アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

第79回読書週間(2025年〔令和7年〕10月27日~11月9日)に読んだ本

1947年(昭和22年)に始まった読書週間

文化の日を挟む2週間と定められ 開始日の10月27日は「文字・活字文化の日」となっているそうだ

公益社団法人 読書推進運動協議会

敗戦の痛手が色濃く残る状況で 文化と心の復興を目的にスタートしてから

80年が近づいている

長嶋 茂雄『野球へのラブレター』(文春新書)

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『野球にときめいて 王貞治 半生を語る』(中公文庫)

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誰だったか「語りたくなるバンドと沈黙したくなるバンドがある」とか

スポーツも同様 野球は伝説の名手から居酒屋で唸る「監督」まで

みんなが語りたくなるスポーツの典型

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『邱飯店交遊録 私が招いた友人たち』(中公文庫)

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直木賞作家にして「お金もうけの神様」は

粋な通人でもあった

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余録 第78回読書週間(2024年〔令和6年〕10月27日~11月9日)に読んだ本

 

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『古くて素敵なクラシック・レコードたち』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター

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2024年(令和6年)10月25日 / 大井駿(指揮者)トーク&レクチャー

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略歴

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大井駿 | アーティスト | 株式会社AMATI

要約

2025年3月2日に読売日本交響楽団とオール・チャイコフスキープログラムで共演予定の指揮者の大井駿が、主催者のプレ企画としてトークセッションを行った。

前半は自身の経歴や留学時代の回想、後半は取り上げるピアノ協奏曲第1番(初版)と交響曲第6番「悲愴」に関する話題がテーマ。また大井駿はピアニストでもあることから、合間にピアノ演奏を2曲披露した。
トークは終始落ち着いた口調でテンポよく進行。繊細で多面的なチャイコフスキーの作品をスコアはもとより、書簡などの資料から得た要素も生かして、真摯に再現したい意思がうかがえた。

チャイコフスキー: ピアノ第1番(初版)について

ソリストの務川慧悟とのやり取りのなかで浮上した

ピアノ・指揮兼任で初演したハンス・フォン・ビューローを尊敬しているので その時の形でやってみようと

ピアノの出てくるところが 現行版の分厚い和音ではなくアルペジオなのが最大の相違点

どうしても軍楽調に傾きやすい曲だが チャイコフスキーは繊細な作曲家 その特徴はこの初版によく出ている

チャイコフスキー: 交響曲第6番「悲愴」について

初演後まもなく作曲者が亡くなったので色々なアネクドートが語られるが

そういったものにとらわれず あくまで作品を聴き手に伝えるインタープリターでありたい 楽器の持ち味 色彩を生かした表現を追求する

チャイコフスキーは 「悲愴」と同時期にピアノのための18の小品を書いている 多様な表情の作品が並ぶ傑作で  決してある特定の感情が支配していたわけではないことが推測できる

長いフレージング 繊細なカンタービレを尊びながら 停滞しないテンポでいく

【ピアノ演奏曲目】

チャイコフスキー: 四季より10月

ブルックナー: 秋の夕暮れの静かな想い

中川 直によるエピローグ

最後に質疑応答の時間があり、私からの質問に答えて下さった。

オーケストラの配置は 終楽章の冒頭を考えれば作品がヴァイオリン対向配置を想定しているのは明らかだが それでアンサンブルになることが重要 今回リハーサルの時間が少ないので熟考したい

表現上の「隠し味」的工夫についても いま考えていることはあるが これもリハーサルの時間を踏まえてどうするか考えたい

大井駿は、ザルツブルク留学時代に師事したブルーノ・ヴァイルが「ファクシミリ」「初版の楽譜」「作曲家の書簡」を検討する姿勢に大きな影響を受けたという。

碩学の新鋭が、いま日本で最も安定した演奏能力を誇るオーケストラと繰り広げる音楽世界が楽しみだ。

※文中敬称略

※本公演チケットは完売

【大画面でオペラ映像鑑賞】レヴァイン指揮「カルメン」(1987)「ワルキューレ」(1989)

クラシック専門のアンティークショップ「ishii classic」は主宰者の保存するオペラの録画映像を大画面で上演する催しを定期的に行っている。

www.ishiiandassociates.jp

私が足を運んだのは2024年5月27日(月)と6月10日(月)の回。

鑑賞したのはいずれもメトロポリタン歌劇場のライヴ収録映像で、1975年から2017年まで同歌劇場の音楽監督もしくは芸術監督を務めたジェイムズ・レヴァイン(1943~2021)の指揮。

ビゼー:歌劇「カルメン」(1987年ライヴ収録)

1982年のカラヤン指揮のセッション録音から5年後のバルツァとカレーラスの顔合わせによるカルメン。当時40代前半のレヴァインのキレのいい音楽運び、豪快に吹かすところと静かに歌わせるシチュエーションの使い分けの巧みさが奏功し、歌手が歌唱と演技両面で実力を存分に発揮している。

バルツァ、カレーラスとも眼の動きや口元の緊張と緩和で心の動きを明確に表現。

第1幕の2人の「見初め」に始まり、ミカエラとドン・ホセのやり取り、第2幕の酒場でエスカミーリョが登場してからのカルメンの変化、第3幕・第4幕と暗い悲劇に向かう心理の影をくっきり表現する。

こういう優れた演技力の歌手で観ると「カルメン=悪女、ドン・ホセ=純朴」「カルメン=自由、ドン・ホセ=旧習から抜け出せない」などと単純には括れない人物像やドラマの奥行きが浮かぶ。

カレーラスのドン・ホセはカルメンの前では胸を張るが、ミカエラが現れて母親の話をした途端、しょぼくれた顔のマザコン男に成り下がる。

後半、行きがかりで密輸団の一員になってまでそうなのだ。これではカルメンの心が離れるのも無理ないし、「ミカエラと結婚して母親の側で暮らす」がお似合いの生き方なのに「オレはこんなはずじゃない」とイキがる様子はいささか滑稽ですらある。

一方のカルメンは、置かれた境遇からすれば「自由」というよりこの生き方以外ない「現実」を受け入れている。

ラストでドン・ホセに指輪を投げ返す時のバルツァの表情には「貴方もここで現実を受け入れて、分相応の生き方をなさい」との深み、苦渋が漂っていた。しかし、ドン・ホセは「本当の自分」の妄想から抜け出せず、「現実」を排除して幕となる。

いまのご時世でも男女のこのパターンはしばしばある。そうした「現代性」を変な読み替えではなく、歌手の演技で観る側に想像させるのが真に高水準の上演だと私は考える。

ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」(1989年ライヴ収録)

上記 Instagram投稿の通り、歌手陣の好演とレヴァインのまとめ方の妙が光る。

とりわけノーマンのきめ細かい声のコントロール、ベーレンスの第2幕後半から実質的にドラマを引っ張っていくレンジの広い歌唱と演技はずば抜けている。

レヴァインの指揮がカルメン同様高水準で各パートの出し入れに長け、吹かし込んでもごちゃつかず、静かな場面では背後の動機の絡みを明瞭に音化する器用さをみせる。

晩年、長年暗黙の了解だった性的非行が明るみに出され、楽壇を追われたレヴァインだが、歌手を生かしつつ、音楽のドラマに分かりやすく柔軟に絵の具を施す手腕は間違いなく演奏史に残る水準だった。

2024年(令和6年)1月28日(日) / 町田 樹講演会「本と生きる、本を書く」

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【要約】

「本を読む私」「フィギュアスケートと本」「本を書く私」の3部構成の講演。

「本を読む私」では小説からのインスピレーションがもたらしたもの、知識同士のつながりの重要性、自身の本の選び方を語った。

フィギュアスケートと本」はタイトル通り現役時代のプログラムを振り返りつつ、演技作りの本質が「アダプテーション(翻案)」にあると話した。

結びの「本を書く私」では一般書、学術書の間にある執筆過程の違いと共通項を説明した後、本が社会に果たす役割について論じた。

1時間30分の枠でうち1時間15分が講演、質疑応答15分の予定と告知され、実際その通りに収まった。

現役時代のニックネーム「氷上の哲学者」と異彩を放ったプログラム、解説の語彙のパレット、やや斜めに立つスタイルなどのイメイジを抱いて出かけたが、明快な話しぶり、質疑応答における丁寧な対応など、上品で知性あふれる人物だと感じた。

「本を読む私」

町田樹氏は「本を読みます(本が好きです)」と言うとよく交わされる話題、質問として以下の4点を挙げてそこから話を展開した。

  • 本を読むようになった理由→小学生時代にお母様から日々学んだ作品などを音読するよう言われ、毎日繰り返される「行事」を退屈にしないため、登場人物の気持ちを想像したり、自身に置き換える習慣がついた。
    成長するとミステリー中心に小説を多く読むように。後のプログラム作りのもとになるイマジネーションが形成。
    読書の楽しみの一つがイマジネーション。逆に小説の映画化で「違和感」を覚える場合は、個々の持つイマジネーションと目の前の映像に「ズレ」を認知した場合だと考えられる。
  • ジャンル→幅広く読む。蔵書は約2,000冊。知識は繋がっているもの。イノベーションは白紙から何か湧いて出るものではなく、既存の材料を結び付けた結果生まれたケースが殆ど。視野を拡げ、知の連携のため幅広いジャンルを読むことに利がある。
  • 本の選び方→
    ①作家・テーマで
    ②ランダムチョイス(CDで言うところのジャケ買い
  • 影響を受けた本→「チームバチスタの栄光」シリーズ
    思春期の頃、本シリーズを含む小説の人物との「出会い」から生かせる要素を見つけて自己を形成した(それが「個性的」と言われる理由かもと仰っていた)。

フィギュアスケートと本」

アダプテーション(翻案)が自身のプログラム創作の本質と話した。

アダプテーションの例としてグリム童話→ディズニーアニメ「白雪姫」を挙げている)

具体的に東野圭吾白夜行』からインスピレーションを得る→ドラマのサウンドトラックの検討→町田樹のプログラムの順に過程を説明し、実際の演技映像を見せてくれた。

「本を書く私」

学術書→専門性・詳細さ

一般書→普遍性・分かりやすさ

一方でひとつの本が成立する道のりは割と似ていて、学術書が論文の積み重ねから構築していくのに対して、一般書は雑誌・サイト等の連載(これは締切に追われる厳しさはあるものの、本を成立させる手段として一番やりやすく収入面でも助かると率直に話しておられた)やコラムの積み重ねで編まれるケースが多い。つまり積み重ねがオーソドックスなやり方と言える。

結び

書籍は他のメディアと並べた時、信頼性(編集過程でひとの目が入るし、出版後でも重大な問題があれば訂正もしくは絶版になるから、信憑性の乏しい情報の拡散がある程度止められる)、公共性(国会図書館に代表されるライブラリーで長く残る)、リーズナブル(手間のかかっている割には決して高くない)の面で優れている。

複雑な事柄を単純化して歪めずに解きほぐせる媒体はいまのところ本以外見当たらない。他方瞬発力の点で活字が不利なのは事実。映像なら一瞬で伝えられるから。題材、用途に合わせた媒体の使い分けが大切。どちらと偏る話ではない。

また書籍は色々なメディア発信のベースを成すもの。従って出版の衰退はそうした基礎の喪失であり、社会にとって大きな危機になりかねないと考えている。

中川 直によるエピローグ

2014年ソチオリンピックと世界選手権における「火の鳥」、同年12月の日本選手権の「第九交響曲」など町田樹氏は、私にとって「記録より記憶」のスケーター。

研究者、大学教員に転身後もテレビ解説で聞かせる他者とは違う切り口、論理構成のコメントが印象深く、失礼をお許し願えれば「クセの強いひと」だとみなしてきた。

今回の講演でそれは少々覆された。確かに並外れた学識と感性の鋭敏さから発する言葉は「独自性」に富むが、論旨は明確で話の組み立て方、時間管理も巧みだった。

最後の質疑応答は優しい言葉で受け答え。

私は幸運なことに男性の聴衆が少なかったので指してもらえた。

町田氏が監修した『フィギュアスケートと音楽』(音楽之友社)の企画、編集過程について質問し、

音楽之友社から監修を打診され、目次と企画書を出したこと。

・編集者と何度かやり取りして目次が固まった後は、8割方自ら執筆。

・重層的題材を扱うのに活字は好適だが、反面視覚や聴覚が基盤のものを言葉で表す難しさも感じた。

と丁寧に応じて下さった。

町田氏と私は10歳違うが、学識や感性はともかく、物の考え方、本はきれいに持ち続けたいところなど共通面も結構あって楽しく聞けた。

氏はもとより企画者に感謝したい。

ちなみに町田氏は学術論文を読むのはタブレットだが、書籍は完全紙派だそうである。

2024年1月14日(日)/ ザ・シンフォニカ 第75回定期演奏会

ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:海老原光

~曲目~

エルガー:創作主題による変奏曲《エニグマ》から第9変奏「ニムロッド」(故・飯守泰次郎に献奏〔拍手なし〕)

エルガー:演奏会用序曲「コケイン(ロンドン・タウン)」

ブリトゥン:歌劇「ピーター・グライムズ」より4つの海の間奏曲

-休憩-

ウォルトン交響曲第1番

英国音楽の傑作を堂々と

ザ・シンフォニカは35年以上の歴史を持つアマチュアオーケストラで年に2回、内容の濃いプログラムの演奏会を開催している。

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本公演は上記の通り、英国の傑作が並ぶプログラム。

日本は本国以外で最も英国音楽が愛されている国だと思うが、演奏家にとってはなかなか大変な曲目ばかり。

金管、打楽器の技術的難易度が高いことに加えて、例えば同時代のリヒャルト・シュトラウスならススッと進むところを、何となく行きつ戻りつしながら起伏が形成される特有の波長に「乗っていく」難しさがあり、縦の線やバランスの決めにくいポイントも結構多いのだ。

今回、ザ・シンフォニカは全体にシャープネスのきいたサウンドで楽想の浮き沈みをくっきり描いた。

「コケイン」は早めのテンポで凝集感のある音楽。静と動の切り替えがきっちりしていた。

ブリトゥンは凹凸の処理がうまく決まり、第4曲の総力戦も骨格の見通しを保ってやり抜いた。

ウォルトンシベリウスマーラーアマルガム的作風で、山と谷のつけ方がやっかいだが、ホルンの充実を軸に強靭なアンサンブルが構築され、楽想の推移を明確に響かせる。フィナーレ終盤、パート間の出し入れの難しい箇所で管打が大健闘していた。

演奏会冒頭、楽団に複数回客演し、指揮の海老原光とも縁の深かった飯守泰次郎への追悼演奏が捧げられた。

飯守泰次郎と英国音楽・・・と考えた時、随分前にテレビ視聴したホルストの「惑星」が頭に浮かんだ。ちょっとクセのある棒捌きで多少の乱れに頓着せず、グイグイ牽引する姿を懐かしく想い出した。

※文中敬称略

【参考ディスク】

【2024年(令和6年)1月13日】2023年10月中旬以降鑑賞公演まとめ

あけましておめでとうございます

新年早々災害や事故が相次ぎ 胸の痛む日々が続いています

苦しい状況に置かれている皆様 お見舞い申し上げます

どんな投稿から始めるか 正直迷いました

表題の通り 2023年終盤に行った公演を写真で振り返ります

10月13日(金)Tiara Monthly Concert Vol.244「伝承の調べが紡ぐ世界」

メインプログラムは、1920年初頭に北原白秋が英国の「マザーグース」を翻案に近い形で訳出した「まざあ・ぐうす」を、打楽器奏者・作曲家の會田瑞樹が音楽つき舞台にしたもの。

約1時間の長尺だが、芸達者な歌い手・語り手の奮闘により、明暗の交錯する多面的な詩の世界を面白く可視化した。いくつかの場面を抜粋できそうなので、部分的再演は早期に十分望める。

11月5日(日)吉例顔見世大歌舞伎夜の部

11月25日(土)京都市交響楽団 第684回定期演奏会

12月7日(木)東京交響楽団 第137回東京オペラシティシリーズ

12月20日(火)Moonside Xmas late Show 2023

過去にも取り上げた友人の音楽家・黒田玲兎のバースデーイヴェント。

choku-tn.hatenablog.comLoki、Seth(Moi dix Mois)の排気量は図抜けていた。
レジョン・ルイとSHIGの繊細な声感覚も耳に残る。
黒田玲兎はもとより、ドラムの上岡憲外も出ずっぱりで下支え。大拍手。

12月22日(金)弓代星空 (violin & vocal)Eternal Starlight"Christmas 2023"

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背筋の伸びた佇まいの音色が美しかった。これは歌も同様。

変にクネクネせず、腰の座った品のある情感の込め方に好印象を抱いた。

全てのアーティスト、表現者に感謝。

※文中敬称略

【My favorite things special】2023年クラシック音源私的ベスト10

本年もスロー更新のなか、御覧下さった皆様ありがとうございました。

昨年同様、クラシック音楽の音源からマイベスト10を(順不同・敬称略)。

トーマス・ダウスゴー(指揮)、ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団 / ブルックナー交響曲第4番〔1878・80年稿〕(BIS)

尖鋭なサウンドでメリハリよく運ばれる。いたずらに重くせずに作品のスケール感の可視化に成功。オーケストラのピシっと締まったアンサンブルも貢献している。

最近の同曲録音では異稿異版により新味を出そうとするものが目立つが、いわゆる普通の「原典版」を使いながら清新な表現を成し遂げたこのコンビはあっぱれだ。

日本語帯・解説付

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)、BBC交響楽団ロンドン交響楽団 / ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」(抜粋)、スクリャービン:法悦の詩(ICA CLASSICS)

読売日本交響楽団の名誉指揮者として日本で親しまれた才人の真価を刻印したライヴ録音。英国のオーケストラが変幻自在の棒捌きに応え、めくるめく響きのカレイドスコープをくりひろげる。静から動への展開の妙が耳をひく。音質良好。

尾高忠明(指揮)、大阪フィルハーモニー交響楽団 / エルガー交響曲第2番(オクタヴィア)

若干ゴツゴツした起伏の懐の深い音楽作りが曲想に合っている。大阪フィルハーモニー交響楽団のアンサンブル、個々の質感の洗練度が高いのも立派。

秋山和慶(指揮)、広島交響楽団 / チャイコフスキー:後期交響曲集・管弦楽曲集(東武レコーディングス)

先に発売されたベートーヴェンブラームスより若干収録年代が後のためか、オーケストラの安定感が増し、音質もいい。きっちりしたテンポを軸にした正攻法で時折さりげない揺さぶりが入る。安っぽい感傷におぼれず、品の良さを保つのはこの指揮者らしい。「デンマーク国歌による祝典序曲」など珍しい曲も含む。

安永徹(リーダー)、市野あゆみ(ピアノ)、オーケストラ・アンサンブル金沢 / モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番、ハイドン交響曲第88番「V字」(ナミレコード)

演奏内容以前に選曲がいい。古典派音楽の好きな方なら間違いなく手が伸びる組み合わせ。各パートが立体的に位置づけられた音楽がきびきびと動き、室内管弦楽団を聴く喜びが横溢する。

野島稔(ピアノ)、山田一雄(指揮)札幌交響楽団 / ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番ほか(キングインターナショナル)

日本楽壇の重鎮ピアニストでありながら、録音の少ない奏者だったのでこのリリースは驚き、喜んだ。山田一雄の骨太で生気に富むバックのもと力強いコントロールが冴える「皇帝」は際立つ内容。

野島稔の芸術(キングインターナショナル)

上記の好評を受けてリリースされたソロリサイタルの未発表ライヴ録音。シューマンの交響的練習曲が圧巻。

佐藤晴真(チェロ)、久末航(ピアノ)/ メンデルスゾーン作品集(ドイツグラモフォン)

俊英チェリストのサードアルバム。音楽への誠実さが清々しい。まずきちんと再現することに徹した結果、澄んだ詩情や憂いが浮かび上がる。

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)/ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番、第23番(ドイツグラモフォン)

「ザ・ロスト・テープス」なる新シリーズ。巨匠晩年の収録で編集が済む前に奏者が世を去った。行き届かない部分はかなり目につくが、随所から湧いてくる、壮者も裸足で逃げ出すエネルギー感と強靭な歌い込みには敬服する。

UHQCDxMQA-CD

ジェシー・ノーマン(ソプラノ)/ 未発表録音集(デッカ)

先述のシリーズのパイロット版風に登場したセット。オペラ、歌曲の両面で大歌手の表現領域の広さ、卓越したコントロール術を堪能できる。この種のセットにありがちな凹凸がなく、いずれも聴き応えある。共演指揮者ではやはりレヴァインとの相性が良好。