「サヴァリッシュさんが日本に初めて来られたのは昭和39年のことだから、もう35年近く前になる。毎年来られてN響を指揮し、時には得意のピアノを弾いて楽員メンバーとクインテットを組んだりした。
サヴァリッシュさんの功績は極めて大きい。日本政府はそれに対して勲三等を贈ったが、この受章パーティーの時サントリーの佐治敬三さんが《なんで三等なのか?私には解せない》と怒ったが、私もまったく同感であった。
このことがあって、私もサヴァリッシュさんより上の勲章をもらうことはできないと思った。NHKの会長をやれば、まず勲二等である。それではサヴァリッシュさんに申し訳ないではないか。そこで私は、平成3年の会長就任の時、70歳にはなっていなかったが、先立って叙勲を辞退した。それぐらい、N響にとってウォルフガング・サヴァリッシュという存在は大きいと思う」(『会長は快調です!』川口幹夫著、東京新聞出版局、1999年;pp.193)
勲三等は旭日中綬章、勲二等は旭日重光章(栄典制度が変わり現在等級は廃止)。日本とゆかりのあるクラシック音楽家への叙勲は旭日中綬章が相場。例外は政財界にファンの多いリッカルド・ムーティ、旭日重光章だった。2018年春の叙勲でNHK交響楽団桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットは相場通りの旭日中綬章。今のNHK会長は何か思ったのだろうか。
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮) NHK交響楽団/ベートーヴェン生誕200年記念ツィクルス1970
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)、NHK交響楽団/ブラームス:交響曲全集