アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

「東京ピアノ爆団」第3回【東京公演】2/4@吉祥寺

指揮者・水野蒼生が主宰するライヴハウスで味わう新感覚クラシックピアノソロコンサート「東京ピアノ爆団」の第3回公演が2018年2月4日、吉祥寺Star Pines Cafeで行われた。会場は満席の盛況。

本公演のコンセプトや出演者、主な曲目は以下の記事に記した。

choku-tn.hatenablog.com

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三好駿

ベートーヴェン:創作主題による15の変奏曲とフーガ(エロイカ変奏曲)作品35

ドビュッシー:喜びの島

「クラシカルDJ」こと主宰の水野が予めベートーヴェン交響曲第3番の録音を流しておき、フィナーレに入るところでピアニストが同じテーマによるこの変奏曲を弾き始める洒落た演出。楽曲の構造を丁寧に解きほぐし、硬軟のタッチの使い分けが巧妙。3回連続の出演のため公演の雰囲気にピッタリはまっており、聴衆とのやり取りも手慣れたもの。些か重武装気味の喜びの島が結構面白かった。

折鶴柄の着物風衣装を着用。近年燕尾服を着ない指揮者、ソリストが結構いるが売れない画家みたいなだらしないスタイルに陥るケースが多い。今回の三好の衣装はなかなか素敵で身体が大きいためよく似合っていた。

鶴久竜太

ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ作品24

ショパン:ワルツ第6番作品64-1

各変奏のカラーをくっきり打ち出す強い意思が感じられ、ロマンティックな楽想における音と音の間の練り込みは濃やか。ただ分厚い和音を動かしていったり、重音やオクターヴが立ち塞がる個所ではちょっと危うかった。ショパンの方がフィットしていた。

あとこういう場所に立つなら音楽用語を平易な言葉で説明するスキルは必要。変奏曲なら「最初に示されたテーマ(メロディ)が色合いを変えながら展開していく」とか、フーガなら「テーマ(メロディ)Aとテーマ(メロディ)Bがそれぞれ発展しつつ音楽の追いかけっこを演じる」といった具合に。

高橋優介

ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」による3つの楽章

簡単に言えば「モノが違う」演奏だった。乱れ咲くリズムの処理、千変万化の色彩表現、技巧的解像度の全てが一級品。序盤から中盤に移る際の和音の打ち込みの闇は聴き手を戦慄させるほど。生来の指捌きと反射神経の良さ、硬軟明暗の使い分けの卓越性、楽曲構造把握力に加えてスケール感が出てきた。聴き手を納得から感動に導ける大型ピアニスト。

主宰の水野蒼生が幕間に回した「オーケストラ音楽リミックス」は超名曲と「シェフのおすすめ料理」的作品が上手にブレンドされていて楽しめた。1曲分からず悔しい(2/11追記 ポール・パレーのミサ曲《ジャンヌ・ダルク没後500年を記念して》と判明。CD持っているのに記憶の彼方)。

「東京ピアノ爆団」は3年連続3回目の公演を成功裏に終えた。逆の見方をすれば試みの面白さで聴衆を引き付ける段階は過ぎたと言える。シンプルな良さを損なわずにどう趣向を凝らすか、課題であり楽しみ。

※文中敬称略