俗に言う「ドボコン」。第3楽章の潮が引いてからチェロが連綿と燻し銀の哀愁に満ちたメロディを弾くところがお気に入り。
ロストロポーヴィチ〔チェロ〕、小澤征爾指揮、NHK交響楽団
Dvořák: Cello Concerto + 1 / Rostropovich Ozawa NHK Symphony Orchestra (1995 Movie Live)
1995年1月ライヴ。小澤が32年ぶりにNHK交響楽団を指揮、野太いサウンドでおぜん立て。ロストロポーヴィチは押しの強いなかに細やかな情を通わせる。この曲の翳の濃さを見直させる演奏。アンコールのバッハは阪神淡路大震災の犠牲者に捧げられた。
マイスキー〔チェロ〕、スウィトナー指揮、NHK交響楽団
Dvořák Cello Concerto,op.104 (&Bach BWV1011)
1988年ライヴ。汗だくで臆面もなく演歌節を続けるチェロが見もの。雄大で潤いのあるバック。透明で締まった質感の弦と浜中さんのクラリネットなど鳴り物打ち物の濃い味のコントラストがもたらす奥深さ。第3楽章の山場の堀さんのヴァイオリンは上品ですっきりした美音。スウィトナーのしょっちゅう老眼鏡を直す姿は笑える。やはりアンコールはバッハ。
ミッシャ・マイスキー (Vc)、オットマール・スウィトナー (指揮) NHK交響楽団/ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調Op.104
ヨー・ヨー・マ〔チェロ〕、井上道義指揮、京都市交響楽団
Dvorak: Cello Concerto / Yo-Yo Ma Inoue Kyoto Symphony Orchestra (1991 Movie Live)
1991年ライヴ。チェリスト、指揮者ともに若々しい風貌。日頃陽性の奏者が結構艶消しの渋い質感で聴かせる。テクニックの安定性は流石。ガッツあふれる指揮も充実しているがソリストはもうちょい抑え目の指揮を望んでいた様子。
ときに4月28日、過去に井上道義と「ドボコン」をライヴ録音した名手ルドヴィート・カンタが坂入健司郎指揮、東京ユヴェントス・フィルハーモニーとの共演でこの名曲を披露する。まろやかにして芯のがっしりした弾きっぷりのカンタが作品固有の色合いや論理性に密着したアプローチでブルックナー、マーラーを中心に快進撃の指揮者、オーケストラとの共演でどんな像を結ぶか、期待大。
東京ユヴェントス・フィルハーモニー第17回定期演奏会
<創立10周年記念演奏会シリーズⅡ>
日時:2018年4月28日(土)18:00開演
会場:パルテノン多摩 大ホール
<プログラム>
ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104(※)
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調『英雄』Op.55
チェロ:ルドヴィート・カンタ(※)
演奏:東京ユヴェントス・フィルハーモニー
指揮:坂入 健司郎
※文中敬称略