大して終わった。皮肉にも一部の小選挙区では希望が自民党支持層を少し引き剥がしたので立憲民主党の候補者が当選したところもあった。なお公明党は両党の出現で創価学会員以外の中道志向の有権者票が逃げて公示前勢力を割り込んだ。恨み神髄のはずで公明党のひとたちは今後両党のスキャンダル暴きに力を入れるだろう。

立憲民主党日本社会党を目指す

枝野幸男立憲民主党代表は「数合わせ」に走らないと表明した。おそらく枝野氏は自身の「政権体験」から政権なんて面倒臭いものを目指すよりも組織を基盤に一定の議席を確保し、安倍自民党総裁主導の改憲阻止(もし国民投票に持ち込まれたら今回の選挙で利用した旧シールズの構成員を運動に活用するつもり)と安倍内閣に抵抗している感のある活動を軸に政党としての存在意義を高める方針だろう。つまり立憲民主党はかつての日本社会党のような野党になるわけ。

野党第1党の立憲民主党が政権を目指さず、他の野党は言うに及ばずという状況、これはいわゆる「55年体制」の保革イデオロギーの薄まったバージョン。表の国会審議は色々激しくやりつつも野党は政権を目指さないので与野党はどこかで手を打つ。いや、現在の自民党は手を打つ気すらないかも。謙虚の紙に包んで法案は粛々と通す。

この政治風景の難点は構造改革が進まないこと。政権を目指す改革志向の野党がなければ、与党は政策を磨ぐ必要が無い。立憲民主党労働組合が基盤なので既得権死守志向。だから既得権大好きで時代に取り残され、日本をダメにした団塊の世代とそういう連中が教育した子女の支持を多く集めている。日本人は本当に構造改革ができない、それを望まない人間が多数派なんだと今回の総選挙で改めて実感した。