指揮:海老原光
~曲目~
エルガー:創作主題による変奏曲《エニグマ》から第9変奏「ニムロッド」(故・飯守泰次郎に献奏〔拍手なし〕)
エルガー:演奏会用序曲「コケイン(ロンドン・タウン)」
ブリトゥン:歌劇「ピーター・グライムズ」より4つの海の間奏曲
-休憩-
英国音楽の傑作を堂々と
ザ・シンフォニカは35年以上の歴史を持つアマチュアオーケストラで年に2回、内容の濃いプログラムの演奏会を開催している。
本公演は上記の通り、英国の傑作が並ぶプログラム。
日本は本国以外で最も英国音楽が愛されている国だと思うが、演奏家にとってはなかなか大変な曲目ばかり。
金管、打楽器の技術的難易度が高いことに加えて、例えば同時代のリヒャルト・シュトラウスならススッと進むところを、何となく行きつ戻りつしながら起伏が形成される特有の波長に「乗っていく」難しさがあり、縦の線やバランスの決めにくいポイントも結構多いのだ。
今回、ザ・シンフォニカは全体にシャープネスのきいたサウンドで楽想の浮き沈みをくっきり描いた。
「コケイン」は早めのテンポで凝集感のある音楽。静と動の切り替えがきっちりしていた。
ブリトゥンは凹凸の処理がうまく決まり、第4曲の総力戦も骨格の見通しを保ってやり抜いた。
ウォルトンはシベリウスとマーラーのアマルガム的作風で、山と谷のつけ方がやっかいだが、ホルンの充実を軸に強靭なアンサンブルが構築され、楽想の推移を明確に響かせる。フィナーレ終盤、パート間の出し入れの難しい箇所で管打が大健闘していた。
演奏会冒頭、楽団に複数回客演し、指揮の海老原光とも縁の深かった飯守泰次郎への追悼演奏が捧げられた。
飯守泰次郎と英国音楽・・・と考えた時、随分前にテレビ視聴したホルストの「惑星」が頭に浮かんだ。ちょっとクセのある棒捌きで多少の乱れに頓着せず、グイグイ牽引する姿を懐かしく想い出した。
※文中敬称略
【参考ディスク】