緊張から光彩陸離へ
2017年10月11日(水)サントリーホール19時開演
【プログラム】
リスト:オーベルマンの谷(巡礼の年第1年スイスより第6曲)
-休憩-
~アンコール~
徳山美奈子:Flying Birds
ルイ・クロード・ダカン:クラヴサン曲集第1巻第3組曲から「カッコウ」
ショパン:バラード第1番
「~ 鳳凰がみたもの~」と銘打たれたリサイタル。
冒頭のリストは音楽の流れ、タッチともに硬く、力の入ったフォルテはふわっと散ってしまい、弱音もかさかさ。サントリーホール(大)におけるピアノリサイタルの難しさを改めて感じた。
次のショパンになって奏者の持ち味のしなやかさが出始めて高音の冴え、鋭い低音の打ち込みで麗々しい響きが拡がる。
奏者の本領はバーテンダー風の衣装に着替えた後半のロシア物で発揮。
ラフマニノフのop.32からの2曲は滑らかに動く輝かしい高音が自在に旋律を歌うと、ほの暗い低音が音楽に奥行と陰影を与え、実に美しかった。スクリャービンも強靭なタッチで作品の骨格を明確に描きつつ、胸揺さぶるエネルギーが伝わる内容。またストラヴィンスキーは色彩の表出が巧みで編曲の密度の薄さをカバー。指捌きの忙しい場面でも叩き飛ばさず、鍵盤を掴んでしっかり響かせる技が見事だった。
福間洸太朗はしなやかで透明感のある高音に低音の抉りを交え、確かなリズムの脈動のもと潤いと立体感のある音楽が作れるピアニスト。中堅の実力者として今後ますます目が離せない。