日本の音楽雑誌に載るインタビュー記事の殆どはつまらない。
なぜならば聞き手が質問したいことを質問していない、インタビューされる側も本当に話したいことを話していないから。
例外はROCK AND READくらい。
特にクラシックのそれは惨憺たるもの。ワンパターンの質問ばかりが繰り返され、答えまでいくつかのパターンから選んだような内容になりがち。
クラシック音楽に対する人々の関心が一過性のブームを除くと低調な背景の一つは伝えられる音楽家の言葉が平板でひとを引き付けられない、それどころか逆に「クラシックの音楽家ってもったいぶってるばっかりでつまらないじゃん」と思われてしまうことが挙げられる。
しかし指揮者・水野蒼生(7月2日に本ブログで取り上げたクラシック音楽の鍵を開ける!【指揮者・水野蒼生とO.E.T】 - アフターアワーズ)に対して最近行われた2本のインタビュー記事は全く違う。聞き手が質問したいことを丁寧かつ系統的に問いかけ、答える水野も自身の話したいことを質問の意図に沿いながら洗いざらい話している。
1本目はヴュルツブルクに留学中のトランペット奏者、齋藤友亨氏によるもの。水野の音楽的半生を欧州留学という観点から照射している。葛藤、対立、挫折、前進と包み隠さず、それでいて品のある一本筋の通った語り口なのが面白く読みごたえある。
なお齋藤氏が留学するヴュルツブルクはモーツァルトフェストで有名な都市。
ラファエル・クーベリック/モーツァルト:フェスティバル・イン・ヴュルツブルグ/ラファエル・クーベリック、バイエルン放送交響楽団 - TOWER RECORDS ONLINE
グウィン・ハウエル/Mozart: Der Schauspieldirektor, Symphonies No.35, No.28 - TOWER RECORDS ONLINE
2本目はライターの跳ねる柑橘氏の記事。こちらは現在水野が心血を注ぐO.E.Tとクラウドファンディングについてがメイン。
聞き手の水野に対する敬意、共感が素敵で水野はすっきりした言葉で自らのプロジェクトの狙いと内容を明快に語っている。読んだら誰もが水野のファンになり、クラウドファンディングに関心持つと思う。
水野に関しては本ブログでも載せた日経スタイルの記事が大反響を呼んでいる。
日本脱出の指揮者 クラウドファンディングで国内始動|エンタメ!|NIKKEI STYLE
この記事は短いながら真摯に書かれた内容の濃いものだがやはり大手メディアのため若干の制約があり、水野のメッセイジがやや丸められている。
もし水野蒼生とその音楽に少しでも興味がわいたなら今回登場した2本のロングインタビューに目を通してほしい。そして「このひと面白い!」「演奏聴いてみたい!」と感じたらぜひクラウドファンディングのサイトに足を延ばして頂きたい。水野が開ける扉の向こうにはクラシック音楽の美しい地平線が拡がっている。
※文中一部敬称略