アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

心地よい官能を音楽で紡ぐ小妖精、黒田玲兎【3/20@真昼の月夜の太陽】

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黒田玲兎のライヴを聴きに。短い時間で深い余韻を残すピアノと声の響き合いの艶。#黒田玲兎 #真昼の月夜の太陽 #ピアノ #ヴォーカル

2018年3月20日 20:40-21:10

真昼の月夜の太陽(東新宿

黒田玲兎(ピアノ・ヴォーカル)

《演奏曲目》

チョコレイトリップ

ウェザーニュース

0311

impro.~サーカスナイト(カバー〔七尾旅人〕、ハンドマイク歌唱)

あなたの腕が降りるとき

※impro.~サーカスナイト以外は弾き語りのスタイル。

黒田玲兎のピアノ演奏、作曲からは心の息遣いを感じる。弾き出す、歌い初める瞬間に音楽が生まれ、色付く。ピアノの色に感情が乗り、その変化が鋭敏かつコシのある歌を耀かせる。

サウンドの色合いの変化でまず語り、次に少し寂しげにして確固たる歩みの旋律を綴る。また彼のピアノの器楽もしくは声楽との共演における響き合いの妙は素晴らしい。

ソロ音楽家としての1番の魅力は艶。佇まい(特に眼)、鍵盤弾く時のフォーム、楽器の音色、声…全てにおいて薫り立つ艶が音楽に照りと翳を与える。

演劇舞台の経験があるため小さな空間、短い時間の場合も小道具などを駆使しステージを明暗の強いコントラストで縁取り、聴き手の想像を呼び覚ます。20日もそうだった。

正直実演に掛け始めて間もないという最初の2曲はやや普通。もう一歩聴き手を巻き込むものがなかった。

弾き語りの体勢からサッと立ち上がり 「サーカスナイト」の前のインプロを始めると眼が鋭くなって、身のこなしはキレる。「サーカスナイト」は彼の空間支配力、エッジのきいたエロスが放射されてゾクゾクした。手や背中からの色気が破格。芯の通う声の多彩さも見事で手の表情が心を揺らし、聴き手の目の前に来たときはグッと掴まれ、何か畏怖の念すらわく。いま思い起こしても身体ごと取り込まれたようでこれ以上は言葉にならない。

最後のナンバーはピアノの丸みのある凹凸がいとおしく、声との織り成しが作品に特別感を与えた。

ピアノから彼に興味を持ち、拡がってきたが今回は改めて歌、身振り、もっていき方など全体の魅力を実感。短い時間であれだけの濃さと余韻・・・静かなるパワーに脱帽。自身の出番前にはヴォーカル・ギターの斉藤めいとピアノで共演し、ヴォーカルの隙間を巧みに埋めた。

改めて黒田玲兎の深み、多彩さ、色気、芯の鋭さを確認した。

※文中敬称略

黒田玲兎 Official Blog “月に帰る日まで”