アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

【Hatena Blogお題より】秋の夜長に読みたい本

今週のお題「読書の秋」

春夏秋冬本を読んでいる身としては「読書の秋」で特別何か読もうとは考えないが、面白そうなので「読書の秋」と聞いて思い浮かぶタイトルを挙げてみた。

1.ジェフリー・アーチャー著、永井淳訳『ケインとアベル上・下』(新潮文庫

エンタテインメント小説の帝王の最高傑作。アメリカを舞台に対照的な出自の2人の人生行路を洗練された文章で起伏豊かに描く。著者の持ち味である登場人物の設定、キャラクター付けの巧みさ、キレのある展開が魅力。イングランド人の著者から見た移民、アメリカンドリームの国の描写も面白い。

2.猪瀬直樹『黒船の世紀』(小学館

日本の近現代の伏流水に光を当てさせたらこのひとの右に出るものはいない。日露戦争後、日米双方で刊行された「未来戦記」から真珠湾攻撃までの日米の世論、市井の精神状況を読み解き、日本人にとって「黒船(=外圧)」とは何か考察する。

3.長谷川郁夫『吉田健一』(新潮社)

からみつく文体が癖になる文士、吉田茂元首相の子息、身体に流れる若き日の英国の日々、挿話の詰まった文壇での交遊・・・どこを取っても一筋縄ではいかない大人の評伝。明快かつ重層性があり文学者を描いた評伝の数少ない成功作。

4.阿川弘之座談集『文士の好物』(新潮社)

旧海軍軍人としての矜持、簡潔で品格漂う引き締まった文体、復古にも進歩にも浸らず背筋を伸ばして歩んだ佇まい。戦後日本文壇最高の偉人、阿川弘之は今や「阿川佐和子のお父さん」になってしまった。本書は「最後の文士」の口語においても非凡だった面を伝える。なかでも向田邦子高松宮妃殿下との稜線の深いやり取りは格別の読後感。

5.リチャード・ミルハウス・ニクソン著、徳岡孝夫訳『指導者とは』(文春学藝ライブラリー)

元アメリカ大統領が公職として向き合った政治指導者の分析と自らの経験を交えて著したリーダー論の傑作。チャーチル、ドゴール、フルシチョフ、アデナウアー、マッカーサー吉田茂周恩来を取り上げて生々しいやり取りとともに各人の指導者像を鋭く描く。抽象論は一切なく体温の感じられる具体的な切り口の文章で一貫し、通して読めばリーダーの資質、権力者の心理とは何かが身体に入ってくる。実のところ岡義武などは例外だが日本ではびこる政治家論、リーダー論の殆どは本書の受け売り。程度の低い本や新聞・雑誌記事だと出典なしにパクっているケースすらある。