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文化・社会トピック切抜き帖

創立70周年「耐久王」のしたたかさ【ポルシェ2018ル・マンGTEクラス制覇】

2018年ル・マン24時間自動車レースで市販車に近いLM-GTEクラスは創立70周年のポルシェがPro、Am両クラスを制した。

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記念年ということでポルシェはワークス待遇4台のうち2台に特別な塗装を施した。クラス優勝の92号車は1971年大会に出場したピンク色で車体の各所に豚の肉の部位が書き込まれた917/20、通称「ピンクピッグ」と同じカラーリング。御丁寧にもドライバー3人のヘルメット、レーシングスーツまでピンク系に統一した。クラス2位の91号車は1980年代の耐久レースに君臨したいわゆるロスマンズポルシェ(956、962C)を模したもの。この2台のピットにはそれぞれのオリジナル車のイラストが掲げられ、レトロチックに煉瓦の壁紙を張るなどドイツ人らしい細かい仕事ぶりが見られた。

パドック裏のホスピタリティの良さにも定評があるポルシェ。こちらも例年以上に力を入れた様子。

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ポルシェは昔からレギュレーション変更の情報を掴むのがうまいと言われてきた。その背景の一つがジャーナリスト経由の情報。日頃から厚遇することで彼らと良好な関係を築き、いざというときの味方につけていたわけ。

考えてみれば創立70周年なのだからLMP1に留まり、総合優勝を狙う手もあったはず。しかしポルシェはトヨタの伸びを見ていわば「勝ち逃げ」でP1から去り、市販車に近いLM-GTEクラス制覇で最大限の費用対効果を得る戦略に出たと推測する。そのためにミッドシップの911RSRの熟成はもとより「ピンクピッグ」復刻など歴史あるメーカーにしかできないメディアやファンにアピールするアイデアを絡めてきた。結局目論見通りのクラス制覇&Proクラスの1-2フィニッシュ。しかも優勝車は「ピンクピッグ」。したたかな実現力に恐れ入る。ピットには昔からオペレーションを担ってきたノルベルト・ジンガーの姿も。やはりビッグレースを制するにはこういう継続性が不可欠。