本作のラストには片山杜秀教授がしばしば指摘する「バーンスタインがコープランドから受けた影響」がはっきりとよぎる。この点があまり日本で話にのぼらないのは2人の「特別な関係」を忌避する気持ちとコープランドの評価が日本で低いため「天才バーンスタインがコープランド程度の作曲家から影響を受けたなんて」という心理だろう。
歴代屈指の大統領と称えられるリンカーンを取り上げた作品ゆえ、ヘンリー・フォンダ(自作自演)、キャサリン・ヘップバーン(カンゼル盤)、サミュエル・L・ジャクソン(ジェイムズ・レヴァイン盤)、ジェイムズ・アール・ジョーンズ(シュウォーツ盤)など錚々たる顔ぶれのナレーションが残っている。変わったところでは湾岸戦争の英雄ノーマン・シュワルツコフ将軍(スラットキン盤)、キャスターの小倉智昭が吹き込んだ日本語音源(レヴァイン盤の日本ヴァージョンとして)もある。
上記画像のグレゴリー・ペックのナレーションのメータ盤は演奏と音質両面でトップ。対訳付き国内盤が結構カタログに留まっている。併録のリヒャルト・シュトラウスの英雄の生涯もエネルギッシュかつ気品を感じさせる充実の内容。半世紀前の収録が信じられないほど立体的で生き生きした優秀録音。
【SHM-CD】プロコフィエフ:ピーターと狼 ブリテン:青少年のための管弦楽入門 コープランド:リンカーンの肖像