八坂公洋はトルドー現・カナダ首相、2015年ショパンコンクール第2位シャルル・リシャール=アムランなどを輩出したカナダの最高学府マギル大学出身のピアニスト。モントリオールを拠点に活動している。近現代の音楽や日本人作品の演奏をライフワークとし、2014年にはファーストアルバム「和のかたち~邦人作曲家ピアノ曲集」をリリースした。
https://www.kimihiroyasaka.com/
そして去る3月に6年ぶりのセカンドアルバムを送り出した。
こちらがイメイジビデオクリップ。青基調のビジュアルにひかれる。
八坂公洋「モザイク 近現代ピアノ曲集」Kimihiro Yasaka - Mosaïque (Album Trailer)
八坂の最大の魅力は色彩表現。ベタっと絵の具を塗るのでなく透明な枠組みの中に明暗陽陰を輝かせる。あたかもシャボン玉の表面に光が当たった時のように。この能力が各楽曲が持つ特徴を際立たせ、生まれたばかりの音楽を受容するための最良の材料を聴き手に示す。もちろんドビュッシー、中田喜直といった歴史上に位置する作曲家の音楽に対するアプローチも巧みで収録作品同士がおのずから響き合い、アルバムとして一つの調和を形成している。
本アルバムに関して八坂公洋本人からコメントを頂戴したので最後に御紹介する。
八坂公洋からのコメント
アルバムに込めた思い
聴き手と現代音楽の距離を縮めたい気持ちがありました。楽曲同士の関係性、音の動きや持ち味のからまりをくさりのような感覚で連ねています。また先年他界した祖母と現在なお健在の祖母の2人の個人的な要素も入れました。ハーマンの「キミヒロのためのファンファーレ《瑠璃》」(健在の祖母の名前からきています)や裏ジャケットに写した貝にちりめんを合わせた細工(他界した祖母の作品)がそうです。同時代作品の間にドビュッシー、中田喜直という歴史上の存在を交えた時代的要素に先述したパーソナルな要素を融合させたいと考えました。
制作にあたって
FACTORというカナダ在住もしくは出身のレコーディングアーティストを後援する財団の支援により制作できました。録音にあたっては存命の作曲家に関しては極力演奏を聴いてもらい、意見を求めるようにしています。意見交換できる面白さがあるのはもちろん、クラシック音楽は再現芸術ですので、演奏家の抱くイメージと作曲家のそれの間にあるひずみ、ずれを埋め理想的な音源を残したいですから。
個々の作品について申し上げると例えばゼミソンの「山・桜・花」は百人一首からインスピレーションを受けて作られた音楽でカナダ人の視点から見た日本という興味をそそられますし、前述のハーマンの「瑠璃」はトイピアノが入ります。タイトルの「モザイク」の通り様々な要素をひとつのアルバムに封じ込めました。
※文中敬称略