厳格居士の聴かせたゆとりある歌心
3月の読響シンフォニックライブは2月に続いて日本楽壇の重鎮、外山雄三(1931-)が指揮台に立った2018年1月31日の公開収録から。地上波が3月21日(3月20日深夜)、BS日テレは3月31日AM7:00-の放送。
演奏機会の少ないヴァイオリン協奏曲が並んだ前半に対して後半は有名オペラからの管弦楽曲が6曲並ぶ。演奏の充実度が高かったのはラスト3曲、ヴェルディの歌劇「運命の力」序曲、ワーグナーの歌劇「ローエングリン」第1幕前奏曲、そしてチャイコフスキーの歌劇「エフゲニ・オネーギン」のポロネーズ。金管の隈取りをうまくきかせることで音楽のエネルギー、熱量がぐーんとにじみ出る。響きの大きい拡がりもよく短い時間の中で聴き手にオペラの舞台を想像させる濃い内容だった。厳格な統制のイメイジの外山だが、この日の演奏はふくよかさやゆとりが目立ち、違う指揮者のよう。ローエングリン前奏曲のゆったりした運び、底光り感のある奥行きの深いサウンドは読響のアンサンブルの良さもあって実に美麗。ヴェルディと続けることで2人の大作曲家のコントラスト、序曲と前奏曲の違いを聴き手に印象付ける心憎い配置。
90歳が視野に入ってきた超ヴェテランの至芸、御見事。