アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

井上寿一『第一次世界大戦と日本』(講談社現代新書)

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第1次世界大戦前後の日本の諸相を分析し、以降の行く道に繋がる要素を透かし彫りした1冊。大正のひとたちの概ね的確な情勢対応、見通しに接するとなぜ昭和の日本が破滅に向かったのか理解に苦しむ。ただそれは結果を知っているから言えること。当時のひとたちは現在の我々と同じく結果の見えないなかで進んでいた。結局大事なのは時流の正道を見失わず、アングロサクソンやチャイナは事を構えないこと。#講談社現代新書 #井上寿一 #読書 #日本政治外交史 #第1次世界大戦 #大正時代 #お見通しだった #関東大震災
第1次世界大戦開戦100年の2014年に刊行。なお2018年は終結100年。タイトル通り艦隊派遣、日系カナダ人の義勇兵参加など大戦への直接コミット、講和会議の教訓から国際連盟や国際会議での活動に注力する外交官、政党政治確立までの模索、成金の興隆と社会格差など多面的な切り口で第1次世界大戦前後の日本を描く。現代に通じる課題、それを打開しようとする試みは大正時代に芽生えていた。
興味深いのは大正天皇の御不例で皇太子の昭和天皇摂政に就いたことで皇室と国民の距離が縮まっていたこと。つまり「現人神」ではなくなっていたわけ。この下地があったから昭和の戦争の敗戦後、天皇や皇室がいわばニューファミリーとして表に出てくるあり方が割合すんなり受け入れられたとみられる。逆に言えば昭和の戦争に至る過程で試みられた天皇を中心に国民を統制するスタンスはそもそも無理筋だった。