アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

【My favorite things special】2023年クラシック音源私的ベスト10

本年もスロー更新のなか、御覧下さった皆様ありがとうございました。

昨年同様、クラシック音楽の音源からマイベスト10を(順不同・敬称略)。

トーマス・ダウスゴー(指揮)、ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団 / ブルックナー交響曲第4番〔1878・80年稿〕(BIS)

尖鋭なサウンドでメリハリよく運ばれる。いたずらに重くせずに作品のスケール感の可視化に成功。オーケストラのピシっと締まったアンサンブルも貢献している。

最近の同曲録音では異稿異版により新味を出そうとするものが目立つが、いわゆる普通の「原典版」を使いながら清新な表現を成し遂げたこのコンビはあっぱれだ。

日本語帯・解説付

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)、BBC交響楽団ロンドン交響楽団 / ベルリオーズ:劇的交響曲「ロメオとジュリエット」(抜粋)、スクリャービン:法悦の詩(ICA CLASSICS)

読売日本交響楽団の名誉指揮者として日本で親しまれた才人の真価を刻印したライヴ録音。英国のオーケストラが変幻自在の棒捌きに応え、めくるめく響きのカレイドスコープをくりひろげる。静から動への展開の妙が耳をひく。音質良好。

尾高忠明(指揮)、大阪フィルハーモニー交響楽団 / エルガー交響曲第2番(オクタヴィア)

若干ゴツゴツした起伏の懐の深い音楽作りが曲想に合っている。大阪フィルハーモニー交響楽団のアンサンブル、個々の質感の洗練度が高いのも立派。

秋山和慶(指揮)、広島交響楽団 / チャイコフスキー:後期交響曲集・管弦楽曲集(東武レコーディングス)

先に発売されたベートーヴェンブラームスより若干収録年代が後のためか、オーケストラの安定感が増し、音質もいい。きっちりしたテンポを軸にした正攻法で時折さりげない揺さぶりが入る。安っぽい感傷におぼれず、品の良さを保つのはこの指揮者らしい。「デンマーク国歌による祝典序曲」など珍しい曲も含む。

安永徹(リーダー)、市野あゆみ(ピアノ)、オーケストラ・アンサンブル金沢 / モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番、ハイドン交響曲第88番「V字」(ナミレコード)

演奏内容以前に選曲がいい。古典派音楽の好きな方なら間違いなく手が伸びる組み合わせ。各パートが立体的に位置づけられた音楽がきびきびと動き、室内管弦楽団を聴く喜びが横溢する。

野島稔(ピアノ)、山田一雄(指揮)札幌交響楽団 / ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番ほか(キングインターナショナル)

日本楽壇の重鎮ピアニストでありながら、録音の少ない奏者だったのでこのリリースは驚き、喜んだ。山田一雄の骨太で生気に富むバックのもと力強いコントロールが冴える「皇帝」は際立つ内容。

野島稔の芸術(キングインターナショナル)

上記の好評を受けてリリースされたソロリサイタルの未発表ライヴ録音。シューマンの交響的練習曲が圧巻。

佐藤晴真(チェロ)、久末航(ピアノ)/ メンデルスゾーン作品集(ドイツグラモフォン)

俊英チェリストのサードアルバム。音楽への誠実さが清々しい。まずきちんと再現することに徹した結果、澄んだ詩情や憂いが浮かび上がる。

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)/ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番、第23番(ドイツグラモフォン)

「ザ・ロスト・テープス」なる新シリーズ。巨匠晩年の収録で編集が済む前に奏者が世を去った。行き届かない部分はかなり目につくが、随所から湧いてくる、壮者も裸足で逃げ出すエネルギー感と強靭な歌い込みには敬服する。

UHQCDxMQA-CD

ジェシー・ノーマン(ソプラノ)/ 未発表録音集(デッカ)

先述のシリーズのパイロット版風に登場したセット。オペラ、歌曲の両面で大歌手の表現領域の広さ、卓越したコントロール術を堪能できる。この種のセットにありがちな凹凸がなく、いずれも聴き応えある。共演指揮者ではやはりレヴァインとの相性が良好。