アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

My Favorite Things:猪谷千春『IOC』【オリンピックを巡る不思議な世界】

1956年コルティナダンペッツォオリンピック男子回転の銀メダリストで引退後は保険業界に転じて活躍した一方、IOC委員を約30年務めた猪谷千春(1931-)氏が半生を振り返りつつ、IOCとオリンピックの舞台裏を分かりやすい文章でつづった1冊。

IOCの役割、そのなかにいるIOC委員の生態、時代の推移とともに変化していったオリンピックの内実、サマランチ会長が推し進めた商業化・プロ化の光と影、長野五輪など一般によく分からなかったり、イメイジで語られがちなところを明確に描いているのはさすがインサイダー。もちろん当事者だし現在もIOC名誉委員なので擁護的記述はあるものの暴露趣味に陥っていない分、かえって信頼感がある。インドアスポーツのいくつかを夏季五輪から冬季五輪に移して夏季のイスを空けるという提案は面白い。

オリンピックの競技以外の部分に興味がある方にうってつけの書。