アフターアワーズ

文化・社会トピック切抜き帖

ありがとう今宮純さん(1949-2020)【解説レース5選】

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中嶋悟氏のインタビューが1番面白い。次に感慨深かったのがホンダF1第2期最後のプロジェクトリーダー安岡氏のインタビュー。#racingon #500 #2019年 #ムック本 #付録つき #雑誌 #中嶋悟 #f1 #f1世界選手権 #アイルトンセナ #株式会社三栄 #三栄書房 #今宮純 #バブル時代

F1を夢中になってテレビ観戦した子供の頃、今宮純さん(2020年1月4日70歳で逝去)の解説にどれほどお世話になったか。また東京中日スポーツの裏一面「F1エキスプレス:スーパーバイザー今宮純」を当時住んでいた家の近所のトンカツ屋で何度読んだことか。感謝の気持ちは尽きない。

今宮さんは初めて生観戦したF1レース(1973年オランダグランプリ)で死亡事故に接し、最高峰の残酷さを思い知らされた。それが解説の原点。発する言葉には影のある情感が宿った。

人間中心にF1を捉え、死と隣り合わせの中で戦う者同士の相剋を分かりやすく言葉にした。この切り口がスポーツに人間ドラマを求める日本人の好みに合い、モータースポーツとの距離を縮めた。同じくテレビ中継の常連解説者だった森脇基恭氏がエンジニアらしく最高の技術、システムの集積としてF1を見つめたのとは対照的でそこが面白く、中継に魅力を与えた。なお雅子夫人も一流のジャーナリストでお互いに力を発揮した。
生涯通信社や出版社に属さず、自動車メーカーとも近づきすぎず、フリーな活動、スタンスを貫いた。

30年近く前、鈴木亜久里氏とのトークショーに行ったのを懐かしく思い出す。改めて本当にありがとうございました。R.I.P.

今宮純さん解説レース5選」

熊倉重春氏が担当した1995年以外は大半のレースで解説しているためあくまでいま思い浮かんだレースということで。

1988年第7戦フランスグランプリ

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1988年第15戦日本グランプリ

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1990年第6戦メキシコグランプリ

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1990年第16戦オーストラリアグランプリ


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【F1】1990年オーストラリアGP ラスト10周

1992年第16戦オーストラリアグランプリ


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この時ベルガー担当だった田辺豊治氏は2020年現在ホンダF1のテクニカルディレクターを務める。今宮さんの逝去に際して追悼コメントを発表した。

※ボーナストラック※1983年第12戦オランダグランプリ

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わたしのベートーヴェン原体験【トスカニーニ指揮、NBC交響楽団1939年録音の「運命」】

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800投稿。我がベートーヴェン原体験。約四半世紀前、たぶん最初に自らの意思で購入したベートーヴェンのCD。ギリギリ切り詰めた響きから噴き出す焔、迸る熱情にぶちのめされた。ベートーヴェン本人が後にうんざりするほどヒットしたらしい七重奏曲は長年この編曲版しか聴いていなかった。#toscanini #nbcsymphonyorchestra #arturotoscanini #beethoven #symphony5 #septet #egmont #sonybmg #rca #classicalmusic #spotify #クラシック音楽 #セッション録音 #放送録音 #ベートーヴェン #トスカニーニ #nbc交響楽団 #交響曲第5番 #七重奏曲 #エグモント序曲 #beethoven2020 #beethoven250 #生誕250年 #私の原点

冒頭からの凝集感、叩きつけられるリズム、時折ズバッと動かすテンポ操作の妙。とにかく全てが衝撃的だった。最近はある意味現代的変容と言えるショルティ指揮、WPhのライヴ録音を聴く方が多いがたまに取り出すと心を丸裸にされる思いがする。

Arturo Toscanini - The Essential Recordings

正月三が日【初詣と初買い物】

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初詣。#靖国神社 #靖國神社 #初詣 #令和2年 #2019年 #1月3日 #子年
https://www.instagram.com/p/B62RDyXpXDH/
ジャンボ絵馬 #靖国神社 #靖國神社 #ジャンボ絵馬 #子年 #2019年 #令和2年 #1月3日 #初詣https://www.instagram.com/p/B60iRwcJQ44/
2020年(令和2年)初買い物。永冨和子さん(1929-2010)。品のある光彩を纏うくっきりした歯切れのいいサウンドはフランス音楽(とモーツァルト)にピッタリ。#永冨和子 #ピアニスト #ピアノ #ピアノソロ #セッション録音 #プラハ #ドビュッシー #ラヴェル #ソネチネ #日本コロムビア #denon #亜麻色の髪の乙女 #沈める寺 #月の光 #debussy #ravel #piano #pianist #cd #CD #cd紹介 #初買い物 #2020年 #令和2年 #1月2日 #クリアランスセール #8割引 #クラシック音楽 #classicalmusic #suitebergamasque
昔、務めていた店でイヴェントをして下さった。いかにも上品な御婦人の雰囲気から、ルビーやサファイア鳥の澄んだ輝きを放つ音が紡がれるさまは心に刻まれている。ドビュッシーは個人的に少し苦手だがこのひと(と遠山慶子さん)の演奏はドキドキする魅力を感じた。
永冨和子 最後のリサイタル! 2007.10.4 王子ホール
ドビュッシー:映像第1集/ベルガマスク組曲/前奏曲第1集より/ラヴェル:ソナチネ:永冨和子(p)
モーツァルト ベートーヴェン:ピアノ五重奏曲 永冨和子、プラハ木管五重奏団
ドビュッシー:ピアノと管弦楽のための幻想曲 遠山慶子、ドビュッシーを弾く
ドビュッシー:映像/ラヴェル:高雅にして感傷的なワルツ 遠山慶子
モーツァルト:ピアノ作品集 遠山慶子、Vienna String Quartet members

謹賀新年2020【2019ラスト鑑賞「現代印象派画家KOH」「金田正一追悼展示」】

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現代印象派画家KOHさんの個展に。Kristal&Glam luxury art gallery(国立新美術館近く)で15日まで。#画家koh #現代印象派 #個展 #展覧会 #新作 #油彩 #絵画展 #KOH #2019年 #12月12日 #令和元年 #kristalandglam #年内ラスト

光の粒の凹凸や構図の引き出しが増え、一層魅力ある画家に進化したと思う。KOHさんは2019年12月28日のフジテレビ系「ぶらぶらサタデー有吉くんの正直さんぽ!」で取り上げられた。

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野球殿堂博物館① #2019年 #12月26日 #令和元年 #金田正一 #追悼 #野球殿堂博物館 #プロ野球 #日本プロ野球 #NPB #東京ドーム #カネやん

殆どが金田家の提供による貴重な資料を拝見できた。

https://www.instagram.com/p/B6hnJgQJf4p/

野球殿堂博物館② #2019年 #12月26日 #令和元年 #野球殿堂博物館 #イチロー #原辰徳 #プレミア12 #周東佑京 #高橋礼 #新人王 #日本プロ野球 #プロ野球 #大リーグ #MLB #NPB #1000勝 #名将 #名監督 #プロ野球監督 #星野仙一 #広岡達朗 #藤田元司 #西本幸雄 #廣岡達朗 #東京ドーム #王貞治 #荒川博 #特訓 #日本刀 #スポ根

https://www.instagram.com/p/B6wMa8gJMOz/

あけましておめでとうございます。本年も御覧頂ければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。#2020年 #令和2年 #元旦 #1月1日 #ランパル #jeanpierrerampal #cbs #columbiamasterworks #sonyclassical #宮城道雄 #春の海 #フルート #謹賀新年 #クラシック音楽 #セッション録音 #classicalmusic #spotify #和と洋 #happynewyear

CBSソニーは1970年代の日本コロムビアのひそみにならったか、1980年代前半にランパル、ヨー・ヨー・マ、スターンといった超一流アーティストを使い、間宮芳生などの編曲による日本の旋律を録音した。

春の海~日本の旋律/ジャン=ピエール・ランパル(フルート)リリー・ラスキーヌ(hp)

Japanese Melodies (Remastered) ヨーヨー・マ

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ベートーヴェンの記念年ゆえウィーンフィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサート(A.ネルソンス指揮)ではコントルダンスを演奏する。「聴いたことのある」主題が出てくる楽しい佳品。ロリン・マゼールはこれらを30歳弱の時にベルリンフィルハーモニー管弦楽団と録音した。だからいま「弱冠…歳で」とか聞いても何も感じない。騒ぐ連中は「ああ、(マゼールのその後も含めて)知らないんだな」と思う。マゼールは健在なら今年90歳。#lorinmaazel #berlinerphiharmoniker #beethoven #contredanse #classicalmusic #spotify #dgg #universalclassics #ベートーヴェン #ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 #コントルダンス #ロリンマゼール #ドイツグラモフォン #beethoven250 #セッション録音 #クラシック音楽 #記念年 #ユニバーサルクラシックス #12contredances #woo14 #BPh #bph

ニューイヤー・コンサート2020/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:アンドリス・ネルソンス

ニューイヤー・コンサート2020(SICC-2157)/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:アンドリス・ネルソンス

【Blu-ray Disc】ニューイヤー・コンサート2020/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:アンドリス・ネルソンス

【LPレコード】 ニューイヤー・コンサート2020<完全生産限定盤>/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:アンドリス・ネルソンス

ベートーヴェン:交響曲全集他/アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ サー・ネヴィル・マリナー(指揮)

ベートーヴェン:交響曲全集他/マイケル・ティルソン・トーマス ウィーンの古き佳き舞曲集他/ウィリー・ボスコフスキー(指揮とヴァイオリン)

ロリン・マゼール~ドイツ・グラモフォン初期録音全集

Lorin Maazel - Milestones Of A Legend

今週のお題「2020年の抱負」

①減量72kg→65kg

②レビューなどの仕事をもう少し取る

③「積読」撲滅

【My Favorite Things Special:2019年〔令和元年〕Classical Music CD 私的 best10+1】

※順不同・敬称略
☆ユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団/ヒンデミット:交響曲「画家マティス」、バルトーク:管弦楽のための協奏曲ほか(キングインターナショナル)
バルトーク: 管弦楽のための協奏曲、ヒンデミット: 交響曲「画家マチス」/ユージン・オーマンディ、フィラデルフィア管弦楽団

☆ユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団/シベリウス:交響曲第2番ほか(キングインターナショナル)
シベリウス: 交響曲第2番ニ長調、バーバー: 弦楽のためのアダージョ/ユージン・オーマンディ、フィラデルフィア管弦楽団

→量感と光沢のある弦に麗々しく上品な管がブレンドされたオーケストラ芸術の頂点を記録したライヴ録音。シベリウスのフィナーレの改変も効果的。

☆ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮、読売日本交響楽団/ブルックナー:交響曲第5番〔シャルク版〕(Altus)

ブルックナー: 交響曲第5番(シャルク版)/ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、読売日本交響楽団
☆ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮、読売日本交響楽団/チャイコフスキー:バレエ音楽集(Altus)
チャイコフスキー:バレエ音楽集/ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、読売日本交響楽団

☆ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮、読売日本交響楽団/ショスタコーヴィチ:交響曲第10番(Altus)

ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、読売日本交響楽団

→異才ロジェストヴェンスキーの魔術をまるごと味わえる3タイトル。たちこめるほの暗い透明感が心に残る。

ときにチャイコフスキーのライナーノーツを書いた許光俊は『200CD指揮者とオーケストラ』(立風書房;1995年)で「(ロジェストヴェンスキーは)ふだん読売日響なんてヘタクソなオーケストラを振って損をしている」「本来ならウマイ楽団を限界まで操ってスリル満点のドライブを楽しませてくれる人」と記した。つまり読響はロジェストヴェンスキーの良き共演者とは言えないという主張。しかし本盤のライナーノーツにこのCDでも読響はヘタクソでロジェストヴェンスキーは損をしているのか、あるいは20年ほどを経て読響が進歩してロジェストヴェンスキーの音楽を伝えているのか、何も書いていない。自らの審美眼や過去の言説に関してこのように無責任な人間だから佐村河内守を礼賛する過ちを犯すのだ。

☆ロリン・マゼール指揮、読売日本交響楽団/マーラー:交響曲第2番(読売日本交響楽団東武レコーディング)

ロリン・マゼール指揮、読売日本交響楽団/マーラー:交響曲第2番
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/22264
http://choku-tn.hatenablog.com/entry/2019/08/09/133519
☆イシュトヴァン・ケルテス指揮、ロンドン交響楽団/ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ほか(キングインターナショナル)

ロンドン交響楽団のノリが絶好調。パワフルで筋肉質の響きが冴え(そういう要素の生きるプログラムになっている)、要所の命中率も高い。当時30代のケルテスは猛者の集団をうまく方向付けする。1973年に不慮の事故で早世したケルテスはもし健在なら2019年で90歳。熟成を見たかったひと。アンコールの締め括りはなんと「蛍の光」。
イシュトヴァン・ケルテス指揮、ロンドン交響楽団/ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ほか

☆遠山慶子〔ピアノ〕ほか/ドビュッシー作品集(カメラータ・トウキョウ)

遠山慶子、ドビュッシーを弾く
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/23305

☆ルドルフ・フィルクシュニー〔ピアノ〕/ショパン:ピアノ・ソナタ第3番ほか(Weitblick)
フィルクシュニー ベルン・リサイタル1976年3月16日
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/22449

☆ライナー・キュッヒル〔ヴァイオリン〕、加藤洋之〔ピアノ〕/プフィッツナー:ヴァイオリン・ソナタほか(R-Resonance)

→最高の楽器で奏でる凛とした美音。プフィッツナーソナタブラームスを口調はもっとガチで言うことはもっとねちっこくした雰囲気。キュッヒルの鋭い質感のアプローチが曲想を分かりやすく伝える。余白のクライスラーや「薔薇の騎士」のワルツもシャープなタッチの好演。
ハンス・プフィッツナー:ヴァイオリン・ソナタ/ライナー・キュッヒルhttps://mikiki.tokyo.jp/articles/-/22449
★ロリン・マゼール指揮、ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団/ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(キングインターナショナル)
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(全曲)/ロリン・マゼール、ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

石原慎太郎が呼んだ!?マゼール指揮の「トリスタンとイゾルデ」【ほの暗い響きのうねり】 - アフターアワーズ

https://tower.jp/article/campaign/2019/12/02/01/13

今年も読んで下さり、ありがとうございました。皆様、よいお年をお迎えください。

11/29:菊地裕介ピアノリサイタル2019【鍵盤で昇華された「夢と幻想」】

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本日はこちら。#菊地裕介 #ピアノ #ピアニスト #piano #pianist #berlioz #tchaikovsky #幻想交響曲 #トランスクリプション #クラシックコンサート #クラシック音楽 #classicalmusic #東京文化会館 #東京文化会館小ホール #令和元年 #2019年 #11月29日 #ピアノリサイタル #ピアノソロ

https://www.instagram.com/p/B5dU-B6lwnM/

良席&サインに感謝。アンコール~aus elise(菊地裕介)、ピアノ・ソナタ第21番より第1楽章(ベートーヴェン)、ベルガマスク組曲より月の光(ドビュッシー)。#菊地裕介 #ピアノソロ #ピアノリサイタル #ピアニスト #ピアノ #piano #pianist #classicalmusic #クラシック音楽 #アンコール #東京文化会館 #東京文化会館小ホール #pianorecital #クラシックコンサート #11月29日 #2019年 #令和元年 #ベートーヴェン #ワルトシュタイン #ドビュッシー #月の光 #良い席

夢と幻想で結ばれたプログラム。くるみ割り人形が子供のメルヘンなら、幻想交響曲は大人のちょっと危険なもの。もっともくるみ割り人形にも探れば妖しい要素はある。

ピアノで接するとチャイコフスキーの一部がフランス近代っぽく聴こえたり、ベルリオーズの各所にベートーヴェンのエコーを感じるかと思えば、ワーグナードビュッシーへ繋がるものが浮かぶ。 こうした感じ様は菊地裕介さんの曲芸的にやらず、愚直なほど誠実に諸要素を解きほぐしたアプローチによるところが大きかったと思う。

ラヴェル:ピアノ・ソロ作品全集 菊地裕介

ドビュッシー:ベルガマスク組曲 12のエチュード 菊地裕介

ベートーヴェン:3大ソナタ≪悲愴≫≪月光≫≪熱情≫ 菊地裕介

チャイコフスキー=プレトニョフ: 演奏会用組曲「くるみ割り人形」/黒岩航紀 Tchaikovsky: Sleeping Beauty Op.66, Nutcracker Op.71, Children's Album Op.39 アンナ・マリコヴァ

石原慎太郎が呼んだ!?マゼール指揮の「トリスタンとイゾルデ」【ほの暗い響きのうねり】

https://www.instagram.com/p/BlYHdBNBZrd/

浅利慶太、石原慎太郎が財界の大物と組んで幕を開けた日生劇場。その残照は現在も残っている。浅利慶太は7月13日に85歳で死去。#浅利慶太 #石原慎太郎 #石原愼太郎 #文春文庫 #日生劇場 #ベルリンドイツオペラ #武智歌舞伎 #武智鉄二 #わが人生の時の人々 #五島昇 #弘世現 #若き日 #訃報 #ロリンマゼール #ワーグナー #トリスタンとイゾルデ #読書

日生劇場の誕生にあたって石原慎太郎氏と浅利慶太氏がいわばオープニングプロデューサーを務めたことは以前に記した。

choku-tn.hatenablog.com

そしてこけら落とし公演として招聘されたのはベルリン・ドイツ・オペラ。海外オペラハウスの引っ越し公演は史上初、日本洋楽受容史上に残る快挙だった。石原氏は『わが人生の時の人々』(文藝春秋;2002年〔文春文庫;2005年〕)に次のように記している。

さてその劇場のこけら落としの出し物だが、多少の金がかかってもその分の料金を出し物が画期的なら客受けもするはずだと、今思えばとんでもない企画を立てたが、それがまんまと図に当たり結果として大成功だった。

とにかくあの有名なベルリン・オペラを丸ごと呼ぼう、裏方も何かもすべてのスタッフを呼び寄せてやって来ないのはオペラハウスだけという規模の、完璧なベルリン・オペラを東京で実現しようということになり、現地の有力新聞も旨く乗せてしまってドイツ政府も動き出し、結果全スタッフに加えてリュプケ・ドイツ大領領の来日までも決まり、その答礼に日本側では天皇陛下の来臨行幸とまでなった。

(中略)初日当日の出し物のオペラはベートーベン作の「フィデリオ」で、最終章に検察官役の当時世界最高、全盛期のバリトン歌手のフィッシャー・ディスカウが辺りを払って登場するクライマクスには皆痺れたものだが、その前の前、両国元首を迎えての国歌吹奏でベルリン・オペラフィルが演奏した国歌「君が代」の印象はなぜか日本のいかなるオーケストラの演奏ともひと味ふた味違っていて、きわめて印象的だった。

その印象は一人私だけのものではなかったようで、幕間に出会った文藝春秋新社の池島信平氏が、

「いやあ石原君、オペラもいいがなんたってひさしぶりに君が代らしい君が代を聞いたよ」

と相好崩してくれたのが嬉しかった。

劇場のこけら落としに絶対にワグナーを、それも必ず「トリスタンとイゾルデ」をと主張したのは企画担当の私のエゴだったのだが、やはり満喫させられた。

何度か上演されたこのレパートリーに限っては役得で、そのたび劇場のどこかで眺め鑑賞したものだが、そのたび印象的だったのは三幕最後のあのイゾルデの絶唱「愛の死」の折に、当時売り出し中の、今では世界のグラン・マエストロに成りおおせた指揮者のローリン・マゼールが、指揮しながら曲のクライマクスで大きく腕を振り体をのけぞらせて斜め後ろを振り向くと、そこに新婚早々の夫人が両手で胸を抱くようにしうっとりと彼を見上げているのだった。

実はこれには厄介な伏線があって、なにしろ評判の興行だったからオペラの券はたちまち完売してしまったが、マゼールが指揮する際の指揮者の左斜め後ろの席は夫人専用と決まっているのだそうな。ところがそれを知らずに切符を売り尽くしてしまい、もちろん指揮者の奥さんのための席はしかるべく準備はしてあったのだが、マゼールにいわせると彼等二人のためにその席は絶対に必要なのであって、熱烈な恋愛の後結婚した夫人がいつもの席に座っていないのなら自分は指揮はしない、出来ないという。

しかしその席はとうに熱烈なオペラファンの手に入っていて、当人は絶対にこの席をゆずる訳にはいかないと。といっても肝心の指揮者が指揮しない、指揮出来ないのでは話にならず、くだんのお客を懸命に口説き落とし、その引き換えに劇場の大事な関係者のためにとっておいたグランド・サークルの一番前の桟敷をただで提供さぜるを得なかった。

ということでいよいよ本番となりあの甘美な「トリスタンとイゾルデ」の上演、そして最後の最後の、私にとっては世界の音楽の中で一番官能的な「愛の死」の絶唱で、あのうねっては押し寄せ、砕け落ちては引いていき、そしてまた切りなくうねっては押し寄せる輝く波のような甘美極まりない旋律の中で、指揮の棒を振る当人も、眺める彼女の方も共に相重なったエクスタジーの中にいるだろうから、眺めていてもむべなるかなという感じではあった。

最近また久し振りに東京でマゼール指揮の演奏を聞いたが、その指揮ぶりは彼がさらに円熟しきってまさしく世界のトップの中のトップの巨匠に成りおおせたのを証していたと思う。演奏の後楽屋を訪ね敬意を表したが、

「あなたは実に見事に円熟しましたね」

私がいったら昔のことを覚えていて、とても嬉しそうにしてくれたのも嬉しかった。

しかしそこで紹介された奥さんは、あの日生劇場こけら落としの折、彼がかなでさせる「愛の死」にうっとりと聞きほれていた件の女性とは違っていたが。

(文春文庫版、pp.429-pp.434、表記は原文のまま)

1963年当時のマゼール夫人はレザー会社の相続人の女性のはず。ただこの方は三浦淳史氏の『演奏家ショートショート』(音楽之友社)によれば「決して劇場にいかない人だった」らしいので別の女性あるいは石原氏が話を盛った可能性もある。最後の落ちで登場する「奥さん」は3人目のディットリンダ夫人だろう。

なお石原氏は後年「現代の《トリスタンとイゾルデ》」と自称する小説『火の島』(幻冬舎)をものした。これは氏を代表する奇作として名高い。

ときにベルリン・ドイツ・オペラの初来日公演のうちベーム指揮の「フィデリオ」(初日ではない)・「フィガロの結婚」・ベートーヴェンの第9交響曲、ホルライザー指揮の「ヴォツェック」は後年ライヴ録音が発売された。一方、事実上の日本初演だった「トリスタンとイゾルデ」の演奏内容はずっと想像するしかなかった。

2019年11月、その「トリスタンとイゾルデ」のCD化がついに実現した。思いのほか良い音質で当時33歳のマゼールの躍動感あふれる音楽作りがしっかり聴ける。ぐわぐわと高まる響きは強いエネルギーを発し、その場の空気の揺れを感じられるほど。なかでも第3幕前奏曲の地の底から現れる重く翳の濃い音楽は日本のオーケストラでは今なお聴けない質感であり、当時の日本の聴衆にはショックだったろう。

冷戦下、国立歌劇場が東ベルリン側へ行った状況を想うと、ベルリン・ドイツ・オペラのメンバーは西ベルリンを背負う存在として自由世界の日本において高いテンションで演奏に臨んだと思うし、そういった政治的背景も招聘実現の理由だと推測する。

日生劇場では現在、日本の団体によるオペラ興行が定期的に催されている。かつてベルリン・ドイツ・オペラが日本のオペラの歴史を拓いた場所にふさわしい水準の上演であることを切に望みたい。

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(全曲) ロリン・マゼール 、 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

ワーグナー名曲集 ロリン・マゼール 、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 、 ピッツバーグ交響楽団 、 ヘスス・ロペス=コボス 、 シンシナティ交響楽団

マーラー: 交響曲第2番「復活」 ロリン・マゼール 、 読売日本交響楽団

ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱」 カール・ベーム 、 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団

ベルク: 歌劇「ヴォツェック」(全曲) ハインリヒ・ホルライザー 、 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団