間違いなく日本はチェリスト大国のひとつに数えられる。齋藤秀雄(小澤征爾の師として知られるが元々チェリスト)から始まり堤剛、安田謙一郎、岩崎洸、徳永兼一郎、藤原真理など数々の名人上手がいた。一方でその殆どが日本人の日本人による日本人のための演奏家だったのも事実。
しかし近年様相が変わり、世界基準のテクニックと分析眼そして表現の引き出しを備えた名手が若い世代から誕生している。伊藤悠貴、岡本侑也、伊東裕、三井静といった俊英のなかでとりわけ傑出しているのが佐藤晴真。
スコアの細部を拾い上げて作品の論理に適ったバランスで響きにする技術、透明にして沈潜する陰影を抱く音色、緊密かつ深い稜線の音楽を展開できる構築力・・・全てが世界のチェリストを見回してもごく限られた人間しか達していない内容が聴ける。
第2番を先に持ってきた曲順も秀逸。大概のブラームスのチェロ・ソナタのアルバムだと最初に入っている1番を聴いてお腹いっぱいになり、2番を聴く機会は少なくなるケースがしばしばある。今回のアルバムはそうした「悪弊」からサラッと逃れ、通して聴く良さを実感するチェロの歴史上屈指の傑作。聴かぬは一生の損。
ブラームス:チェロ・ソナタ第1・2番 ピエール・フルニエ、ヴィルヘルム・バックハウス
ブラームス: チェロ・ソナタ第1番, 第2番 ピエール・フルニエ、ルドルフ・フィルクスニー
ブラームス: チェロ・ソナタ第1番&第2番 ハインリヒ・シフ 、 ゲルハルト・オピッツ
ブラームス:チェロ・ソナタ集 ヨーヨー・マ 、 エマニュエル・アックス
ブラームス:チェロ・ソナタ、ハンガリー舞曲 ジャン=ギアン・ケラス 、 アレクサンドル・タロー
※順不同・敬称略