アフターアワーズ

山椒系ちょくの切り抜き帖

My Favorite Things Special【シャーロック・ホームズ正典短編ベスト10③】

以下の記事の続き。※一部ネタばれあり※

choku-tn.hatenablog.com

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こちらのブログの筆者(素晴らしいミステリ通)が記事にスターをつけて下さり、おかげでベスト5を書いてなかったことを思い出した。

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第5位:ボスコム渓谷の謎(『シャーロック・ホームズの冒険』)

小学校4年生の誕生日プレゼントでシャーロック・ホームズ物に出会った時、強い印象を残した作品。濡れ衣を晴らす、その濡れ衣を着せられたと思われる人物の不可解さ、ホームズが細かな手がかりから大胆に犯人の人相風体を推理、そして真犯人の告白。探偵小説の面白みが凝縮されている一方、苦い後味の中に一抹の救いもあるラストの味わいの深さは正典中で際立つ。ドイルの作品からこうした余韻を感じるのは正直珍しい。テレビドラマ版では真犯人を名バイプレイヤーのピーター・ヴォーンが演じ、暗い凄味のある告白を聞かせた。それにしてもドイルはチョイ役まで濃いキャラを上手に作る。ターナー譲なんて短い登場時間ながら結構なインパクト。

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第4位:海軍条約文書(『シャーロック・ホームズの回想』)

外交文書の重要性を子供ながらに実感した作品。問題の条約がフランス語で書かれていた点も当時フランス語を習っていたので興味をひかれた。事件の規模はもちろんホームズのアクティブな活動ぶり(テレビドラマ版のジェレミー・ブレットの溌剌とした演技は見事な再現)、薔薇の三段噺など時に見せる不可解さ、芝居がかった幕切れと前期作品の集大成の趣。ひとつ疑問なのはフランス語が分かるとは思えない犯人に条約の中身や重要性(金銭的価値)の判断ができたのか。「ブルースパーティントン設計書」(『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』)同様、犯人にアプローチしてきた「事情通」がいたと見るのが自然だろう。本作でもドイルの産むサブキャラはくせのあるひとばかり。依頼人とフィアンセ、犯人、依頼人の叔父の外務大臣、ホームズに手ひどくやりこめられるフォーブス警部…このキャラクター創出能力が作家ドイルのインパクトを弱める結果になった(ホームズとワトスンはその象徴)のは皮肉。