クラシックを聴き始めて間もなく、学校帰りに図書館へ通いつめてピエール・ブーレーズ指揮、バイロイト祝祭管弦楽団によるワーグナーの楽劇「ニーベルンクの指環」(パトリス・シェロー演出)のLDを見た。
ひんやりしたエッジの鋭い響き、無駄を排したモダンな演出、がなりたてずスッキリしたフォームの歌唱が身体にスッと入ってきてワーグナー好きの一歩を踏み出した。
当時(1990年代終盤)ブーレーズはドイツ・グラモフォンからラヴェル、ストラヴィンスキー、マーラーなど次々とCDを出していた。こちらも図書館で聴いたが感銘を受けたワーグナーとは印象が異なった。見通しのよい、どこか小奇麗な響き。確かに細部まで整っていたがあまり刺さってこなかった。一方、やはり図書館にあった1970年代のソニー録音のラヴェルなどは明晰を極める尖った音楽で目の覚める思いがした。以降ブーレーズの録音は旧いものがいいと考えてきた。
先日NHK-FMで偶然ブーレーズ指揮、クリーヴランド管弦楽団によるベルリオーズの幻想交響曲のドイツ・グラモフォン録音を聴いた。サンドペーパーで研いだザラリとした質感の怜悧なサウンドが展開、鳴り物打ち物の抉りもきいている。フィナーレの鐘の音は妙に澄んだ音色でかえって身震いする。この録音はかつて聴いたはずだがまるで印象に残っていない。歳を取って昔、聴き取れなかったブーレーズ晩年の壮年期と異なるデリカシーを感じられるのだろう。嬉しい話。
ワーグナー:楽劇《ヴァルキューレ》/ピエール・ブーレーズ、バイロイト祝祭管弦楽団<DVD>
グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラ、ピエール・ブーレーズ(指揮)/ワーグナー:楽劇≪トリスタンとイゾルデ≫第1幕への前奏曲 シェーンベルク:交響詩≪ペレアスとメリザンド≫
Pierre Boulez Conducts Ravel(SONY)
Pierre Boulez Conducts Ravel&Debussy(DGG)
ブーレーズ指揮、ロンドン交響楽団/ベルリオーズ:幻想交響曲&レリオ
Pierre Boulez(cond), Cleveland Orchestra/Berlioz:Symphonie Fantastique(DGG)