《曲目》
第1部「ロシアの響きを聴く」(2台ピアノ)
プロコフィエフ(寺嶋陸也編曲):交響曲第1番「古典」-清水和音&阪田知樹
ボロディン(ポープ編曲):歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」-松田華音&藤田真央
~休憩15分~
第2部「ロシアの名旋律を聴く」(ピアノ・ソロ)
ムソルグスキー(フドレイ編曲):交響詩「はげ山の一夜」-阪田知樹
プロコフィエフ:バレエ音楽「ロミオとジュリエット」から10の小品op.75より
第8曲「マキューシオ」、第10曲「別れの前のロミオとジュリエット」-松田華音
プロコフィエフ:バレエ音楽「シンデレラ」から6つの小品op.102より
第1曲ワルツ「シンデレラと王子」、第4曲ワルツ「シンデレラの舞踏会への出発」、第6曲「アモローソ」-清水和音
☆個々の演奏後にミニインタビューあり☆
~休憩15分~
第3部「ロシアの極みを聴く」(2台ピアノ)
チャイコフスキー(エコノム編曲):組曲「くるみ割り人形」-阪田知樹&松田華音
ラフマニノフ:2台ピアノのための組曲第2番-藤田真央&清水和音
※アンコール※
阪田知樹:「ピーターの思い出」2台ピアノ8手連弾のための〜プロコフィエフの「ピーターと狼 作品67」による (世界初演)-全員
ナレーションと聞き手:山田美也子
リニューアルオープンしたBunkamuraのオープニングシリーズの一環として賑々しく、のはずがやや寂しい客の入り。顔ぶれの面白さを考えると宣伝不足ではないか。
コンサート自体は楽しめた。会の性格上、あれこれごちゃごちゃ書き連ねるのは野暮なので個々のピアノストと全体の感想を簡単に。
清水和音・・・音の作り方のうまさ、響きからわき立つ豊かな光。奏者としての器の大きさを存分に見せた。かつてFM「クラシックリクエスト」で聞かせた辛口のユーモアがのぞく話術も健在。もっと演奏活動を増やして欲しい。
清水和音(ピアノ)+菊地裕介(ピアノ)/ラフマニノフ: 2台ピアノのための組曲第1番「幻想的絵画」 Op.5, 第2番 Op.17, 他
阪田知樹・・・作品解析能力、音楽の立体感は図抜けている。アンサンブルプレイヤーとしても硬軟の出し入れが巧み。アンコール用トランスクリプション「ピーターの思い出」は大労作。
松田華音・・・鋭い打ち込み、指の分離と回転スピードの高い性能。重箱の隅をきちんと掃除する。ロシアものには最良のキャラクター。
藤田真央・・・フィギュアスケートの浅田真央の演技で有名になった「仮面舞踏会」のワルツを同名のピアニストが弾くとは。流麗に運ばれる稜線のしなやかな音楽はそれだけで魅力十分。なよついた喋りが玉に瑕。
上記の通り演奏面では4人それぞれがアンサンブル、ソロで自身の良いものをしっかり発揮。アレンジ物は編曲者毎のサウンドポリシーの相違が耳で感じ取れて面白かった。またラフマニノフの組曲第2番の蠱惑的美しさを再認識。アンコール含めてほぼ予定時間内で収め、周到な準備が覗えた。
個人的に嬉しかったのは当方が一番クラシックに燃えていた頃、FM生中継「N響演奏会」の案内役だった山田美也子の生声を聴き、御姿も拝見できたこと。このひとの声に導かれ、幾多の名演に出会った。清水和音を初めて聴いたのも1997年2月19日のFM生中継。オラシオ・グティエレスの代役でブラームスのピアノ協奏曲第2番。いま以上に物知らずだから「急に言われてこんな長くて難しい曲弾けるんだ」「協奏曲で4楽章ある」とか他愛ない事柄に興奮したのを思い出す。
現在形の名手たちの技に触れながら、過去の記憶がよぎった素敵な3時間。長丁場の割に疲労感はなく、後味の気持ちいいコンサートだった。
※文中敬称略※